2024年05月13日

にっぽん子ども・子育て応援団結成15周年フォーラム終了。

にっぽん子ども・子育て応援団15周年フォーラム.JPG

2024年5月12日(日)、大妻女子大学千代田キャンパス本館E棟地下1階、E055講義室において、にっぽん子ども・子育て応援団結成15周年記念フォーラム「進め! こどもまんなか社会」を開催いたしました。
2009年5月9日に創立、15周年の節目で、対外的な活動を停止することとし、最後のフォーラム開催となり、最後のところで、当日会場に参加していた応援団関係者全員が壇上に立ち、オンライン及び会場参加の方々に向け、感謝の言葉とともに一同、礼で締めくくりました。

詳細なご報告は改めてアップいたします。
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2022年11月16日

2022年度企業・団体サポーター交流会 「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 誰が休んでも回る職場をどう作る?」 開催報告

2022年10月18日(火)16:30〜18:00、2022年度企業・団体サポーター交流会「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 誰が休んでも回る職場をどう作る?」を開催しました。

冒頭、にっぽん子ども・子育て応援団団長の勝間和代より、今回の交流会開催の趣旨説明を兼ねた開会挨拶を行いました。勝間は兼ねてから「男性育休取得はボーリングの一番ピン」と呼んでおり、日本がもっと子どもと子育てに優しい社会になるには、男性の育児休業取得が当たり前になるかどうかが鍵と訴えてきました。昨年度ようやく我が国の男性育休取得率が14%になりアメリカには追いついてきましたが、北欧の7割、8割の取得率に比べたら、まだまだ追いついておらず、取得期間が3日とか1週間くらいでとても短い現場から、育休をきっかけに企業がどうコミットできるようになるのか、育児・介護休業法改正のレクチャーや基調講演を踏まえ、みなさんとお話ししたいと述べました。

スクリーンショット (ブレイクアウトセッション後).png

行政レクチャー 育児・介護休業法改正のポイント
続いて、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課育児・介護休業担当係長の中島しずかさんから、今回の育児・介護休業法改正のポイントについてレクチャーいただきました。

改正の背景として、現在約7割の女性が第1子出産後も就業継続していますが、離職した人の41.5%の人が「仕事と育児の両立が難しい」を理由に上げている現状を挙げています。夫の家事・育児時間が長いほど妻の継続就業割合が高く、第2子以降の出産割合も高いというデータもあり、男性育児休業取得は女性の就業継続の鍵であるだけでなく、少子高齢化の歯止めにも寄与すると考えられる側面もあります。国は、令和7年に男性育児休業取得率30%を目標として掲げていますが、令和3年では男性育休取得率は13.97%にとどまっています。男性自身は4割以上が育休取得を希望していますが叶わず、希望と現実との乖離が認められます。男性が利用しなかった理由としては、「収入を減らしたくなかったから」がダントツで、ついで「職場の理解が足りなかった」、「自分にしかできない仕事を担当していたから」などが挙げられ、職場の理解が追いついていない部分に問題があり、国としても取り組んでいかなくてはいけないとの認識があったそうです。

こういう現状を踏まえ、どうやって育児休業を取得しやすい職場環境に変えていくのかが今回の改正のポイントとなります。すでに令和4年4月1日から、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対して、育児休業制度について給付内容などの詳しい説明と休業取得意向の確認を行う機会を設けることを事業主に義務付けています。さらに育児休業を取得しやすい雇用環境の整備として、職場の理解を深めるよう制度に関する相談体制の整備や研修、関連情報の提供なども義務となっています。実務上、育児休業取得に向けた意向確認の場は、あくまでも育児休業を円滑に取得できるように設けるものであり、取得を控えさせる場にしてはならないことに留意してもらいたいと強調されました。雇用環境整備については、一つでも対応すれば法的には充足しますが、可能な限り複数実施することで、より効力を発揮すると話されました。
また、同じく4月1日から施行されているのが有期雇用労働者の要件緩和で、「引き続き雇用された期間が1年以上」は要件から撤廃され、「1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない」のみが要件となっており、取得の幅が広がるのではないかと期待を寄せているとのことです。有期雇用労働者の取得の際は、労働契約の更新がないことが明確でないことが要件となっています。
この10月1日からの施行部分としては、「産後パパ育休」(出生時育児休業)と分割取得があります。まず、「産後パパ育休」は本来の育休とは別に取得が可能で、対象期間は子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能。これまでの育休とは違い、原則休業の2週間前までに申し出れば取得できます。子どもが産まれて大変な時期に、男性も育休を取得しやすいように設定したそうです。分割して2回取得が可能で、8週間の間にどのように分割しても、あるいは丸ごと取得しても良い柔軟な制度となっており、働かないことを前提としている育休ですが、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能とのこと。取得しやすさを考慮しての措置で、育児休業本体も2回分割取得できるようになっており、「産後パパ育休」と合わせれば4回に分けて育休を取得でき、仕事の繁閑など自分のスケジュールに合わせて取得しやすくなったのではとのことです。
令和5年4月1日から施行されるのが、常時雇用する労働者が1000人を超える事業主に向けた、年に1回の育児休業取得率などの公表の義務付けです。公表内容としては、育児休業等の取得割合あるいはそのほかの目的休暇との合算取得割合などとなっています。インターネットの利用を推奨しており、厚生労働省のHPにある「両立支援のひろば」に各企業の仕事と育児の両立について公表できるページや各企業のHPでの公表が可能です。
今回の法改正によって、ますます男性の育児休業取得が盛り上がっていくことを期待していると締め括りました。

スクリーンショット (厚労省中島さん).png

行政レクチャー質疑応答
レクチャーの後に行った質疑応答の内容は以下のとおりです。

Q1 従業員数1000名以上の企業の育児休業取得率の公表について
その1 公表頻度は決まっているか。
A 事業年度に則って、年に1回公表。

その2 グループ会社で1000人を超える場合は、各社で公表することになるのか、あるいはグループまとめての公表も可能なのか。
A 各社ごとに公表していただくこととなり、グループまとめての公表はできない。

その3 同一グループでも1000人未満であれば、公表義務なしとの判断でよいか。
A ご確認いただいたとおりで、事業主ごとに判断させていただく。

Q2 上場企業に対する育児休業取得率の公表義務はあるのか。
  A 公表対象者は事業規模での設定となっており、上場しているか否かについての線引きはしていない。

Q3 育児休業を取得しやすい雇用環境整備について、社内研修、個別周知・意向確認、事例紹介、制度・方針周知ポスターの掲示などが挙げられており、複数の実施が望ましいとのことだが、実施の優先順位などはあるのか。
  A 特に優先度は設けていないが、窓口の整備を選択される企業は多い。できることなら全ての実施が望ましいと考えているが、可能な限りでお願いしている。

Q4 「産後パパ育休」は男性のもの、産休は女性のもので、育児休業は男女の別ない設定で取得できるものと考えてよいか。
  A 「産後パパ育休」等ネーミングで誤解されやすいところだが、養子縁組も対象としているので、「産後パパ育休」=出生時育児休業は女性も取得できる。ただし、女性が産後休業を取得した場合は、「産後パパ育休」取得はできない。

Q5 「産後パパ育休」と育児休業は別物なので、両方とも取得してよいが、「産後パパ育休」は産後8週間以内に4週間取得できるものなので、産後すぐから続けて取得したい場合は、育児休業を利用するという理解でよろしいか。
  A ご認識のとおりである。産後すぐからまる1年間育児休業を取得したい場合は、育児休業取得を選んでいただければよい。

Q6 「産後パパ育休」及び育児休業期間中は無報酬となるのか?
  A いずれも、これまで通り取得6カ月間は休業開始前の賃金の67%が育児休業給付金として支給されるとともに社会保険料が免除されるので、実質8割程度の報酬が支給される計算になる。

基調講演
「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 
 誰が休んでも回る職場をどう作る?」

続いて、にっぽん子ども・子育て応援団企画委員で株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵が「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 誰が休んでも回る職場をどう作る?」と題した基調講演を行ないました。

まず、これまで数々の政策提言を大臣や国会議員の方達に直接手渡して、色々な政策をぐいぐい推しているのは、実はにっぽん子ども・子育て応援団で、ぜひみなさまもアイデアを寄せていただき、政策の中に取り込ませていただきたいとにっぽん子ども・子育て応援団の紹介を行ないました。

これまで2年以上、男性育休取得増加について取り組んでおり、企業のトップが署名をして、「男性育休取得100%を目指します」と宣言した企業は現在144社になったそう。
この4月は、漏れなく育児休業が取得できると周知、意向確認することは頑張りましたが、雇用環境整備の義務化について対応できなかった企業が多かったと振り返り、この秋から環境整備にも努め始めた企業が多いので、みなさんも今の時期から始めればと促しました。環境整備について、具体的には本人に向けた「父親学級」と上司や周囲の同僚に向けた「意識改革研修」の両方を実施していくと意識がグッと高まるので、非常に効果的であるとともに、取得しやすい空気が醸成されるとのことです。
10月からの法改正の中で、「休業中の就業」は、非常にニーズがあるのに実現できなかったことの一つ。育児休業中は働けないため、妻の出産の前後に自分が関わる大事なイベントがあるなどで、育児休業取得のほうを諦めてしまうケースがありました。法改正で「産後パパ育休」の期間だけは柔軟に働けるようになりました。ただし、これは労使協定を結んでいないと使えません。労使協定の雛形は厚生労働省のサイトに掲載されており、これを活用すれば簡単に作れるし、社会保険労務士さんがいらっしゃる企業なら簡単にできるそう。ぜひ労使協定を結んで「産後パパ育休」期間中にも柔軟な働き方の実現、男性の育児休業取得増加実現をとのことです。
来年4月から始まる育児休業取得等に関する公開は、自社決算の時期によって公表時期が違ってきます。3月決算なら6月まで、9月決算なら12月まで、12月決算なら翌年の3月までに公表することになります。問題なのは12月決算の企業で、2024年の3月まで公表しなくてもよいですが、それでは人材獲得上もったいないと小室委員。2022年12月末までの数字で他の企業と同じ時期に公表するメリットをご理解いただき、積極的に活用をと呼びかけていると言います。
さらに、今回有価証券報告書にも男性育児休業取得率等を掲載、開示することが望ましいという形になっており、「人事にとっては追い風だ」と小室委員。有価証券報告書にも記載となれば経営トップの意識が全然違ってきます。しかも、来春の採用における大きなムーブメントになり、就活サイトや雑誌などで男性育児休業取得率ランキングなどの特集が組まれるだろうと予測。経営層の本気度をもう一段ギアを上げさせるチャンスでもあり、早めにトップに説明に入ることが大切で、最大限活用していただきたいと語りました。

スクリーンショット (小室さん).png

法改正に直結させた話の後、男性育休取得率を上げることが必要な理由と、誰が休んでも回る職場づくりの重要性について、さらに詳しく、実例を盛り込んだ話になりました。
男性育児休業取得率を上げる前に立ちはだかる二つの壁があり、一つは本人の意思の壁で、もう一つが妻の意思の壁であると指摘。本人は、育児休業取得の必要性、本質を理解しないままに取得しないという選択をしてしまい、妻は第一子出産の場合に産後のイメージがつかないことから現実にそぐわない選択をしてしまいがちです。実は、産後の母親の死亡原因第1位は産後うつによる自殺で、産後2週間から1カ月がピークとなるのです。この時期に7時間の睡眠と朝日を浴びての散歩を行うことが、妻の自殺や児童虐待防止にもつながります。夫の関与をいかに引き出していくかが、重要な鍵になるのです。だから、「企業主導型父親学級」の開催、できれば夫婦揃っての受講を促し、男性の育児休業取得の重要性を伝えて、取得を促すことが重要であると説きます。
さらに管理職に響くのは、妻の愛情曲線の話で、出産前までは夫に100%注がれていた妻の愛情は、出産後には一旦全て子どもに向けられますが、やがては夫への愛情が回復するグループと低迷したまま戻らないグループに分かれると言います。どちらになるかは産後すぐの育児参画の度合いが重要で、特に産後1年間に夫婦で感情の共有ができたかどうかが、その後回復に向かうか否かを決定するとのこと。
さらなる問題がパタニティー・ハラスメント、通称パタハラ。問題の本質は常日頃から「誰が休んでも回る職場になっていないこと。本当の壁は、「休んだら周囲に迷惑がかかるような」脆弱な組織体制にあると指摘。このような職場は災害にも新型コロナウイルス感染拡大にも弱いとのこと。これを機に「誰が休んでも回る職場を作る方法」の研修を行い、事情がなく見える独身の人も普段から休みが取れる職場に変えようと呼びかけました。
環境整備義務対応の講座で、ぜひ伝えてもらいたいことを対象別に列記したスライドを示しました。管理職は特に「誰が休んでも回る職場を作る具体策・他社事例」を伝えます。本人には男性育児休業の必要性と、復帰後も長く続く両立生活を夫婦でマネジメントするコツを伝えます。同僚に向けては、特別な事情がなくても休める職場づくりの方法やアンコンシャスバイアス解消研修で、誰にも独自の事情があることを擬似体験させます。
次いで、誰が休んでも回る職場を作る方法として、具体的な他社事例を紹介しました。朝メール、夜メール、カエル会議を活用、各自の業務を30分単位で見える化し、情報共有に繋げ、とっさに交代できる状況を作っておく。何にどれくらい時間を使っているか、生産性を意識して業務を組み立てていくトレーニング。カエル会議でチームの課題と解決策を共有していく。誰かが休んでパンクするような状況にならないよう業務の取捨選択もチームで行う。付箋を用い無記名でアイデアを一斉に出すなどフラットな意思決定の方法を採用する。具体的な育児休業取得の推奨期間を提示、職位の高い人からできる限り変えていく、オンラインの活用などで育児や介護で働くことに制限が生じる従業員でも本来の力を発揮できる働き方を開拓など。
誰が休んでも回る職場を作り、男性もお迎えを担当するなど仕事の生産性と時間への意識を高め、女性が復帰後も責任ある仕事を引き受けられるようになり、夫婦の収入が安定し、子育て後半の難しい時期も夫婦で乗り切り、それを見て育つ次世代が、自分が子どもを持つことに希望を持ち、熟年離婚も減少して生活保護予備軍世帯が減り、定年後のQOLの向上へとつながる。
男性育児休業取得推進により、日本中に信頼の好循環が醸成される、どうぞご一緒にと呼びかけ、締め括りました。

参加した企業・団体サポーター様から
参加してくださったサポーター企業・団体から一般社団法人全国子育てタクシー協会の山口さんから、事業概要とサポーターであることのメリットについてお話しいただきました。事務局を担っているのは、横浜市で地域子育て支援拠点や保育所などを運営する認定NPO法人びーのびーのさんで、子ども・子育て世帯へのサポートも重要なサービスと考えるタクシー会社は増えているそうです。大きな規模の会社は自社での研修が行なえますが、規模の小さな会社に向けて、子ども・子育て家庭への理解を深め、心のこもったサービスの実現に向けた研修を担っているのが一般社団法人全国子育てタクシー協会とのこと。タクシーの監督庁は国土交通省ですが、にっぽん子ども・子育て応援団のサポーター企業・団体となることで、子ども・子育てに関するさまざまな情報が得られ、協会加盟企業にも情報提供をすることで喜ばれているとのことです。メリットについてもお話しいただけたことは、にっぽん子ども・子育て応援団としても大変ありがたいことでした。

交流タイム ブレイクアウトセッション
「誰が休んでも回る職場をどう作る」

後半は交流タイムとなり、にっぽん子ども・子育て応援団団長の安藤哲也のコーディネートにより、8つのグループに分かれて、「誰が休んでも回る職場をどう作る」をテーマにブレイクアウトセッションを行ないました。
安藤団長、勝間団長、小室企画委員及び「経産省の山田課長補佐 ただいま育休中」の著者でもある山田正人企画委員が、それぞれ各ルームに参加して、ご参加のみなさまと意見交換を行ないました。
グループセッションの後、各グループで出されたキーワードなどのまとめをチャットに発表していただき、団長及び企画委員が全体をまとめ、終会となりました。

にっぽん子ども・子育て応援団では、子どもが人々の慈しみの中で育つ社会の実現に向けて、党派も分野も超えたところでの世論形成と、子ども・子育て家庭を支える政策への財源確保に向けて、これからも取り組んで行きます。応援団ですが、どうぞ応援してください。

ブレイクアウトセッションのまとめ
現状

・男性主体の会社・男性が休む時の抵抗感
・マネジメント層には女性が少なく、育休とれるようにしようといったら大反発をくらった
(仕事がまわらない、どうするんだ)
・気合で仕事をする人が多い。・日本は連絡に時間を使う傾向あり
・経営層、昭和オールドボーイズネットワークの誤解・無理解をいかに啓発していくかが推進の肝と痛感中。
・誰が休んでも回る職場になっていない・・
・自社に戻ると自分がマイノリティーになってしまう!
・育児だけでなく介護問題も起きてきている。
・男性育休1.6→96%でも日数が少ないのが課題
解決策、良き事例
・業態によって違うが、世界を見てみよう
・職場の同僚や管理職の意識の改革や、仕事のわりふり、ローテーションの工夫が必要。早めに申し出も助かる。
・余剰人員の確保・重なる業務を減らす
・工場勤務では取得率100%(ライン等で調整可能)。ノウハウを営業や管理も共有したい
・育休中、他の人に残業が発生しなかった。
・社内報に掲載(本人+上司)、トップメッセージ→これがけっこう効きます!
・フルリモートの会社では、slackやグーグルドライブで全てを管理、共有、勤務地と自宅が離れていても回っている。
・誰もが休める職場、回る職場をめざしているが苦戦。→情報共有できる場にいるといい。
・支える人も評価してほしい、というのはよく聞く。
学校現場から
現状

先生が足りない、余裕がない窮状。女性の産休の代替も見つからない学校がある。
学校での育休はとれていない。特に公立。
解決策
学校の教員や公務員も育休取得率などの公表をしてもらうと、そこらへんにも社会の目がいくようになるかもしれない。




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2021年12月17日

子ども・子育て政策について、各政党国会議員に陳情(その1)

衆議院選挙も終わり、臨時国会も始まろうかという11月終盤から12月にかけて、子ども・子育て政策についての提言を携えて、にっぽん子ども・子育て応援団団長及び企画委員が、各政党の国会議員に向けて陳情を行いました。
第1弾は公明党衆議院議員の古屋範子さんのところへ、11月26日に企画委員の奥山千鶴子と清原慶子、運営委員の昼間洋子と事務局の當間紀子がお伺いしました。
2021年5月の周年フォーラムで発表した「子ども・若者・子育て家庭のウェルビーイングの実現に向けたアピール2021」をもとに、喫緊の課題5つをまとめ、古屋議員にお渡しした後、懇談しました。
今回の提言ポイントは次の5点です。

1.生まれる前から子どもの成育環境を守る
妊娠が母体に与える影響と必要なサポート、子どもは泣くのが当たり前など子どもの発達特性について、社会全体が深く理解し、妊娠期からの親子を慈しみの気持ちを持って受け入れられる環境と制度づくり。
2.妊娠・出産、子育て期の子ども・子育て家庭のウェルビーイングを図る
すべての妊婦及び子どもと家族が、必要なさぽーとを主体的に選べるサービス体制を実現させる制度づくり。
3.男性の家庭活躍を保障し推進する
子どもや家族と過ごし休める権利、子どもが親と過ごす権利としてのインターバル規制の実現と男性育休の促進。
4.社会的養護・若者(とりわけ若年女性)支援を充実する
環境によって子どもたちが進路や生き方の選択肢を狭められることがない社会の実現。とりわけ弱援助性への新たな法整備の推進。
5.実現するための制度設計と必要な財源の確保
子どもの権利を保護する基本法の制定と、それを理念として、すべての子ども・若者・子育て家庭を支える政策の実現と安定的な財源確保。
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2019年08月23日

一時預かり事業拡充のための提言を厚生労働省に提出しました。

8月22日、厚生労働審議官本多則惠さんに、一時預かり事業拡充のための提言をお渡しし、子ども家庭局保育課長矢田貝泰之さん、同局子育て支援課長田村悟さんらも交え、現状についての意見交換などを行いました。

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23日には、内閣府子ども・子育て本部審議官の藤原朋子さん、参事官の西川隆久さんにも提言をお渡しします。

今回提出した提言は以下のとおりです。

一時預かり事業拡充のための提言

核家族化や知り合いのいない土地での子育てを背景に、一時的に家庭での保育が難しい状況に陥りやすい家庭が増えていることを理解し、すべての子ども・子育て家庭を対象としている一時預かり事業の必要性を社会が認め、子育て家庭が気兼ねや不安をもたずに利用できるよう、その社会的意義を共有し、現状や子育て家庭のニーズを踏まえたうえで、拡充していくことが必要です。
たとえ短時間であっても、特別な配慮が必要な場合であっても、様々な困難を抱えながら生活する親子を支援し、子どもが豊かに安心して過ごせ、子どもの社会性を育む一時預かり事業を要望します。


〇実施状況 (平成30年子ども・子育て支援推進調査研究事業「一時預かり事業の運営状況等に関する調査報告」三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部共生社会部より)(n=1920)
・回答事業所の属性について、運営主体は、26%が自治体直営、58%が社会福祉法人。
実施している他事業は、保育所66%、地域子育て支援拠点事業25%、認定こども園25%。
・一時預かり事業専用室の設置割合は、42%。
・予約の受付方法は、電話89%、来所72%。インターネットの受付システムは1.6%のみ。
・受け入れ対象年齢は、1,2歳児が8割以上と多い。
・配慮が必要なお子さんを預かっている実施施設割合は27%。
・年間利用者の63%が非定期利用者。37%が定期利用者(1か月以上週3日以上)。
・定員の平均は8名/日であるが、年間延べ利用者数が、300人未満の実施施設割合が59%。
・延べ利用者数平均について、4月は33人、3月は50人と年間利用状況に季節変動がある。
・職員の勤務形態は、常勤51%、非常勤47%。専従68%、兼務30%。
雇用形態は、正規職員32%、臨時・嘱託職員26%、パート・アルバイト40%。
・資格は、保育士87%、幼稚園教諭49%、子育て支援員4.7%。

〇運営上の課題・難しさ(平成30年子ども・子育て支援推進調査研究事業「一時預かり事業の運営状況等に関する調査報告」三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部共生社会部より)(n=1920)
課題 
・定員以上の申し込みがあり、断らざるをえない 36.7%      
・利用者数に応じた職員配置など、調整の負担が大きい 27.1%
・配慮を有する子どもや乳幼児の預かりが増え、定員分預かることが難しい 24.1%
・職員を十分に配置するための費用に対して補助金額が不足している 19.1%
・電話対応や利用料徴収などの事務負担が大きい 17.9%
難しさ 
・慣れていない子どもを数多く預かる必要がある 56.7%       
・同時に複数の年齢の子どもに対応することが難しい 21.4%

〇緊急フォーラムで明らかになった課題
 1.一時預かり事業の位置づけ、現状把握ができていない。
 2.自治体間での格差が大きい。
 3.1時間300円〜800円と利用料がバラバラ。
 4.就労・学習、親のレスパイト、子どもの発達支援、虐待予防等、事業の目的が多様。
 5.家庭のニーズに、量的に応えられていない。
   2019年度の利用児童数の目標値、1,134万人に対して、2017年度末で495万人と半分以下。
 6.実際には様々な困難を抱えた家庭、配慮が必要な家庭が利用している。
 7.子どもを預けるには家庭ごとの事情から生じる理由があり、家庭の背景にある課題を見極め、親子を支援していくソーシャルワークの機能が求められる。

○わたしたちの提言

1.就労・学習、親のレスパイト、子どもの発達支援、虐待予防など子育て家庭の多様なニーズに応えることができる一時預かり事業の位置づけや意義について、国において改めて整理し、市町村はじめ関係者に周知することを要望します

2.全国どの地域に住んでいても一時預かり事業を利用できるよう、わがまちの子育て家庭の潜在的二ーズを的確に捉え、次期市町村子ども・子育て支援事業計画に、量的ニーズを踏えた計画づくりと実施体制の確保を要望します。
特に、幼稚園、保育所、認定こども園等に通っていない家庭への非定期利用の一時預かり事業の量的拡充を要望します。
 
3.量的拡充のために、以下が実現できるよう予算の拡充をお願いします。
・保育所、認定こども園等に併設された一時預かり事業について、担当保育士の処遇改善その他の事業所への支援の充実
・多様な実施場所、運営主体が参入可能な事業環境の整備
 具体的には、地域子育て支援拠点事業等、乳幼児家庭の身近な場所において実施される一時預かり事業の拡充
・専用施設設置のための建設費、改修費、家賃補助等の実施場所整備に関わる予算の拡充

4.子育て家庭が、安心して預けられる一時預かり事業の質の拡充をお願いします。
・最低2人の職員配置が可能となる国庫補助基準額のアップ
・保育士、子育て支援員等の配置基準の見直し、処遇改善
・困難を抱えた家庭、配慮が必要な子どもを預かるための研修、支援体制づくり
・子育て支援員等研修等の拡充 
・大規模事業所の事務職員配置加算やIT化促進費用の拡充

5.様々な困難を抱えた家庭、配慮が必要な家庭に対して、家庭の背景にある課題を見極め、親子を支援していくソーシャルワークの機能を果たすため、利用者支援事業や子育て世代包括支援センター、子ども家庭総合支援拠点等との連携や専門家による支援チームの派遣等の体制整備を要望します。加えて、同様な機能を果たす、ファミリー・サポート・センター事業、子育て短期支援事業(ショートステイ、トワイライトステイ)等の拡充も合わせて要望いたします。

6.一時預かり事業を身近な事業とするため、一時預かり事業の無料利用券の配布等の工夫をお願
いします。特に、困難家庭や定期健診未受診家庭など特別な配慮が必要な家庭の利用につながる
よう配慮を求めます。

2019年7月13日

にっぽん子ども・子育て応援団
よこはま一万人子育てフォーラム
緊急フォーラム参加者有志

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2019年08月20日

緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言」を開催しました。 緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言」を開催しました。 緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言」を開催しました。

 にっぽん子ども・子育て応援団は7月13日、東京・一ツ橋の日本教育会館で、緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言!!」を開きました。一時預かり事業に関する初めての実態調査の報告や厚生労働省による事業説明、実際に一時預かり事業を行っている現場からの実践報告を受け、参加者らでグループワーク。多様なニーズがありながらも厳しい運営にならざるを得ない現状とともに、配慮が必要な親子の増加や虐待の恐れのある子どもの受入れなど現代な深刻な子育て家庭の最前線にあることなども明らかにされ、今後さらに充実が求められることを確認しました。
 にっぽん子ども・子育て応援団ではこれらを提言にまとめ、一時預かりの担当部局である内閣府子ども・子育て本部および厚生労働省子ども家庭局に向けて、一時預かり事業のさらなる拡充を働きかけることにしています。

基調報告

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 厚生労働省の平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業として実施された「一時預かり事業の運営状況等に関する調査」について、担当した三菱UFJリサーチ&コンサルティングの鈴木陽子・主任研究員が報告。一時預かり事業の事業形態や事業主体、事業規模、職員配置状況などを明らかにしました。平均定員は8人で、利用年齢は1・2歳児が中心、週3日以上利用する定期利用は4割程度で、6割は年間延べ利用者数が300人未満と小規模。職員は保育士が9割で、半数が常勤。事業所の収入から給与総額を引くと、年間延べ利用人数900人未満では赤字になっていることも分かりました。配慮の必要な子や乳児の受け入れなどで人手が取られるために利用を断らざる得ない一方、急なキャンセルなどで職員が余剰となるなど利用者数に応じた職員配置が課題となっていることが挙げられました。このほか、保育者が事務負担を行うことやアレルギー・発達障害への対応、異年齢の合同保育、保育所より低い処遇などが課題に挙げられていました。

行政説明

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 一時預かり事業の推移や現在の補助内容、実態などについて厚生労働省の竹林悟史・前保育課長が説明しました。地域子ども・子育て支援13事業の一つである一時預かり事業は、理由を問わずに家庭での保育が困難な場合に利用できるという点が特徴。実施類型としては、一般型(保育所などで実施されているが場所の縛りはない)、幼稚園型T・U型(幼稚園を利用している人が利用する預かり保育)、余裕活用型(保育所は年度初めに定員に余裕があり途中から定員まで埋まるので、年度当初の余裕がある場と人を使って行う)、居宅訪問型(障害を持った子どもなどが対象)、地域密着U型(保育士の要件を一般型より緩和し、拠点などで実施されている)があります。
 保育所が持っている機能を開放するという形で平成13年ごろから補助制度がスタートし、平成20年の児童福祉法の改正で地域子育て支援拠点事業などとともに法律に位置づけられました。その際、実施主体を保育所以外にも拡大し、特定の子どもを継続的に預かる保育と区別するために「一時預かり」と名称も変更しました。また、拠点では、年齢別の配置基準を満たすことが難しいことから保育士が1人以上を要件とする地域密着U型が設けられました。その後、子ども・子育て支援新制度がスタートする前後に類型が見直され、保育所型と保育所以外の地域密着型をと統合して一般型とし、ひろばで実施されている地域密着型Uも一定の役割を果たしているとして残りました。自治体の事業計画では、平成25年度の実績400万人弱から、31年度末には1134万人まで増やすとされていましたが29年度末の実績で495万人程度と、達成は厳しいと見られています。実数が伸びないことなどに国としても問題意識を持っていることが明らかにされました。

実践報告
 友澤ゆみ子・NPO法人ピッピ・親子サポートネット理事長(横浜市)、新澤拓治・NPO法人雲柱社施設長(練馬区)、伊藤千佐子・NPO法人せんだいファミリーサポート・ネットワーク代表理事(仙台市)の3人が、それぞれの地域における一時預かり事業の実践について実情を報告しました。
 このうち友澤理事長は、単独型の一時預かり事業や認可保育所に併設した一時預かり事業、広場を利用した一時預かり事業などを展開し、全体で延べ利用人数数が4000人に上り、定期利用が多い事業形態とリフレッシュや緊急預かりが多い事業があることに言及しました。配慮の必要な子ども・保護者も増えており、受け入れられる人数は減少傾向、療育センターからの照会もあるなどソーシャルワーク機能が求められるようになっていることにも触れ、保育者側のスキルが必要だとして運営費の増額、保育士確保が課題だと訴えました。
 また新澤施設長は、子ども家庭支援センターにおける一時預かり事業について報告。延べ利用者は1万人程度で、週7日開所しており、練馬区が国の基準を上回る補助を行っており、充足率が9割を超えることなどが明らかにされました。予約や利用料の点から、一時預かりを利用した方がよい人が必ずしも利用できておらず、困難を抱えた人を受け入れらえるよう配慮していることにも触れました。区では当日キャンセルでも補助が行われていることで安心して事業運営できると指摘。一時預かりの保育の専門性について今後、検討する必要があるのではないかと問題提起がなされました。
 最後に、大規模な地域子育て支援拠点で実施される一時預かり事業について伊藤代表理事が報告。保育士3人で9人の子どもを受け入れる体制だが、処遇面などから保育士確保が難しく受け入れ人数は減少、国の補助の加算等が指定管理費用に反映されていないため、職員処遇を引き上げることが難しい点にも言及されました。心臓病など配慮を要する子どもやアレルギー児、虐待を受けたと思われる子どもなどのリスクの高い子の利用も増え、小児科や弁護士とも連携していることが挙げられました。広場に併設されているため、継続的に子どもと保護者をケアすることも可能となっている良さが指摘されました。

グループワーク・シンポジウム

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 参加者が6人程度のグループとなって意見交換。値段設定の難しさや幼児教育・保育の無償化による対象者が増えることへの懸念、配慮の必要な子どもの増加、自治体による対応の差、事務量の多さなどが課題に挙げられました。
 フロアからの問題提起を受けて、登壇者らが発言。「土日も実施するならば人件費もそれだけかかることを踏まえた事業費が必要」「断ることは難しいが、受け入れる場合にはリスクを引き受けることになる。情報量が少ない中、短時間でその子の特性を把握するといった専門性も考えるべきではないか」「一時保育の必要性が理解されない時代から事業を行ってきたが、虐待予防の観点からますます必要になってきている」「リフレッシュと言われるが、一時預かりの実態では厳しい家庭の子どもを預かっている。世間のイメージとのギャップがあるのではないか」「一時預かりを通して、深刻な家庭が多いことを実感する」などの意見が出されました。

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2018年08月02日

地域まるごとケア・プロジェクト2017年度報告書

さわやか福祉財団からの委託により2015年度から進めている地域まるごとケア・プロジェクトの2017年度報告書を、公式サイトにアップいたしました。以下のページからダウンロードできます。ご活用ください。
http://nippon-kosodate.jp/2017_marugoto.html
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2018年03月22日

2017年度地域まるごとケア・プロジェクト報告会を開催しました。

 にっぽん子育て応援団は2月18日(日)、東京・虎ノ門の発明会館ホールで「2017年度地域まるごとケア・プロジェクト/地域包括及び子育て世代包括ケア先進自治体調査と地域人材交流研修会開催報告会」を開きました。「私たちの手で創り上げる地域まるごとケア」と題して、行政説明や基調講演、先進事例報告が行われました。同調査は、公益財団法人さわやか福祉財団の委託を受けて行われたものです。

◎開会挨拶

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 さわやか福祉財団の清水肇子理事長は、にっぽん子育て応援団とさわやか福祉財団で、地域まるごとケアをテーマに3年間活動してきた成果を強調しました。30年弱の歴史を持つさわやか福祉財団は、高齢者だけではなく誰もが支え合い、みんなで助け合う地域づくりに向けた取り組みを推進中。介護保険制度の見直しで地域づくりを強化する仕組みが生まれたことを機に、生活支援コーディネーター、地域子育てにも着目し、地域でまるごとケアを進める自治体の調査研究を進めてきたことを紹介し、今回の先進事例を持ち帰り、さらに各地で地域まるごとの取り組みが進むよう期待を寄せました。

◎行政説明
 「地域共生社会の実現に向けた地域福祉の推進について」と題し、厚生労働省社会・援護局の定塚由美子局長が地域共生社会づくり・地域福祉の取り組みについて説明しました。

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 まず、地域共生社会づくりという考えの背景について言及。これまでの日本では、介護保険制度や障害者福祉、子ども・子育て支援制度など支援対象に応じて制度を充実させてきましたが、一つの制度で収まり切れない課題があちこちで発生、要介護者がいる家庭で引きこもりの成人がいるなど、世帯単位でみたときに相談事を持ち込む先が分からない事態が多発していることを挙げました。地域の福祉現場ではすでに縦割りではなく、種別や世代を超えたまるごとの支援をしてきていました。国も支援の支え手と受け手を固定して捉えるのではなく、弱まっている地域のつながりを再構築できるよう、住民がそれぞれの課題を自分のこととして参画する地域づくりを地域共生社会として進めることになった旨を説きました。
 その上で、「地域共生社会の実現」のために、@地域づくり・相談支援体制Aサービス提供体制B人材――の3つの観点で検討していることを紹介。地域づくりに関しては、さまざまな分野で支援活動を行っている人が参画した「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制の在り方に関する検討会(地域力強化検討会)」で論議し、市町村で包括的な支援システムを作り、相談する力がない人にはアウトリーチ(訪問)するなどして、地域でどこかの相談窓口につながる仕組みを作ろうと意見を取りまとめ、社会福祉法を改正したことを報告しました。
 さらに、社会福祉法の改正で、地域の包括的な支援体制づくりと地域福祉計画の策定が自治体の努力義務となり、地域体制づくりを含め推進している旨を紹介。地域づくりに関しては国として予算を設けてモデル事業を進めており、平成29年度は100自治体に補助、30年度は150市町村に支援を行う予定である旨を明らかにしました。さらに、地域共生社会づくりについては今後も検討をさらに進めていく旨を強調。昨年12月に指針を策定し、通知していますが、各自治体の実情に応じて取り組みが重要なことを挙げ、共生社会づくりに向けて、例えば予算の使い勝手が悪いといった難があれば声を上げていただくなど、地域と協働で進めることができるよう期待を寄せました。

◎基調講演
 「地域共生社会は住民自ら創り上げる 共創コミュニティ」と題して、日本福祉大学の原田正樹教授/学長補佐が講演。地域共生社会の現代的な課題について説きました。

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 原田教授は、まず、地域共生社会の理念について問題提起。「地域の課題を自分のこととしてとらえる」といった「我が事・丸ごと」の内容について、「昔から言われてきた」「国から強制されるのはどうか」といった指摘があることを挙げました。「地域」には優しさがある一方で排除する冷たさもあることに触れ、客観的な視点が必要なことに言及しました。
 その上で、相模原市で昨年発生した障害者施設での殺傷事件が、福祉関係者に問いをなげかけたことを取り上げました。犯人の「この世に障害者がいなくなればよい」といった主張に対して、賛同する人が多かったという現状に触れ、福祉関係者の「無知から障害者差別が起きる」という常識、日本人の福祉意識は総論賛成で各論は反対(障害者差別はよくないといった意識は持っているが、自宅近くには施設は建設してもらいたくないと思っている)という認識にも疑問を投げかけるものであったと話しました。
 こうした現状をもたらす要因の一つとして福祉教育に言及、無知を解消するために子どもが福祉を学んでいるが、そこで差別意識が再生産されているのではないかと提起しました。具体的には、福祉教育として行われている障害者や高齢者の疑似体験が不自由さの理解にとどまっているため、かえって障害者や高齢者はできない人だというマイナスイメージを強化し、健常者の優越意識を育てているのではないかと問題視しました。
 次に、この対局にある別の福祉教育を紹介。家族を持つ視覚障害の女性を教室に招き、リンゴの皮をむくという当人にとっては当たり前の作業を披露してもらうことで、「障害者=できない人」といった子どもたちの認識を覆している例を挙げました。そこから、障害、生活のしづらさは生活している環境によって左右されるという新しい福祉観・障害観に言及し、この見方に立った福祉教育の見直しの重要性を指摘しました。
 その上で、障害を持っていてもできることは無限にあるという福祉観や障害観を持つことが共生社会をつくる上での下地を作ると指摘。こうした意識を育てる質の良い福祉教育が求められており、そのために学校と地域社会の連携が重要だと説きました。
 さらに、「障害は環境による」といった考えに立つと、生活のしにくさを抱える人に対するまなざしも受け入れる方向へ広がるのではないかと投げかけ、本人の強みを大事にし、できることをもっと伸ばすという、その人らしさを支援することも共生社会の核になるのではないかと問題提起しました。高齢者についても単なる世代間交流では高齢者はお荷物といったマイナスイメージを広げるだけですが、その生きざまに触れるような交流により、子どもたちが高齢者に倣って脱いだ靴を揃え、言葉使いが丁寧になるなどの効果をもたらすことも紹介しました。
 また、原田教授は、「ニッポン一億総活躍プラン」で謳われている地域共生社会の理念、「全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる」との考えについて、「目新しい考え方ではない」と言及。支え手側と受け手側に分かれるのではなく、支え合う地域コミュニティを育成するためには、専門職の意識が問われていると指摘した上で、介護保険に契約という考えが入ったために、専門職の間に「契約に基づく利用者だけが対象」との意識が広がっていることを問題視しました。
 それだけに、地域福祉の在り方を制度や専門職の側から考えていかないといけないと主張。共生社会づくりの根っこは生活困窮者自立支援制度からスタートしており、この分野では、支援の必要な人は経済的に困窮している人だけではなく、社会的孤立もあると認識されてきたことを挙げながら、努力できない人も支援の必要な人だと受け取る地域づくりが重要な旨を訴えました。そこには自立に対する考え方も背景にあり、自分で稼いで自分で食べるという経済的自立、自分で決めて実行する社会的自立、精神的自立のほか、本人の弱さを認めて寄り添うといった自立もあり得るとして、「自立とは依存先を増やすこと」と主張した熊谷晋一郎氏(東京大学先端科学技術研究センター)の言葉を紹介しました。
 最後に地域づくりに関連して、今回の社会福祉法改正の重要性を強調。第4条、地域福祉の推進に関し、対象とする地域生活課題を絞り、地域福祉における国や地方自治体の責務が盛り込まれたことを評価しました。すでに全国各地でいろいろな取り組みが始まっていることに触れながら、自治体と地域住民との協働の在り方も課題であると指摘しました。そして、福祉を「ふだんの くらしの しあわせ」と捉えてはどうかと問題提起。福祉が毎日の暮らしの中にあるものと考えると、誰もが参加できるものとなり、多文化共生や社会的包摂、地域共生にもつながると訴えました。

【報告と提言「私たちの手で創り上げる地域まるごとケア」】
 にっぽん子育て応援団が2017年度地域まるごとケア・プロジェクトでヒアリングに訪れた3地域から実践報告をしていただきました。

◎「その人のニーズにとことん寄り添うことで次々事業が生まれる」
一般社団法人らぷらす代表理事 安斉尚朋さん
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 北海道夕張市での取り組みについて安斉さんが説明。どんなに重い障害を持っていても地域で暮らせるまちづくりを目指して活動してきた経過を報告しました。
 夕張市は、人口8300人で高齢者化率は50%、障害者は12%(国の平均の倍)。6割が高齢者や障害者という中で、高齢者や障害者が活躍できる環境づくりを重視してきたということです。まず、葬儀会場に使われていた公民館「はまなす会館」の閉館にあたり、当別町のNPO法人ゆうゆう(当時。現在は社会福祉法人)の協力を得て、指定管理で事業を継続。その際、障害を持つ我が子の働く場を探す母親と出会い、その要望に応えつつ、高齢者の食環境が貧しいという地域事情を考慮してお弁当づくりを始めました。ケアマネジャーや介護事業所とも連携し、配食・配食時の障害児が安否確認を実施します。実際には、地域の集まりなどでも注文が来るようになり、会館で食事会を開催するなど活動は広がっています。
 お弁当作りは、調理経験のない障害者が担当していますが、クックパッドでレシピを調べ、その通りにやるとおいしい料理ができることに気付き、一機にやる気になってくれたということです。塩一つまみや少々の分量が分からなくて困っていましたが、自分で調べて再現できるようになり、調理師免許を取るまでになったということです。
 また、広汎性発達障害の子どもを抱える母子家庭のために、児童デイサービスを事業化しました。同じ特別支援学級の友達も行ってみたいと登録者は増加。障害児だけで活動するのではなく、地域とのつながりを持てるよう、「餅つきを教えて」と高齢者ケアハウスに頼み、餅つき大会に来てもらい、夕張自然体験塾で地域の人と流しそうめん大会を行っているそうです。
 このほか、痰吸引が必要な子が利用できるようにパート看護師の配置を検討。そのためには看護師の子どもの保育が必要だと、保育士を雇って一時預かりを事業化したことも紹介されました。一時預かりの場は、子育て中のお母さんが拠点として活用するようにもなりました。安斎さんは、「一人のニーズは地域のニーズ」と受け止めて対応してきたと報告。作業所で対応できない仕事の依頼があった場合でも、ケアハウスの高齢者にボランティア募集と呼び掛けて活躍してもっていることも報告されました。
 らぷらすの取り組みに対して原田教授は、市民の6割以上が障害者と高齢者という状況で、それぞれのストレングスをみつけて取り組んでいる点、ひとりのニーズにこだわっている点の重要性を評価されました。

◎人や機関をつなげ、地域課題に対応するコミュニティ・オーガナイザー
 社会福祉法人文京区社会福祉協議会 浦田愛さん
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 文京区初の地域福祉コーディネーターとして活動し6年目を迎える浦田さんが、現状を報告しました。「人と物と金はある」文京区では近年、人口は増加傾向にあるものの世帯人員は減少し、生活保護世帯が増え、格差課題も顕在化しているとのことです。社会福祉協議会にも個人的な相談事が持ち込まれるようになってきたことから、地域に出て課題をさがすべきと、平成24年から地域福祉コーディネーターが配置されるようになったと報告されました。社会的な孤立やゴミ屋敷など、自分に問題が自覚していない人などに対応。平成28年から生活支援コーディネーターも兼務しているということです。
 その中で駒込地区(5万人)の取り組みが紹介されました。猫や植木の近隣トラブルなどの様々な個人支援の背後には福祉的課題があると指摘。住民のニーズがあれば活動を起こしていく「地域福祉コーディネーター」と、行政と政策的な話し合いをしながら介護予防的な活動を起こしていく「生活支援コーディネーター」の違いを使い分けながら活動しているということです。
 居場所づくりの例として、「こまじいのうち」が取り上げられました。玄関に募金箱が置かれているものの、金額は数えないなど運営は緩やかです。ここで、子ども食堂や栄養士会開催のキッチン、傾聴ボランティアのおしゃべり会、子育てサロンなどさまざまなイベントが開催されています。ここは、個人が相続した空き家を地域に居場所として貸し出した例。大家さんもやっているうちに楽しくなり、「こまじい」マスターとして中心的な役割を担っています。地域の人々が月300〜400人参加するほど緩やかにつながり、だれもが気軽に参加できるからこそ課題のある人もつながり、必要に応じて専門職につなぐ機会にもなっているとのことで、「こまじいのうち」をモデルに、他の地区でも居場所づくりが広がっているということです。「こまじいのうち」は、町内会のバックアップ機関である駒込地域活動センターと社協が両輪のように立ち上げをサポート。地域の40人が参加する実行会議でコンセプトや名前、利用料をとるかどうかなどを決めてきたとのことで、社協や地域活動センターは地域の中でコアスタッフを見つけ、住民だけで運営できるように支援していることも紹介されました。行政や社協が現場に出ることによって住民主体の世界を広げていく、協働の必要性が訴えられました。
 これに対して原田教授は、住民に丸投げするのではなく、コーディネーターが一緒に協働する、緩やかにたくさんの人が参加できている良さを挙げました。

◎多機関連携で、重複課題にも対応できる全世代型地域包括ケアへ
 長崎市福祉局地域包括ケアシステム推進室 谷美和さん
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 谷さんは、国の多機関型包括的支援体制構築モデル事業を平成29年10月から受けている長崎市の現状を報告しました。同市は被爆者がいるため介護機関が多く、専門職が多いという特色があり、それだけに専門職が地域に出て支える体制できないかと模索してきたことが紹介されました。現在、高齢化率は30%、傾斜地が多いのに山頂部に高齢者だけで住むケースもあり、住み慣れた地域で暮らすために傾斜地にゴンドラをつけるなどの支援策も行っているとのことです。
 多機関型包括的支援体制構築モデル事業では、高齢・障害・子育てなどにワンストップで対応するための相談窓口を設置。個別の相談支援だけでなく、相談のコーディネートや関係機関のネットワークまでを行う予定にしている旨が紹介されました。
 モデル事業となったのは、20カ所ある地域包括支援センターのなかの2カ所、訪問診療を行う診療所や介護や障害の事業所が多い中心部と、事業所が少なくヘルパーがいない周辺部でモデル事業を実施しています。ただ、相談については全市で受け入れています。
 モデル事業では、3人ずつ社会福祉士を配置し、複合的な課題を抱え包括的な支援を必要とする人の把握、ワンストップの相談受け入れなどから、関係機関の地域づくり、資源の開発、周知のためのリーフレット作成などを行っているということです。寄せられる相談は幅広く、1世帯で3つ程度の困難を抱えているケースが多いそうです。
 複合課題を抱える家庭支援例の中から子どもを含む具体例を2例紹介。70代の夫婦と40代の長男、10代の孫の三世代同居世帯では、認知症を発症した妻の介護サービス拒否と祖母の認知症が理解できない孫の振る舞いと不登校、多忙で家事を回す余裕のない長男と家のことに無頓着な夫という現状から課題を整理、孫支援にスクール・ソーシャル・ワーカーも関わるなど、多機関・多職種の連携による分野横断的な対応を報告。さらに、40代夫婦と学齢期の子ども二人、40代の夫の姉の世帯で、要介護認定の妻の介護サービス費や子どもの給食費の滞納と子どもの不登校に対し、生活困窮への緊急支援と生活立て直し協議、税の減免などの手続きへの同行援助などとともに、主任児童委員さんらと家族見守りネットワークを構築しましたが、夫婦の離婚も危惧され、一歩進んだ支援策を継続していると報告されました。これら具体的な例を踏まえ、専門職の連携と対応の質を上げる重要性が課題であると締めくくりました。
 これに対して原田教授は、地域特性を踏まえた仕組み作りを進めている点を評価。改正社会福祉法の施行で各自治体でも地域独自の取り組みが求められる点が参考になると説きました。

【応援団の報告】
 2015年から、3年間で25自治体を、地域包括ケアに子ども・子育ても仲間入りさせてほしいとお願いしながらヒアリングし、子ども・子育てに関する課題に対して地域の理解がないことが最大の課題であると痛感していると報告しました。子育てに目配りがある自治体は、高齢者や障害者などにも目配りするようになると指摘。この3年間の変化を示す例として高松市を紹介。2015年度にヒアリングで出会った子育て支援担当者が高齢・介護担当へと異動、2016年度に別件で高松市を訪れた際に挨拶にみえ、インターンの大学生に「高齢の居場所へ乳幼児親子も行きたくなるような方法を考えてほしい」とお願いしていると報告された。2017年度には地域に多く置き込んできた高齢者の居場所を多世代共生型に活用しようと、居場所づくりガイドブックを高齢部署と子育て支援部署の共同企画で作成、そのお広めを兼ねた高齢者支援関係者と子育て支援関係者の交流の場として、地域まるごとケア・プロジェクトの地域人材交流研修会を開催したことを報告しました。

【閉会挨拶】
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 にっぽん子育て応援団の樋口恵子団長が挨拶。人生100年時代の出生から墓場まで、スタート地と終着地は地域しかなく、子どもと年寄りの共通点は徒歩圏内の地域で似たようなものであることを改めて指摘されました。その上で、「社会はファミレス(=家族が少なくなる)化している」と問題提起。家族の構成員が少なくなると地域とのつながりもなくなるコミュレス化(=コミュニティにもつながらない)し、孤立しやすい社会となりつつあると分析しました。血縁がなくても地域をご縁に支え合う社会になれるかどうかによって、21世紀も日本の豊かな社会が持続されるかどうかも関係していると説きました。
 また、高度経済成長期に企業が経済発展に目を注ぐあまり家庭から父親を取り上げたこと、女性の就労の権利と義務を奪い専業主婦を最もよい生き方とする文化をつくったことを振り返りつつ、にっぽん子育て応援団が地域包括ケアの中に子ども世代も入れるべきだと提案してきたこと、その上で、「地域が変わらないと絶望的」「地域こぞって子育てを」と指摘しながら、子ども食堂に高齢者が乗るという新しい流れも出てきていることを評価。やがて生まれてくる子どもたちのこれからの100年を大事にするためにも、地域が重要であり、地域の欠点も見つめつつ克服する必要があるとし、同時に、障害があってもなくても障害を感じさせない、障害を感じないで生きていける社会をつくる覚悟を表明、一人一人が主人公であると説きました。

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2018年02月23日

地域まるごとケア・プロジェクト2016年度報告書。

にっぽん子育て応援団が、公益財団法人さわやか福祉財団から委託を受けて2015年度からスタートさせた地域まるごとケア・プロジェクト2016年度報告書をアップしました。
2016年度調査概要と問題提起・提言.pdf

2016年度ヒアリング調査結果(芽室町・仙台市・藤沢市・知多市).pdf

2016年度ヒアリング調査結果(奈義町・高知県・北九州市・豊後高田市).pdf

2016年度報告会.pdf
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2017年11月24日

緊急フォーラム「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」を開催しました

にっぽん子育て応援団緊急フォーラム
「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」

 にっぽん子育て応援団は10月1日、東京家政大学板橋キャンパス120周年記念館1階多目的ホールで、緊急フォーラム「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」を開催しました。フォーラムでは、子育てひろばや行政などから子ども・子育て支援の現状について報告が行われた後、ふるさと納税や企業の社会貢献活動など子ども・子育ての財源を確保する手法が提案され、すべての子ども子育て家庭に支援が行き届くようすべての大人で負担を分かち合うよう求める緊急アピールを採択しました。

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◎パネルディスカッション「これが子育ての現実だ」
 NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事の岡本聡子さん、沖縄県南風原町民生部こども課長の前城充さん、兵庫県明石市福祉局こども総合支援部長の佐野洋子さん、東京家政大学短期大学保育課准教授(女性未来研究所研究員)の平野順子さん、東京家政大学子ども学部長(小児科医)の岩田力さんがパネリストとなり話題提供。コーディネーターを団長の安藤哲也、勝間和代が務めました。

 まず、岡本さんがご自身(ふらっとスペース金剛)の実践について紹介。大阪府富田林市内で2003年から地域子育て支援拠点事業4か所を運営、現在は市から養育支援家庭訪問事業(育児ストレス、産後うつ病等で不安や孤立感等を抱える家庭に子育て経験者等が訪問し育児・家事の援助をしたり、保健師等が指導助言し、家庭の諸問題の解決、軽減をはかる事業)を受託し、今年6月からは大阪府から委託を受け児童虐待の通報を受けた児童の安全確認業務を行っていることを明らかにしました。
 その上で、ひろば全協が地域子育て支援拠点の事業所240団体、母親2400人(1175人が回答)に実施したアンケート調査の内容を報告。利用者は35〜39歳が多く、仕事はしていない利用者が9割だが、うち2割は育児休業中で、ひろば利用者は在宅子育て世帯だけではなくなっている現状にあることなどを紹介しました。そして、アンケートで発見されたこととして、7割の母親が自分の生まれ育った市町村以外で子育てしていることを挙げ、これを「アウェイ育児」と呼びました。「アウェイ育児」では、近所で預かってくれる人が少ないなど孤立感の中で子育てしている割合が高く、アウェイ感を増大させていることにも触れました。子どもが少なくなるほど親の孤立感は深まり負担感は増すとして、親に寄り添う支援の必要性が強調されました。そして、育児休業や多様な働き方をする子育て家庭への支援のためにも保育所や家庭的保育などと拠点が連携していく必要性を訴えました。
 南風原町の前城課長は「子どもの人権を考える〜ひとりぼっちの子どもがいないまちを目指して」と題して南風原町の取り組みについて報告しました。人口3万8000人の同町は人口30万人の那覇市の右隣に位置し、生活圏は那覇市と重なる。子ども施策に力を入れているため移住が多く、平均年齢34歳の若い町で合計特殊出生率が2.07と人口が増え続けている町でもあります。全国と比べて貧困率が高い沖縄県において、同町では子どもの貧困対策を「孤立対策」と呼んで取り組んでいます。貧困の課題として、若年出生率、高校不登校率、高校中途退学率、中卒後の進路未決定率の高さに注目。同県では離婚率が高いが、その理由は夫の生活力がないことであり、その点は中卒とも関連。一人親家庭では、昼間働く場がないために夜の仕事に就き、子どもは夜、親がいない寂しさから特定の家をたまり場とし、夜間徘徊や非行に発展、不登校が増えるという連鎖が生じる。中学校で不登校のまま卒業すると若年出産にもつながるなどリスクが高いと認識、小学校の不登校児をフォローしてゼロにするか、孤立する子どもを減らすという観点で包括的に取り組んでいる旨を報告しました。平成28年度からスタートしたのが「子ども元気ROOM」。365日、夜22時まで支援を必要とする子どもに対応し、生活指導、学習支援、食事の提供、キャリア形成などを実施している。養育支援のために送迎も実施。保護者は最初、拒否反応を示すが、子どもが安定してくると心を開き保護者も変化していることなどが報告されました。
 明石市の佐野部長は、「こどもを核としたまちづくり」について報告しました。神戸市に隣接した明石市の合計特殊出生率は1.58で人口とともに上昇中。子どもを核としたまちづくりとして、次々と施策を展開していることで、子育て世帯が流入し、税収が増加、戸建て住宅の新築やマンションの建築などによる地価の上昇、町のにぎわいなど好循環が生まれていることを報告しました。明石市長は、子ども施策にお金を投入すると、それは必ずまちづくりにつながるとの信念をもって取り組んでおり、現実に町が元気になっていると自分も感じると話しました。
 その上で、子どもを核としたまちづくりの理念について言及。@すべての子どもを対象とするA支援の必要性も多様化しているので、子育ては親だけに背負わすものではなく地域みんなで支えるB親目線や行政のやりやすさの視点ではなく、子ども目線で考える――との3つのポイントを挙げました。そして、市ができることはあれもこれもすべてやると、総合支援を進行していることを強調しました。具体的な施策としては、早期の気づきと対応策として妊婦の全数面接を実施、地域での子ども食堂の展開、困難な状況におかれた子どもへの支援として無戸籍をはじめ様々な支援。教育の充実として30人学級の導入、経済的支援として医療費の無料化、第二子の保育料の所得制限なしの無料化、社会的養護が必要な子どもへの支援に里親プロジェクの展開。31年4月には中核市となるので、児童福祉法改正後初の児童相談所設置を目指していることも明らかにしました。また、明石市こども総合支援条例には、支援が必要なこどもへの取り組みも条文化し制定していることを報告しました。
 事例を受けて平野准教授が現状から見えてくる家族の変化や現在の子育ての問題を整理。現在の子どもや子育て家庭は様々な社会の影響を受けやすく、家族がセーフティネットとなりえていないことを指摘。世帯の小規模化、単身化が進んでいる。若年層の経済的不安定化が進み共働き率が上昇しているが、何かあった時に経済的に不安定な状況に陥りやすい点も指摘した。子育て家庭の孤立化も進み、子育ての悩みを相談できる人がいるという人が2002年から2014年で減少し、子どもを通したかかわる人がいない人も増えている。その一方で、家庭での育児が女性に偏っている。子育てでイライラする人が増えている。
 各国の家族関係社会支出の対GDP比をみると、日本全体では子どもにお金をかけていない。過去と現在を比べて家族が変化し、子育てをしている親の意識も変わっているが、周囲の意識は変わっていない点も挙げました。若年層は家庭を持つ事を想像できないだけに、家庭で育児をする場合の実質的な後ろ盾が必要だと説きました。
 さらに、岩田子ども学部長は、小児科医と保育士の専門性の共通点について言及。小児科医は、子どもの健康発育・発達にかかわりながら、子どもが自分の可能性を引き出せるよう関与し、子どもや家庭の健康や福祉の支援に関与するだけではなく環境にも関与する必要があること、子どもは社会の再弱者だけに不利益を被りやすく特別な注意を払う必要があることなどは同じであり、保育士も専門性を社会に訴えていく必要があることも説きました。

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◎提案タイム「まずお金! 財源について考えよう」
 小泉進次郎衆議院議員らが「こども保険」を提起したことを受け、多様な財源確保の在り方を提起し議論する予定でしたが、衆議院解散が決まったことから小泉議員が欠席となり、「こども保険」についてはコーディネーターの奥山千鶴子企画委員が説明。多様な財源の在り方については、東京都文京区(ふるさと納税の活用)、住友生命保険相互会社(企業の社会貢献活動)、日本労働組合総連合会(拠出金制度など)から発表がありました。
まず、「ふるさと納税 目的は困窮子ども家庭の生活支援」と題して、東京都文京区子ども家庭部の鈴木裕佳・子育て支援課長が説明。29年度重点施策として子どもの貧困対策に取り組む同区で、いくつかの機関を連携して「こども宅食プロジェクト」が始まったことを報告しました。ふるさと納税寄附受付前の初期経費は村上財団、広報についてはNPO法人フローレンス、対象とする貧困世帯への周知は文京区が行い対象者は個人でフローレンスに申し込む。RCFが食材を調達し、NPO法人キッズドアが食材を梱包・配送するなど役割分担して連携している。同事業は、食材を届けることを入り口として定期的に訪問することで気付きを得る。虐待等のリスクに陥る前の支援につながると期待している。貧困対策に出遅れていた同区で様々な施策の総合展開を検討する中、人知れずに届ける工夫はないかと思案。同じくして貧困世帯へのアプローチに限界を感じていたフローレンスから、こども宅食のアイディアが持ち込まれ、ふるさと納税で財源が作れないかかと提案があり実践。ガバメントクラウドファウンディング(ふるさと納税)で2400万円の寄付を集めたが、寄付者からは文京区ということではなく、貧困対策の成功事例を作って全国に届けてほしいとの意見あり、社会的課題に財源をどう集めるかという観点で一つのアイディアになるのではないかと問題提起しました。
次に、住友生命保険相互会社の松本大成・ソーシャルコミュニケーション室長が、「未来を強くする子育てプロジェクト」について説明。事業がスタートして10年経過したが、同社プロジェクトの受賞を契機に周知され、自治体の委託事業を受けるなど息の長い活動になることを期待して支援していることを説明。全国の団体等を直接支援したくとも財源には限りがあるため、表彰制度を通じてアイディアを発掘し世の中に拡がることを期待している旨を明らかにしました。
 また、連合の平川則男総合政策局長が、「子ども子育て支援の財源について」と題して意見発表。社会保障制度は社会保険料と税により財源が賄われていますが、社会保険料のうち半分は従業員(被保険者)が負担しています。686万人の組合員がいる連合は最大の被保険者の組織で社会保障制度に積極的に関与する役割があると説きました。子ども・子育て支援の財源に関しては、新制度の準備段階の検討にも参画して様々な勉強会を開催、「前提として社会保障税一体改革をやってもらいたい」と現行の新制度の遂行を求めました。その上で、さらに拡充すべきサービスとして待機児童解消と保育人材の確保に言及、幼児教育の無償化はその後の検討課題としました。これ以上の財源確保に関しては、「社会全体で支えるということでは税による財源確保が原則」とし、それに加えて子ども・子育て拠出金(事業主と国民による拠出)の創設も含めた方策も考えるべきと指摘。小泉議員らが提唱する「こども保険」については、「子育てをリスク化と捉える点で抵抗感がある」と訴え、拠出金という仕組みで国民が負担し子ども・子育てを支えることが可能なのか検討する必要があると説きました。
「こども保険」について奥山企画委員が説明。消費税の10%引き上げ分から子ども・子育て支援新制度に充当する7000億円は増税が実現していない段階ですでに使われており、さらなる財源確保が必要だと「こども保険」を打ち出したこと、社会保険料0.1%増で3400億円の財源が確保され就学前の子育て世帯に対し月5000円程度の軽減が可能となり、0.5%増では約1.7兆円が確保され月2万5000円程度の負担軽減となり実質的に幼児教育が無償化される、1.0%増で約3.4兆円が確保されさらに踏み込んだ子育て支援も可能になると試算したこと、社会保険料として厚生年金、医療保険、介護保険、雇用保険、こども保険が並べられたときに子どもへの支援の少なさが顕在化する効果も狙っていることなどを紹介しました。

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 これらの意見を受けて参加者が数人のグループになって意見交換。多様な財源確保の手段があること、財源の使われ方にも注意する必要があることなどの意見が出されました。
 奥山さんは、「にっぽん子育て応援団では子どもの財源をいかに集めるか、財源確保に向けて引き続き、取り組んでいきたい」と訴えました。

◎アピール
 参加者の賛同を得て、安藤哲也団長と勝間和代団長が「現世代のすべてのおとなたちで負担を分かち合い、子どもの未来を拓くための緊急アピール」を読み上げました。

現世代のすべてのおとなたちで負担を分かち合い、
子どもの未来を拓くための緊急アピール

子どもは未来からの預かりものです。
そして、今のおとなたち、私たちの誰もが、かつては子どもでした。
私たちが今、ここにあるのは、生み育ててくれたおとなたちがいてくれたからです。自分では何も出来ず世話が焼け、騒がしく周囲に迷惑ばかりかけていた私たちを慈しみ、手も声もかけ、居場所を作ってくれた、家族と地域のおとなたちのおかげで、今があります。
新たに生まれて来るいのち、今を健気に生きているすべての子どもたちの成長を、すべてのおとなたちが手をつなぎ、心を寄せ合うことで、この社会全体で支えていこうではありませんか。それこそが、未来を拓くことにつながります。

子ども・子育て支援や教育について、これから非常に重要な議論が行われようとしている今、今日緊急フォーラムに集った私たちは、子どもの最善の利益の観点から、

○ すべての人に開かれた機会を確保するためには、「すべての子どもと子育て家庭に行き届く支援」が必要であり、具体的な政策の立案に当たっては、様々な困難を抱える子どもや子育て家庭に行き届き、決して取り残されることのないよう構築されること

○ 子どもの育ちを支え、応援していくためにも、そのために必要な経費については、今を生きる私たちすべてのおとなの責任で負担し合うこと

が重要であることを確認し、ここに宣言します。

2017年10月1日
にっぽん子育て応援団
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2017年11月20日

地域まるごとケア・プロジェクト2015年度報告書

にっぽん子育て応援団が、公益財団法人さわやか福祉財団から助成を受けて2015年度からスタートさせた地域まるごとケア・プロジェクト2015年度報告書をアップしました。

2015年度報告書
 2015年度報告書調査概要と問題提起.pdf
 2015年度報告書提言.pdf
 2015年度報告書ヒアリング調査結果(北見市・大船渡市・世田谷区・名張市).pdf
 2015年度報告書ヒアリング調査結果(東近江市・雲南市・高松市・臼杵市).pdf
 2015年度報告会.pdf
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2017年07月03日

にっぽん子育て応援団結成8周年記念フォーラム報告記

 にっぽん子育て応援団は5月28日、「すべての子どもたちが愛されて育つ社会づくりへ」と題した結成8周年記念フォーラムを東京・港区の明治学院大学白金キャンパスで開催しました。フォーラムでは、児童福祉法改正をテーマにした松原康雄・明治学院大学長の基調講演や、子ども家庭福祉分野の実践者を招いたパネルディスカッションが行われました。全国から参加してくださった100名の方々は、行政担当者、子育て支援者、研究者、学生、そして当事者と多彩で、参加者アンケートには熱いメッセージが寄せられました。

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【基調講演】
「すべての子どもたちと子育て家庭に手を差し伸べる社会へ
〜児童福祉法改正と新しい子ども家庭福祉〜」


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 今回(2016年施行)の児童福祉法改正の在り方について審議した厚生労働省社会福祉審議会の委員会「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」の委員長を務められた松原学長に本会の法改正の背景やポイント、これからの子ども家庭福祉のあり方についてお話しいただきました。

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 まず松原学長は、子ども・子育て家庭に関する課題として、少子化(第3次ベビーブームは出現しなかった)、子どもの貧困の広がり(平成24年度の子どもの相対的貧困率(=所得中央値の50%を下回る所得しか得ていない者)は16.3%でひとり親家庭の子どもの貧困率は54.6%)、子ども虐待の増加(子ども虐待の定義が見直され夫婦間暴力が心理的虐待と位置付けられたことから警察署経由の虐待が急増している)などを挙げました。
 その上で、児童福祉法はこれまで適宜改正されてきましたが、今回は「少しずつ改革することでは間に合わない」と急速なパラダイムシフト(考え方の対転換)が図られたと指摘しました。
 改正児童福祉法の大きなポイントは、子どもの権利が認められたことで(第1条)、児童の市民的権利や保護される権利も意識されていると説きました。また、第3条の2では、家庭的な環境での養育の重要性について言及し、国や市町村の役割を挙げていることにも触れました。具体的な措置としては児童相談所の強化で、平成30年を目途に設置自治体を拡大します。
 また、支援にあたっての重要な視点は、「子どもの力、親の力をいかに信頼するか」と支援者が当事者を信頼する重要性を指摘しました。児童養護施設の第三者評価モデル実施に際して、高校生が「初対面の人に本音は言えない」と意見したことからアンケート方式が採用となるなど、子どもたちは力を持っていることを強調しました。さらに、必要に応じて現存の新たな子育て支援活動を生み出してきた親の力も信頼するよう述べました。そのように当事者と支援者らネットワークを組んで子どもを育てることを「協育」と表現しました。
 さらに、子育て支援事業は当事者にはぜいたくなサービスだと思われているため、「必要な支援は使ってよいとの認識が社会的に共有されることが重要」と説き、それだけに当事者がすぐ情報にアクセスできる使い勝手の良さが重要だと指摘しました。その上で、「最後の課題は来ない人をどうするか。当事者が根負けして扉を開けるまで待つ必要がある」と粘り強い取り組みが重要なことを訴えました。当事者とコンタクトを取り続けるためのサービスを開発する必要があるとして、離乳食の宅配などのアイディアも例に挙げました。最後に、「子育てしやすいまちは、子どもが豊かに育つまち、子どもが豊かに育つまちは、高齢者や障害を持った人も暮らしやすいまちだ」と訴えました。

【パネルディスカッション 子ども家庭福祉のこれから】
 「すべての子どもが愛されて育つ社会に求められること」


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 松原学長の講演を受け、子ども家庭福祉の実際とこれからの展望についてさらに理解を進めるべく、立場の違う現場の実践者及び当事者をお招きし、パネルディスカッションを行いました。コーディネーターは、にっぽん子育て応援団団長の樋口恵子と勝間和代が務めました。

◎行政レクチャー「児童福祉法改正に伴う新しい動き」
 パネルディスカッションの冒頭、厚生労働省雇用均等・児童家庭局の吉田学局長が、子育て支援施策の動向について説明しました。まず、少子化社会対策大綱や子ども・子育て支援法、一億総活躍社会、働き方改革など、直近の課題群を挙げ、これらの施策が様々な課題を総合的に進めようとしていると整理しました。平成27年からスタートした「すくすくサポートプロジェクト」でも、ひとり親家庭や多子世帯などに対し、様々な施策を組み合わせて総合的に支援しながらも一人一人に寄り添う支援にも配慮している点を挙げました。その上で、「漸進的な取り組みでは間に合わないので、スピードを上げてやろうというのが今の段階」と言及しました。

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 また、子ども・子育て支援新制度については、地域によって異なるニーズにどうきめ細やかに対応するかがカギだと指摘。一億総活躍プランでは、働き方改革と子育て支援が一つになっており、保育と女性活躍、母子保健分野が盛り込まれていることを挙げました。
 さらに、高齢者施策を中心に、地域における包括支援の動きが進んでいることにも言及し、多職種連携が求められていると説きました。その際、顔が見える関係になるだけではなく、腕(何ができるか)が見える関係となり、腹(やる気)が見える関係なって初めて信用できると強調し、「そこまでいかないと地域では連携できない」と指摘しました。そして、子どもを地域で支援されてきた方々の間で連携を深め、さらに地域の実情に応じて高齢者や障害者、生活困窮者など分野を超えたコラボも始まっているとのコメントがありました。
 ここまで国が様々な施策を打ち出してきましたが、「制度や事業を活用するにしても、なによりも地域の皆さんがどう実践するかこそが大事」だと指摘。利用者にとってニーズに対応した取組みは、地域での実践事例から生まれてくるとして、それをどのように広げていくか期待していると訴えました。

◎パネルディスカッション

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 吉田局長の説明を受け、泉房穂・明石市長(兵庫県)、千葉県中核地域生活支援センターがじゅまるの朝比奈ミカ・センター長、埼玉県朝霞市子育て支援センターおもちゃ図書館なかよしぱぁくの住田貴子・施設長がそれぞれの実践を報告しました。
 まず、泉市長が市の子ども施策の特徴と考え方について説明しました。「親がお金を持っていたとしても、子ども自身がお金を持っているわけではない。だからすべての子どもを支援する。やれることは全部やる。それがまちの発展につながる」と子どもにシフトした施策を打ち出してきたことを明らかにしました。
 市が行った施策は具体的には、いわゆる一般的な子育て世帯が住みやすいまちとすることです。「子育てするなら明石」と銘打ち、子育て支援に特化した予算を編成(こども医療費の無料化、保育所保育料の2人目以降の無料化、中心地への児童養護施設配置、駅前への児童相談所配置予定、全小学校区に子ども食堂設置、里親100%など)しました。神戸市から明石市に引っ越せばこどもにかかる医療費等の負担が激減し、使えるお金が増えるといった比較広報を行ったことにも言及しました。
 こうした泉市長の行動の原点は、40年前にさかのぼります。障害を持つ弟に対し、遠くの学校へ通うよう行政が措置しました。最終的に近くの公立学校に通えることになりましたが、登下校をともにした泉市長は、「何かが間違っている。もう少し優しいまちにならないか」と考えてきたことを紹介しました。これは行政サービスが個人ではなく世帯で提供されることの問題だと認識。「子どもが親の持ちもの」となっている状況は現代も変わらないと指摘しました。そこから、離婚の際に最も不利益をこうむるのは子どもだが、その子どもを支援する仕組みがないとして、社会システムを作るために市長になったことを紹介しました。
 子どもへの予算シフトによって、明石市では人口が下げ止まり、人口が増加するほか、出生数も増加し、財政状況も好転していることが紹介されました。「すべての子どもたちをまちのみんなで育てる。親のものではない」と訴えました。

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 朝比奈センター長は、同センターの経緯について紹介。平成16年、堂本暁子知事時代にどんな相談でも応じる事業として誕生し、県の単独予算で整備されてきました。生活困窮者自立支援法ができる前、制度別の支援策が充実していても、現役世代の支援が少ない、複合した問題を抱える家族全体にかかわる仕組みがないという中で生まれたことが指摘されました。
 中核センターは、平日の日中以外でも相談支援を行うことが役割。がじゅまるは、市川圏域(市川市、浦安市)約60万人を対象とし、少ない職員でどうすれば相談を受けられるかを常に考えてきたと述べました。子育て家庭への支援では、精神疾患や軽度知的障害があるなど社会生活能力に不安のある世帯へのかかわりなどが求められたことを紹介。軽度の知的障害で障害者手帳を持たないなど、制度の狭間にある層へ支援してきたことが挙げられました。
 その後に始まった国の補助事業である「よりそいホットライン」には1日2万件を超えるコール。8〜9割程度は行政窓口に相談しているが、聞いてもらえなかったケースが寄せられていると指摘されました。若年層には電話だけでは不十分とチャットやツイッターも活用。繰り返しの相談の末に地域の社会資源につなげていく際には、関係機関に一緒に出向いてつながったことを確認するといった出張型の支援も実施しているとのことです。
 支援の基本は、「その人の人生を理解するように努めること」として、対象で分けたり、時間で区切ったり、主に親族が担ってきた支援(病院の付き添いなど)も軽んじずに行うことが重要だと指摘。生活のしづらさの背景には愛着形成の不全や発達障害などが想定されますが、社会的なふるまいが身についていくことで対人関係が好転し自己肯定感も上昇していった事例があることを挙げ、「寄り添うとは、その人の人生につきそっていくこと」と説きました。
 これからについては、家族の構成員が少なくなってきているからこそ、いろいろな大人と出会う場となる地域は重要と指摘。ただ、地域共生社会の中で、「消極的な拒否」など地域活動に参加しない人をどうするかも課題となっていることに言及しました。子ども食堂に対して、「あそこは貧しい子どもが行くところ」とレッテル貼りをして理解し合えない状況があることを挙げ、「想像力と仕組みの不全は社会的に弱い立場の人にしわ寄せがいくと思い相談活動を続けている」と述べました。

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 住田施設長は、「親育ち、子育ちを支える場所」と題して、なかよしぱぁくの成り立ちと活動について説明しました。1992年、「障害のある子に豊かな放課後を過ごさせたい」と「なかよしグループ」でレクレーション活動を開始。それがのちに障害児学童に。2010年には学齢期の障害児向けのおもちゃ図書館「なかよしぱぁく」を作り、2013年には障害児学童やおもちゃ図書館の実績が認められ、市の委託を受けた子育て支援センターとなったことが報告されました。その一方、障害者の働く場として「なかよしかふぇ」をオープン。法人のベースとなっている障害児学童は、療育や訓練ではない毎日の遊びの場であり、親兄弟も含めて一つの大きな家族となるように運営されてことにも言及しました。
 自身の活動については、長女が生まれると長男はイライラするようになり、周囲では支援が必要な家族と思われてきたと振り返りました。長男は3歳で自閉症と診断を受け、おもちゃ図書館に通うようになる一方、通い始めた保育所で慣れない障害児保育に保育者が退職する事態となり自身も保育士資格を取得したということです。
 おもちゃ図書館とは、障害のある子どもたちにおもちゃのすばらしさと遊びの楽しさを伝える場。通っていたおもちゃ図書館は家でも遊べるようおもちゃを貸し出しており、利用者は障害のある子、その兄弟と親だけで、居心地のよい空間でした。それだけに、子育て支援センターとなり、自法人だからこそできる居心地のよい子育て支援を推進。約束事は最低限として、ふだんからコミュニケーションをとって情報共有を図るよう運営されていることを挙げました。
 利用登録は1100組を超えており、登録者には明確に障害がわからない子どもも多いということです。支援にあたっては、子どもが持って生まれた育てにくさや親子の相性など、親の困り具合に応じてサポートする柔軟性を重視している旨を報告しました。日常的にコミュニケーションを取り合うことで、自分の子どものことしか見えていない母親でも、子どもとの付き合い方を学ぶようになり、その後ほかの母親を支援する側にまわる。母一人で相談にくる場合でも、自分のために時間をとってしまって申し訳ないと思わないようにサポートを依頼、再び相談に来やすくなると説きました。
 ただ、最近、「本当に支援が必要な人にとってセンターは敷居が高い場所になっているのではないか」と自省。本当の支援とは何かについて悩んでいると話しました。その一つが、障害児を取り巻く環境の変化。放課後等デイサービス制度がスタートし、保護者がサービス事業者に丸投げしている状況が見受けられます。特別支援学校前にはデイサービスの送迎バスが並び、障害児たちが各々施設へと送り届けられる。仲の良い友達同士が一緒に食事をとったり、保護者が他の成長を見守ることも少なくなっているのではないかと問題提起しました。「自分の子もかわいいが、他の子もかわいいと思える経験が必要。子どもに障害があっても周囲のサポートを得て子育てを楽しめる社会になってほしい」と訴えました。

◎ディスカッション

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 まず、勝間和代団長が、産後うつの母親に対して具体的にどんな支援が可能か問いかけました。
 吉田局長は、子育て世代包括支援センターで情報を収集・発信するほか、こんにちは赤ちゃん事業で母子保健関係者が目配り。平成29年度から、アウトリーチ型の産後ケアもスタートしていることを紹介しました。
 泉市長は、新生児親子の面談は必須だが、母子健康手帳を取りに来ない保護者には、担当者が渡しに行き、連携を持つことを報告。自殺願望の親に対しては、保健師を中心に家事援助など総合的な支援を実施。児童手当は振り込みとせず、支給するときには子どもの健康を確認。健診に来ない場合には家庭訪問を実施して子どもを視認していることも明らかにしました。母親の負担を軽減するために、ショートステイの受け入れ施設も充実させたことを明らかにしました。
 朝比奈センター長は、新生児全戸訪問で心配な家庭は挙げられるはずなので、行政と民間が力を合わせてフォローする必要があると指摘。自殺願望のある保護者に対して、継続して関わりを持つことで背景に抱えているものを探っていくしかないと指摘しました。
 住田施設長は、全戸訪問でハイリスク家庭も含めて把握されるが、上の子が障害児で行政とのつながりがあったとしても、母親が育児疲れでハガキを出していないといった場合、下の子が行政の支援の手からこぼれるケースもあると問題視しました。

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 次に勝間団長は、パネリストに個別の問いを投げかけました。
泉市長には、子どもの財源を持ってくるにはどうしらよいのかと質問、泉市長は、一般的な世帯でも1%程度は無理してでも子どものために使っていると想定し、市役所でも同様に、2000億円の年間財政のうち20億円を子ども向け予算として最初に確保していることを紹介しました。

 朝比奈センター長へは、制度のはざまからは何が抜け落ちているかと問いかけました。
 朝比奈センター長は、「家庭基盤の弱い子が課題」と指摘。また10歳代後半以降の対応も社会的課題としました。点々と居所を変える世帯は近隣が気づきにくく、行政が追えないために支援の手からこぼれやすいと言及しました。
 これに加えて泉市長からは、明石市では希望者に対し児童扶養手当は毎月届けることとし、家庭に届ける際に、家計簿支援を行う取り組みを始めた旨を説明。一人親家庭が現況届を出す際に、500円の図書券を渡す代わりに2時間の相談を組み込むなど、マンツーマンの相談支援を行っていることを紹介しました。

 住田施設長へは、弱い人が排除されない社会づくりに向けた具体的なヒントを問いました。住田施設長は、障害児を育て大変な思いをしていた時、近くの保育所の一時保育につれていくと保育所ではプール遊び中で、水大好きな長男が服のまま飛び込んでしまったところ、園長はとがめだてせずに「水好きでいいね」と言いながら服を脱がせて受け入れたエピソードを紹介し、禁止事項を挙げずにコミュニケーションをとって受け入れることの重要性を挙げました。

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 これらを受けて吉田局長は、地域社会づくりのためには場所や人が大事だが、実際には進んでいる地域と進んでいない地域があり、行政としてシステムを作ることはできても、アセスメントがないと個別対応は難しい。実践していただく方々には、専門性とスキルと志がないまぜになって求められる。制度をつくる場合には、それぞれの地域で柔軟に活用できる余地を入れながら、全国に広げられるように考えたいと話しました。
 また朝比奈センター長は、基盤の弱い若年層の拠点がほしいと主張。地域の中に子どもたちの育ちを見守る際、成長すると答えが一つでない不協和音が出る。連携が必要だが、「みんなが同じミッションでつながるとがちがちになるので工夫が必要」と指摘しました。
 勝間団長は、当事者や行政の意見を聞くことで現実問題として何か抜け落ちているのか、どう連携するのかが分かったのではないかとまとめました。

◎締めくくりの挨拶

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 樋口恵子団長は、子どもに予算が少なすぎると立ち上がって8周年、先進国の中でも低かったが、少子化のプレッシャーもあり、社会保障に位置付けられ、子ども関係の予算がたちあがり、困難を抱える子どもにも目が向けられるようになったことを振り返りました。子ども・子育て支援新制度がスタートし、「制度が変われば社会は変わる。ほんの一部かもしれないが、社会の仕組みが変わると人々の意識も変わる」と指摘し、今後に期待を寄せました。「8年目はまだ夜明け。人間の命を守る、人間の安全保障は主として厚労省に頑張ってもらいたい。私たちも頑張る。いつの時代でも最も被害にあっているのは子ども。全ての命が愛され認められ、褒められ自信をもって生きていける社会をみなさんと創っていきたい」とまとめました。
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2017年03月22日

2016年度地域まるごとケア・プロジェクト報告会開催しました。

にっぽん子育て応援団 2016年度地域まるごとケア・プロジェクト
地域包括及び子育て世代包括ケア先進自治体調査と地域人材交流研修会開催報告会


 にっぽん子育て応援団会は2月5日、「支え合いのコミュニティがかたちづくる地域まるごとケア〜子ども・子育ても、地域みんなの課題です〜」と題して、2016年度地域まるごとケア・プロジェクトの報告会を、東京・虎ノ門の発明会館ホールで開催しました。全国から135名の方々が参加、保育室は3組3名の利用がありました。
 2016年度の報告会では、基調講演に「地域まるごとケア」の提唱者である東近江市永源寺診療所長の花戸貴司さんをお迎えし、「誰もが地域でその人らしく生きていくことが出来る社会」、地域を目指すことを、参加者全員で確認する会となりました。
 なお、調査報告とともに、報告会での基調講演をはじめとする全文文字起こしを掲載した2016年度報告書を、3月末からお分けする予定です。

【開催挨拶】公益財団法人さわやか福祉財団理事長 清水肇子
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 公益財団法人さわやか福祉財団の清水肇子理事長が挨拶。90年代から今の時代にあった地域の支え合いの仕組みづくりに取り組んできた同財団では、高齢者中心の活動ではあったものの当初から子育ち支援も視野に入れてきた旨を紹介しました。その上で、制度面では少しずつ充実しているがまだまだ政策提言が必要だと訴えるとともに、量の拡充だけではなく、子どもが地域でかかわりあいながら育っていくことのすばらしさを大人が教える必要があると説きました。

【基調講演】「子育て支援は地域づくり 永源寺の地域まるごとケア」
      東近江市永源寺診療所所長 花戸貴司さん

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 まず冒頭、「健康」のとらえ方が時代に対応して変化していることを指摘。以前は病気を治すことが医療の役割で、医療がすべての健康問題を解決すると考えられていましたが、高齢化で病気の種類が変化し、後遺症や麻痺が残るようになると、医学だけで健康が得られる時代ではなくなったのではないかと説き、病気を治す時代から地域で支える時代へと変化していると分析しました。
 そこに気付いたのは花戸さんが診療所に赴任したことがきっかけでした。高度な治療を展開しようと考えながら、3人に1人が高齢者という永源寺で在宅医療に取り組み、病気とは何か、元気とは何かを考えるようになったことが紹介されました。認知症で一人暮らしであったり、がんの術後であったり、人工呼吸器が必要な幼児であったり。入院するよりも家で暮らしたいと望み、地域で笑顔で過ごします。小児がんが見つかった10歳の男児は、抗がん剤治療をしても効果なく、訪問看護の対象となりました。その彼をクラスのみんなと少年野球チームが支え、半年後に皆に見守られて息を引き取ったことを紹介されます。誰かが誰かがを支えているのです。さらに、この少年野球チームが優勝したとき、キャプテンの口から仲間として彼の名前も口に上ったことも取り上げられました。
 花戸先生の受け止めでは、「病気」の反対側には「元気(気持ち)」があり、元気の部分が大きくなるとシーソーの反対側の病気は相対的に小さくなります。その例として挙げられたのは、子宮がんを患う84歳の女性でした。ひ孫がうまれて1年、寝ながら抱っこしているうちに要介護から要支援に変わったのです。誰もが支え手になるということでした。
 花戸先生がすべての患者にしている質問があるそうです。それは、「ごはんがたべられなくなったらどうしますか?」ということ。寝たきりになったらどうしたいか、家にいたいという希望があれば、それはすべてカルテに書き残し、みんなで共有しているそうです。元気を見ることも自分の役割だと学んだそうです。
 よりよい最期を迎えること、よりよい人生を暮らした結果。死や病をタブーにせず、どんな最期を迎えたいかを普段から家族を話し合っておくことが大切だと述べました。そうして経験した在宅医療で出会った看取りの様子が写真絵本になり、東近江市ではすべての図書館や学校などに置き、人生の最終章をどう過ごすか、対話ツールにしているそうです。
 このように花戸先生は、病院の中で病気だけ見ていると分からなかったことを、地域に出て知ったそうです。そこから生まれたのが、チーム永源寺です。医療職だけではなく、寺、福祉作業所、民生委員、住民団体、警察も加わっているそうです。地域の人一人ひとりが地域を支えあう。だから、地域包括ケアというより、地域まるごとケアなのです。地域まるごとケアがめざすものは、30年後、60年後でも安心して生活できる地域づくりです。それを次の世代に伝えなければならいと話されました。

【報告と提言】にっぽん子育て応援団事務局 當間紀子
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 にっぽん子育て応援団の當間紀子が、先進自治体調査と地域人材交流研修会開催について報告しました。プロジェクトは、「地域まるごとケア」の考え方を下敷きにした3か年の計画で、2年目、3年目と経年的状況把握するとともに、勉強会を複数回開催し全国的な普及を目指す予定です。2015年度、2016年度には16自治体にヒアリングを実施。2015年度は永源寺のある滋賀県東近江市を訪問し、行政マンも手弁当でかかわる「魅知普請曼荼羅」が作られていることなどを紹介しました。その上で、子ども・子育てに関する地域の人々の理解には差があることを問題提起したことを報告しました。
 2016年度は、自治体のヒアリングのほかに北見市(ダブルケア)、仙台市(遊び場とお茶会がつなぐ地縁の再生)、名古屋市(0〜100歳のまちづくり)、福岡市(こども食堂)で地域人材交流会を開催しました。ヒアリング自治体では、先進自治体になりえた理由が垣間見えるとして、自治体トップの熱意とそれを支える職員の存在、近隣市との合併を選択せず自分たちのまちは自分たちで守る決断を下した事例などが挙げられました。

【パネルディスカッション】「始まっています 子育て世代も地域まるごとケア」
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 パネルディスカッションでは、2015年度、2016年度にヒアリングで訪問した自治体から先進的な取り組みを発表してもらいました。パネリストは、医療法人社団仁泉会西岡医院理事長の西岡敦子さん(香川県高松市)、豊後高田市子育て・健康推進課長の安田祐一さん、NPO法人地域福祉サポートちた代表理事の岡本一美さん(愛知県知多地域)。厚生労働省社会・援護局長の定塚由美子さんがコメンテイタ―、にっぽん子育て応援団企画委員の奥山千鶴子がコーディネーターを務めました。

◎香川県高松市 医療法人社団仁泉会西岡医院理事長 西岡敦子さん
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 西岡さんは、平成13年3月に病児保育、17年に地域子育て支援センター事業をスタートさせるなど母子支援も行っている珍しい小児科だと自己紹介しました。同センターでは、感染症だけではなく、骨折や退院後の子ども、特別なニーズを持つ子どもなども受け入れています。時には大学病院から経過観察が必要な子どもを託されます。緊張感でいっぱいの母親に接して気持ちを解きほぐすような支援役を務めていることが紹介されました。さらに、中学校や県立高校と連携して、赤ちゃんふれあい授業も実施。系列の多機能化した介護老健施設に、親子が集える場の整備を進めるなど、子育て親子や高齢者の交流事業も計画していることが報告されました。

◎大分県豊後高田市 子育て・健康推進課長 安田祐一さん
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 安田さんは、長年、商工分野を歩んできたところが子育て分野に配属となり、地域を巻き込んだ取り組みを進めている事例を報告しました。子育て支援には市長の思い入れが強く、健康交流センター「花いろ」に、子育て中のお母さん方で結成されたNPO法人「アンジュ・ママン」の運営する地域子育て支援拠点「花っこルーム」を整備。そして、子育て関連の行政窓口を集約し、コーディネーターを配置することで、子育て支援はもちろん、就労意欲のあるお母さん方への就業支援も実施するなどワンストップでサービス提供をされているそうです。また、NPOや商工会議所、商店街、企業と連携し、地域全体で子育てを支える仕組みづくりに取り組んでいることも紹介されました。

◎愛知県知多地域 NPO法人地域福祉サポートちた代表理事 岡本一美さん
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 岡本さんは、1990年からの26年間で36団体が誕生し、子どもの誕生から亡くなるまでを通して住民側が生活に必要な事業を自分たちで作り出してきたという取り組みを報告されました。それが、各地に誕生した多様な共生型居場所です。また、東浦町では他職種連携ボランティアの「チームにじ」が「ならしか運動(〜しかできない、を、〜ならできるに転換)」で各人ができることを分担し支え合う地域づくりを展開していることも紹介されました。「0〜100歳の地域包括ケア」を目指し、「セーフティネットではなく、セーフティシートとする」ことを目標としていると述べられました。

◎国の取り組み 厚生労働省社会・援護局長 定塚由美子さん
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 定塚さんは、厚生労働省を中心に進めている「我が事・丸ごと」地域共生社会推進の取り組みについて説明。一人で複合的な課題を抱えていたり、一つの世帯で複合的で複雑な課題を持っているなど、既存の制度ではどこにもあてはまらないケースに対応する必要があり、地域住民も含めて丸ごとつながって我が事として取り組むために、関係する法律改正の準備を進めていることを報告しました。その理念は、1年前に公表された「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」で、社会福祉法を改正し、地域で県や市町村で地域福祉計画を作る際に、我が事・丸ごとの体制整備などを盛り込むよう求めていることなどを説明。それぞれの市町村の行政やNPO、関係者でそれぞれにあった地域包括ケアの仕組みを作るよう期待を寄せました。

◎飛び入りで 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 吉田学さん
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 参加者の一人、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長の吉田学さんが感想を発表。当初は医療と介護の間で専門職の連携を意図した地域包括ケアの考え方が、多職種協働、他分野協働で地域の課題に取り組む「まるごとケア」に育ってきていると整理し、子育て広場活動と高齢者などの生活支援サービスが着々と歴史を重ねてここで出会ったことの意義を強調しました。地域のニーズから実際に取り組んでいるところにこそ知恵とパワーがあるとして、国としては実践をつないだり、サポートする役割に尽力する意向を示しました。

 奥山は、いろんな分野の人が出会えるチャンスを作るというのが「我が事・丸ごと」の方向性であり、目指していく先は誰もが地域でその人らしく生きていることができる地域社会ではないか、明日から自分たちの活動にやる気とエッセンスをもらったとまとめました。

【閉会挨拶】にっぽん子育て応援団団長 安藤哲也
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 にっぽん子育て応援団の安藤哲也団長が挨拶。3人の子育てを19年間続け、自分自身も地域で育てられたと感じ、その恩返しとして保育園の父母会長、学童クラブの父母会長、公立学校のPTA会長を務めてきたことを報告し、地域には元気なお母さんたちも数多いが、現役のお父さん世代がいないことを指摘しました。その上で、今後やるべきことは、プレーヤーを増やすことだとして、長時間労働を見直し、そこそこ働いてしっかりと家庭、地域のことも両立できる社会の実現を呼びかけました。
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2016年06月21日

にっぽん子育て応援団結成7周年記念フォーラムを開催しました。

にっぽん子育て応援団結成7周年記念フォーラム
これから親になる私たちが考える本当に欲しい子育て支援はこれだ!
──開催報告


 にっぽん子育て応援団は5月22日、東京家政大学で結成7周年記念フォーラム「これから親になる私たちが考える本当に欲しい子育て支援はこれだ!」を開催しました。

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 冒頭、応援団の団長の1人で東京家政大学女性未来研究所長でもある樋口恵子さんが挨拶。結成当時は、子ども・子育て支援のための法律はありませんでしたが、その後、子ども・子育て支援法が誕生し、女性活躍推進法が成立したことなどを振り返りました。また、友人から、「2000年の介護保険誕生のときは、目が覚めるほどの変化があったが、子ども・子育てではそこまでの変化はない」と言われたことを紹介しながら、「目が覚めるような変化ではないが、気付くと変わっている」と指摘。保育園が新設されたり、ベビーカーが嫌がられなくなったり、幼子を一人で連れている若い父親に対する周囲の反応が変化していることを挙げました。「法律ができると意識が変わる。意識が変わると行動が変わる」と言及し、18歳が選挙権を持つようになったことにも触れながら、「これから大人になる人の意見がしっかり反映される社会にならないと子育てしやすい社会にならない」と期待を寄せました。

【第1部】「子ども・子育て 今こんなことが起きている!」
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 「子ども・子育て 今こんなことが起きている!」と題して、大学生や子育て当事者からの現状報告を行いました。ファシリテーターは、米田佐知子さん(子どもの未来サポートオフィス代表)。米田さんは、自身が2001年、横浜市の子育て中の母親の声を集めて政策提言した経験を踏まえ、声を出し出発点になることが大事だと述べました。そして、フォーラムを機に実施したアンケートの結果を紹介。若者世代は現実感がないために多くの声が寄せられなかったものの、現役世代からは地域で障害のあるわが子へのサポート体制を整えたが夫の転勤で引っ越すことになるかもしれない不安や、一人っ子への風当たりの強さ、産前産後ケアの弱さ、自営業での保育所への入りにくさ、生活が厳しいのに保育所に入れない不満などが寄せられたことを報告しました。
 当事者のトップバッターとして、幼稚園教員を目指しているという牧野歩美さん(東京家政大学家政学部児童学科3年生)が、結婚や出産はまだ考えられない遠い話と報告。結婚や出産に結構なお金がかかることに不安が大きく、20歳代のうちに結婚、出産したいと計画しているが、幼稚園教員の給与で生活し、貯金ができるのか気がかりなことを明かしました。母親が小学生4年頃まで専業主婦だったことから、自分も子どもが幼いうちは育てたいとの希望を持っているが、周囲に小さい子どもいない中で子育てに不安があることも挙げました。
 続いて岩崎ひかり(東京家政大学家政学部児童学科3年生)さんが発表しました。母親は結婚を機に専業主婦となった保育士。3歳未満の子どもと接するうち、自身も保育士を目指すようになったと報告しました。ただ、保育士の給与は他の産業より低いといわれていることから、東京で一人暮らしができるのか不安。将来は結婚して3人程度は子どもがほしいが、給料から将来のために貯金するのは難しいのではないかと感じていることを明らかにしました。また、保育園でアルバイトしてみて、2〜3時間でも子どもと本気で接すると大変だと感じたことから、家庭で子育てしている母親も体力的には大変ではないかと推察。結婚後は保育士をいったん辞め、子どもが中学生程度になれば働きたいと考えているものの、相談できる人が周囲にいない中ではイライラしてしまうのではないかと不安を感じていることも明らかにしました。
 ここで、米田さんが、仕事を一旦やめるとの考えについて質問。岩崎さんは、大学の友達の間でも、ずっと働き続けるより、ある程度働いてから一度辞めて家庭に入り、復帰すると考える人が多いことを紹介しました。
 次にNPO法人で保育士として働く28歳の橋口一委さんが、保育士としての働きぶりについて報告しました。通信教育で免許を取得した橋口さんは、この2月に資格を取得したところ。就職のために保育園を見学していたら、保育実習を経験していないと伝えたにもかかわらず、すぐにでも就職してもらいたいと言われ、即面接で担当クラスまで決められたことを紹介しました。資格があればだれでもよい、新人保育士を育てる余裕もないという印象を受け、このような保育園に預けざるを得ない親御さんがかわいそうに思ったと述べました。その上で、子ども一人ひとりに向き合って保育をしたいと資格を取得したことから、今のNPOを選んだことを報告しました。

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 続いて、大田区にある子育て支援の場「ほっとスペース じいちゃんち」の副代表を務め、子育てと介護のダブルケアを経験している岡本知子さんが、3人の子どもを抱えながら介護した経験について述べました。2010年に結婚した当初から、義父母と同居。田舎で祖父母らと暮らした経験もあり、介護を担う覚悟を持っていたが、想像以上に過酷な介護体験であったことを吐露しました。東日本大震災の3日後に舅が亡くなり、姑は元気がなくなり、里帰り出産をしている間に、姑が転倒を繰り返すまでに。姑の面倒をみていると、わが子がかまってもらえないとかんしゃくを起こすようになったエピソードを紹介しました。
 こうしたストレスを発散する場を探したほうが良いとケアマネジャーからアドバイスを受けたものの、児童館のひろばでは核家族家庭ばかりで話が合わず、介護を理由に週2日の定期利用保育を使えるようになったことで一息つけたと振り返りました。ただ、翌年には利用できないなど綱渡り。ようやく小規模保育に入園できることとなり、子どもと向き合う時間を持つことができた。一方、介護者の会に行っても、集まる人は年上の40〜70歳代で、ダブルケアの辛さを理解してもらえないと明かし、周囲の手助けがない日本は冷たい社会だと感じたと述べました。
 岡本さんは、「ほっとスペース じいちゃんち」を子どもが2か月のころから利用。ただ、担当のケアマネージャーはこのような場を知らなかったと指摘し、「情報弱者が追いつめられる」と言及しました。
 最後に20歳代の結婚適齢期の男性として辻翔太さんが登場。子ども好きで結婚願望が強いながらも、自分たちの今後について厳しい現実があると分析し、子どもがいない現状で何ができるのかと考えていることを打ち明けました。現状の問題点として、理系の大学で古い体質に苦しむ女性研究者の姿について紹介。時間制限のない男性研究者が夜中まで研究する一方で、結婚・子育て中の女性研究者はそれだけの時間を費やすことができないため差が生じ、女性研究者が活躍できにくいと訴えました。こうした問題意識から、会社で、ワーク・ライフ・バランスの重要性について労務担当に説明するものの、なかなか聞いてもらえない現状であることを吐露。子ども・子育てに注目が集まる中、個人レベルで何ができるか探りたいと発言しました。

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 これから親になる若者世代の発言を受けて米田さんは、出産・育児がブラックボックスになって、若い人が関心を持ちにくい現状にあるのではないかと分析。出産後は仕事を辞めて、子育てが一段落したら復職したいとの希望が強いと総括しました。若者世代の意見を踏まえてフロアでは気づきを話し合ってもらいました。

【第2部】「子ども・子育て・ライフプラン緊急対策会議」

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 現状報告を受け、「子ども・子育て・ライフプラン緊急対策会議」と称して、ヘルスケア・プロバイダーや産前産後ケア担当者、社会企業家、国の子育て支援担当者などが対策を協議しました。
 まず、医療専門職であり、東京家政大学子ども学部長の岩田力さんが、子ども学部、子ども支援学科について説明。50年以上にわたり保育者を養成してきた同大学が、現在のこども分野で不十分な健康保育や特別支援教育に焦点を置いて人材養成を行おうとしていることを紹介しました。
 次に、大学生が共働き家庭に訪問して仕事と子育てを学ぶ「ワーク・ライフ・インターン」をあっせんしているスリール株式会社代表取締役の堀江敦子さんは、起業した動機について説明しました。中学生の時からベビーシッターをするなど子どもを保育することに抵抗がなかった堀江さん。就職後、ワーキングマザーでも長時間労働せざるを得ない職場に疑問を持つものの、社内で当事者として改善に乗り出す同志が得られなかったことを振り返りました。当事者意識が持てるよう若い人をいか巻き込むかを考えた結果、自分と同じ経験をすればよいのではないかと起業したことを紹介。インターンシップを経験した学生は、仕事だけではなく生活についても考えるようになり、これからの社会をどうするかという視野が広がっていることをメリットに挙げました。
 続いて妊娠期から育児期まで切れ目なく支える子育て世代包括ケアの実践、和光市版ネウボラで注目を浴びている和光市南子育て世代包括支援センターの榊原久美子さんが取り組みを紹介しました。まず、子育ては楽しいが辛いという現状は自身がだった20数年前から変わっていないと指摘。子どもを安心して産める社会であるか、子育てしやすい社会であるか、子どもの権利が守られる社会になっているかが課題ではないかと問題提起し、対処療法的な施策に終始するのではなく、母親と子どもの関係性の発達支援が重要だと訴えました。
 人口8万人の和光市では、毎年、1000冊の母子手帳を交付。窓口の対応は母子保健ケアマネージャーですが、高齢者も含めて支援している現状を紹介しました。ケアマネは、母親を地域で孤立させないよう、手帳を交付するときに様々な地域サービスについて情報提供し、悩むことはないと言葉かけしていると紹介しました。また、地域子育て支援拠点では少し先輩のローモデルを示すほか、両親学級ではリアルうんちによるおむつ替え体験など実践的なメニューを用意していることを紹介。子育てに負担感を感じる母親が多いだけに、一時預かりが重要であることを訴えました。
 次に、「生みどきが、働きどきというパラドックスをどう乗り切る?」という観点から、和光版ネウボラ誕生にも関わってきた東邦大学看護学部教授の福島富士子さんが発表。先進国のうち母親にやさしい国ランキングで日本は32位、労働参加率では65位以下というデータを挙げて問題視し、「日本が母親にやさしい国になるためには、ワーク・ライフ・バランスや妊娠期からの切れ目ない支援が重要だ」と訴えました。また、6歳未満児のいる家庭での夫の家事・育児負担時間の国際比較データも紹介し、海外は家事支援で男性が支えているのに対して日本では家事時間が極端に少ないことにも言及しました。さらに、「女性の卵子の数は生まれ出た瞬間から減ることは伝わっていない」と指摘し、35歳で不妊治療しても出産にたどりつくのは16%程度であるとのデータを紹介して、子どもを産むには時期があることを伝えるべきだと訴えました。出産適齢期と働く時期が重なるだけに、社内体制などを考慮し遠慮することなく「産んだもん勝ち」だと指摘。ネウボラの活動を通じて肝っ玉母さんをつくりたいと述べました。
 最後に内閣府子ども・子育て本部参事官の竹林経治さんが、子ども・子育て支援事業について説明。待機児童対策ではなく、総合的な子育て支援の仕組みとしてスタートしていること、0〜2歳の在宅子育て世帯への支援を強化していること、市町村の子ども・子育て支援事業計画の作成にあたっては、現場の事業者や当事者の意見を組み込んでいることなどを紹介しました。
 コーディネーターを務めたNPO法人ファザーリング・ジャパン代表理事でにっぽん子育て応援団団長の安藤哲也さんは、子育て世代の意識改革の重要性を指摘。自身も3人を子育てしている時期に仕事と子育ての両立が難しくなり、自分の生き方を変えようとファザーリング・ジャパンを設立したことなどを紹介しました。その上で、従来の子育てでは、父親にとって我が家はホームでなくアウェイではないかと言及。父親が育児にかかわることで、母親の育児ストレスが軽減され、家計収入も増えるといったメリットがあることを挙げました。ただ、個人の努力には限界があるだけに、「イクボス」と称して、企業の管理職の意識を変える活動をしていることにも触れました。
 現代の若者の状況に関して、堀江さんは、大学生の6割が専業主婦志向である点について、「社会が変わっているのに意識が変わっていないのではないか」と問題視、リアルな状況に接する機会が少なく自分の頭だけで考える傾向が強いことから、インターンを経験して自分の育った家庭以外を知ることが大事と述べました。安藤さんも、「専業主婦志向は男性がイクメンになるチャンスを減らす」とも付け加えました。
 また、榊原さんは、和光市では子育て支援分野と高齢者分野それぞれにケアマネージャーを配置していることを紹介。家族全員がウィンウィンの関係をもてるように考えていると述べました。その上で、今後は地域包括ケアシステムが必要ではないかと訴えました。

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 子育てしやすい社会とするための様々な取り組みについての報告をどう受け止めたか、若者世代が再び登場して発表。牧野さんは「働きたいし、子どももほしい。なんでもやったもん勝ちということであれば、助けてといえる自分になることがまずは第一歩ではないか」と述べました。また、岩崎さんは、女性の経済力も重要という点に気づいたと発言。橋本さんからは、社会から若い世代に対する具体的な提案がほしいと注文が出ました。岡本さんは、「子どもの将来を考えたら悲観するが、当事者が言わないと何に困っているか分からない」と声をあげる必要性を訴えました。辻さんは、育休をとるために今からしっかりと仕事のコントロールをしたいと話しました。
 若者らの感想を受けて安藤さんは、子育てをしてみて気づくことが多いことに言及。「見えない価値観の壁がある。多様な人の言葉に耳を傾けることが大事だ」と指摘し、当事者の声を政党や政府に届けていく旨を訴えました。

 2016年6月に施行された改正公職選挙法により、選挙権が18歳以上に引き下げられました。より若い人たちに、ぜひ一票を投じてもらいたいと考え、暮らしと国政とのつながりを実感することから、興味や関心が深まるのではないかと企画した今回のフォーラム。不安そうに語る若い人たちの表情の変化から、参加した100名のみなさんからは、大変興味深く、参考になったとの声が寄せられました。
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2016年02月07日

2015年度地域まるごと・プロジェクト 地域包括及び子育て世代包括ケア先進自治体調査報告会を開催しました。

 にっぽん子育て応援団は2月7日、公益財団法人さわやか福祉財団の助成を受けて取り組んでいる「地域包括及び子育て世代包括ケア先進自治体調査」の報告会を開きました。子育て支援関係者はもとより、行政担当者、地方議会議員、地域福祉に関心の高い市民活動団体関係者など、幅広い分野の205名の方々がご参加くださいました。参加者アンケートでは、行政、各種機関、企業、市民活動団体、市民など、地域ぐるみで家族をまるごと支えていく「地域まるごとケア」の取り組みを通した地域子ども・子育て支援の実現と可能性に、強い共感とともに、「地域まるごとケア」の考え方に多くの賛同が寄せられました。

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 まず、報告会に出席できなかった堀田力・さわやか福祉財団会長がビデオによりメッセージ。にっぽん子育て応援団の団長でもある堀田会長は、今回の報告会の趣旨について、日本各地で地域が一緒になり、子どもを含めた家族をまるごとを支えていく先進的な取組を紹介し、日本中にその仕組みを広めるための会であると説明。高齢者、障がい者の分野では地域でささえる仕組みを作っていこうという動きになっているだけに、子ども・子育て分なでもその流れを広め、報告会をきっかけに人々の支えあいの中で子どもが育ち、みんなが幸せに暮らす社会につながることへ期待を述べました。

 続いて、「地域まるごとみんなで支え合う コミュニティ構想」と題して樋口恵子団長が基調講演。休憩をはさんで、地域まるごとケア・プロジェクトの事務局でもあるにっぽん子育て応援団事務局から2015年度の調査報告を行なった後に、今年度ヒアリング調査を行なった8自治体の内北海道北見市、三重県名張市、島根県雲南市から、先進的な取り組みを行なう3名のパネリストと厚生労働省の担当者をコメンテーターにお迎えして、パネルディスカッション「子ども・子育ての課題も、地域の課題です」を行ない、閉会挨拶の後、終了しました。総合司会は、NPO法人せたがや子育てネット代表理事でにっぽん子育て応援団事務局の松田妙子が務めました。

【基調講演】「地域まるごとみんなで支え合う コミュニティ構想」
             にっぽん子育て応援団団長 樋口恵子


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 かつては人生50年と言われていたが、戦後の高度経済成時代に人生60年から65年となり、2012年政府が閣議決定した高齢社会政策大綱で「人生65年社会から90年社会へ」とのサブタイトルがつけられるほど。樋口団長はさらに、「人生100年社会の到来」と言ってよいのではないかと日本の人口構造の大変化という課題を強調されました。80歳以上が増える一方で、少子化が進み、今50代の男性の5人に1人、女性の9人に1人が独身であり、結婚を引きのばす社会に日本がなったことには、先輩世代が「結婚ってこんなに楽しいのよ」と家庭生活のすばらしさを見せてこなかったのではないかと反省。これは、第二次世界大戦で15年間もの長きにわたって戦時下体制で過ごし、男は戦士となり女は銃後の妻となるという役割分担をその後も続けてきたためではないかと分析されました。そのため地域に若い男性の影がなくなり、地域で老若男女が子育てをする風景も失われてしまったと。
 しかしながら樋口団長は、少子高齢化という大変な事態ではあるものの「ピンチはチャンス」と提起。日本は世界一の長寿国で、105歳の枕元に2歳の玄孫がいるなど一家に四世代五世代、一世紀の人間が共に生きるような多様性がある国はないと指摘されました。これは平和で豊かな社会でなければあり得ない風景で、生の肉声で戦争の痛手や平和の尊さを孫・玄孫世代に伝えることができるのではないかと祖父母世代の役割を強調されました。
 さらに、祖父母世代が経済的な豊かさを味わい、今日まで元気でいられるのは日本の社会保障の恩恵もあるとして、「食い逃げするのは高齢者の恥。当事者として高齢者の人生の究極の幸せためにも奮闘するが、と同時に次の世代が喜んで生まれてきてくれるような社会を冥途の土産として作っていきたい」と主張。童話「青い鳥」の一場面を紹介しながら、未来の国の子どもたちが生まれてくることに期待を持てるような社会をみなで作ろうと呼びかけました。
 その上で、地域には高齢者世代にもまだまだ活躍できる場があることを指摘しました。クリスチャンの賀川豊彦が、「子どもには「食べる権利」「眠る権利」「遊ぶ権利」「夫婦喧嘩をやめてもらう権利」「叱られる権利」がある」と語っていることを紹介。そこに「褒められる権利」も加えて、子どもはたくさんの人に見守られ、叱られつつ善悪を教えられるとともに、その子どもなりの存在を認められることが必要であり、それは地域の大人であればだれでもできる役割だと説きました。そうした地域の取組の事例として今回の報告が参考になるはずで、各地でこうした気運を盛り上げるよう呼びかけました。

【報告と提言】にっぽん子育て応援団事務局 當間紀子

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 にっぽん子育て応援団事務局で、地域まるごとケア・プロジェクトにかかわる當間紀子が、先進自治体調査について報告するとともに、調査に基づいて応援団からの問題提起を行ないました。
 「にっぽんをもっと子育てしやすい社会に」と訴えてきたにっぽん子育て応援団が、高齢者支援・介護保険行政にヒアリングを行ったのは、子ども・子育て支援も高齢者支援もともに地域の課題と認識した旨を報告。介護保険制度での地域包括ケアを参考に、子ども・子育て分野にこそ地域包括支援センターがほしいとの思いから調査にとりくむことになった経過を述べました。その頃、滋賀県東近江市で永源寺診療所長、花戸貴司さんと出会い、永源寺の地域の方々を巻き込み自宅で看取られる地域づくり「地域まるごとケア」をプロジェクトの名前にも借りることができた旨が紹介されました。
 初年度は、北海道北見市、岩手県大船渡市、東京都世田谷区、三重県名張市、滋賀県東近江市、島根県雲南市、香川県高松市、大分県臼杵市の8自治体を調査しました。中間支援NPOが核となって高齢者・介護、障がい者支援、ひとり親住宅、一時預かりを組み合わせた多機能強制型施設を展開している北見市。社会福祉協議会が子育て支援事業、利用者支援事業(基本型)とともに高齢者支援も担う大船渡市。地域保健福祉医療総合計画の中で地域包括ケアセンターをきめ細やかに配置し、高齢・介護とともに子育てや障害なども丸ごと支える体制構築を進めている世田谷区。高齢者対策のために充実させてきた地域支援体制を子ども・子育てにも広げ、市民総働″のネウボラ体制を構築してきた名張市。医療・福祉の先駆的な取組が市民レベルで進んでおり、地域のフラットな関係を“魅知普請曼荼羅”という形でまとめている東近江市。地域振興協議会が高齢者の困りごとや子ども・子育て支援、地域振興を地域の力で解決している雲南市。病児保育と子育て支援拠点を併設する小児科医院、高齢者のデイケアと子育て支援拠点、産褥入院を併設する助産院などの多機能共生型支援という先進的な取り組みが市民レベルで進んでいる高松市。ネウボラの構築や介護予防・生活支援事業に向けたまちづくり推進本部を庁内に設け、地域医療・介護情報連携システム「うすき石仏ネット」を構築した臼杵市と、それぞれの特徴が紹介されました。
 調査を終え、課題として挙がったのは、「地域福祉や地域包括ケアの視点に子ども・子育て支援が入っていない」ということだったと指摘されました。そこから、「赤ちゃんから高齢者まで生涯現役、全員参加の地域づくり」などを提言。先駆的に地域包括ケアに取り組む自治体でも、子ども・子育てに関する地域の理解はまだ不十分だと感じられたことあるとして、初年度の問題提起には「子ども・子育て家庭も同じ地域の一員であることを伝えたい」と訴えました。

【パネルディスカッション】「子ども・子育ての課題も、地域の課題です」

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 ヒアリング調査をした8自治体のうち、北海道北見市、三重県名張市、島根県雲南市の取り組みについて発表していただきました。コーディネーターはにっぽん子育て応援団企画委員の奥山千鶴子が務めました。


◎島根県雲南市海潮地区振興会会長 加本恂二さん

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 雲南市は、昨年2月に誕生した「小規模多機能自治推進フォーラム会議」の事務局。雲南市海潮地区振興会会長でもあり、同市子ども・子育て会議の委員も務めるの加本恂二さんが、「地域の子育ては地域でするという合意形成」と題して、その実践について報告されました。
 海潮地区は人口約1900人で高齢者率38%の地域。職場を松江市に持つ兼業農家が多いという地域柄です。海潮温泉やホタル、須賀神社、神楽などの観光資源が豊富なので、こうした資源を生かし、住みやすい地域づくりに長年活動して来られました。それが、公民館を中心とした地域自主組織です。その特徴の一つは、地区マネジャーという仕掛け人の配置。加本さんも地区マネージャーとして、海潮地区の地域おこしに取り組んでこられました。
 地域自主組織のモットーは、「地域の課題は自分たちで汗をかいて自分たちで取り組む」ということ。そのための財源も自分たちで確保。地区の500世帯から毎年1戸1000円ずつ拠出してもらった50万円を地域の課題解決に使ってきたそうです。「うしおっ子ランド」の取り組みもその一つの活動です。老朽化した幼稚園を建て直して幼保一体化施設とするべく国に要望を出したのですが、縦割り行政で最終的には実現しませんでした。そこで建て替える幼稚園の1部屋に子ども相談室を設けてもらい、これを活用して地区で子育て支援を行なうことにしました。午後2時で終わる幼稚園の降園後、夕方まで、あるいは夏休みなどの長期休業期間中は1日、保育所と同様に地域で一時預かりを行います。保育士の人件費に地区の拠出金を充てました。10年間この活動が続きましたが、今春、正式に認定こども園となったということです。
 また、4年前には、地区に放課後児童クラブがなかったため、農協跡地を借りて低学年児童を受け入れるようになったことも紹介されました。さらに、「うしおっこランド」の次には3歳未満を受け入れる保育が実施できないかと検討、若い母親たちが市長に陳情に行く際には振興会からも同行し、低年齢保育施設の設置要望は「地域の総意」である姿勢を示したそうです。このように若い人が定住し、安心して子育てができる「子育てのまち。雲南」、「子育てのまち。海潮」ということを全国に発信したいと主張されました。

 コーディネーターの奥山が、加本さんが強調されなかった小規模多機能自治について言及。住民で課題を出し合い、「次は放課後児童クラブだ」「乳幼児の保育だ」と、自分たちで協議し、財源も稼ぎ出して配分していく姿を特徴として整理しました。

◎三重県名張市健康福祉部健康支援室保健師 上田紀子さん

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 同市で母子保健業務を担当する保健師、上田紀子さんが、名張版ネウボラの取組について説明されました。名張市は人口8万人弱、年間出生数600という自治体。平成25年から子育て支援に力を入れ始め、妊娠期からの切れ目ない支援を「名張版ネウボラ」と名付け、「生み育てやすいまち・なばり」を実現する仕組みづくりを進めているということです。
 ただ、ネウボラと称するものの、フィンランドの仕組みとは異なり、地域の人材を活用している点を特徴に挙げられました。名張市は、大阪のベッドタウンとして発展し、他市の倍近いスピードで高齢化が進展。自治体が財政的に厳しいことは住民も自覚しており、地域の人々と課題を共有しながら、健康づくり、介護予防、子育て支援に取り組んでいるそうです。その点について上田さんは、「名張の一番の自慢は、主体的なまちづくり」と強調されました。住民の活動拠点である公民館や市民センターを指定管理で運営してもらい、そこに福祉の窓口として「まちの保健室」を開設しているそうです。当初、高齢者の相談窓口でしたが、子ども・子育て家庭にも活用し、ネウボラの中に位置付けられました。名張版ネウボラでは、健やかな育児を支援しつつ、その支援を地域のシニア世代が担うことで、シニア世代の健康づくりや生きがい、介護予防につながっていることが特徴だと説明されました。全体の支援の仕組みを図にして高齢者支援に携わる方とも情報共有するなど、課題や統計データも地域と共有しているそうです。そのため「地域包括ケアは子育ても同じだね」と気付いていただけたそうです。地域が積極的に動く中、行政の役割としては、地域で課題と認識しつつも対応できないことについて何が困難な点なのかをともに考えていくことだと主張。新年度からはネウボラも含んだ総合的な支援システムをスタートさせる予定であることを明らかにされました。
 核となる「まちの保健室」は、地域包括支援センターのブランチ(支店)という位置づけで、さらに子育て世代包括支援センターのサテライトという役割も担っている重要な拠点。子ども分野の支援の専門職が少ない中、高齢者の相談員を行っていた介護福祉士、社会福祉士、看護師らが研修を受けたチャイルドパートナーとして「まちの保健室」で母親らに対応していることも付け加えられました。
 また、地域の力について上田さんは、地域づくりの中心的な方々に地域の子育て家庭の問題を知ってもらうことが行政の役割ではないかと、ワールドカフェ方式で課題を出し合う会議などを開催したことも紹介。住民から行政への問題提起が行なわれたり、行政との認識の共有が図られたようです。たくさんの会議を通して、地域の方々が顔の見える関係となっており、こうした住民の活動を背景に、「地域福祉総合ケアシステム」が機能するよう住民の力をサポートしていきたいと話されました。

◎NPO法人北見NPOサポートセンター理事長 谷井貞夫さん

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 同市における多機能共生型コーディネートについて、NPO法人北見NPOサポートセンターの谷井貞夫さんが説明されました。この事業は、厚生労働省の地域介護福祉空間交付金事業の市町村提案型事業というもの。平成20年ごろから始まったこの補助事業を使えないかと考えたのは、人口減少に危機感を抱き役所に相談にいったところ、役所では人口増加を前提とした事業計画しか作れないという現状を知ったからだと説明されました。そこから「民間でできることは先行してやっていこう」と話し合い、14〜15年前から高齢化社会や人口減少社会に備えた活動を展開する中で、厚労省の交付金を活用することになったそうです。
 この補助事業は、地域で高齢者支援、障がい者支援、子育て支援などを組み合わせた共生型の事業を市町村が提案した厚労省が審査をするもの。それぞれ専門に活動しているNPO法人を中核にして様々な事業を組み合わせた提案が採用され、北見市では8か所の共生型施設が誕生したことが紹介されました。
 共生型施設の特徴は、建物の建築費は公的な補助を使うものの、運営費については行政的な支援がないこと。介護保険事業や障がい者支援事業、自主事業を組み合わせて運営されているそうです。また、できるだけ自主事業だけで運営できるよう、様々に工夫。北海道庁や市町村の各分野、大学、地元企業、町内会ともネットワークを組んでいることが紹介されました。「これからの企業はコミュニティ・ビジネスの視点がないと生き残りは大変だ」と提案したところ、地元中小企業団体の経営委員長を任されているそうです。
 子育て分野の活動としては、夕陽ヶ丘オレンジスタジオという団体を紹介。1時間500円で一時託児を受け入れる一方、母親向けに運動やパソコン、就労支援セミナーなどを開催しています。高齢者と子どもとの接点を増やそうと、食育講座のアシスタントを高齢者に依頼しているそうです。また、高齢者施設を運営するNPO法人が運営する「地域共生ホームかえで」という共生型施設には、近隣の小中学生が放課後集う共生ルームに駄菓子屋が併設されています。活動自体は赤字ですが、地域にとって必要な場であり、高齢者が子どもたちと日常的に触れ合えることで住み心地がよくなると運営されているそうです。
 今後の課題として、高齢者も多様化してきているため、それぞれに対応したサービスを提供するにはコストと負担の観点から利用者負担で提供できる範囲に限界が生じてしまう点を挙げられました。また、生産年齢人口が減少している中で、ボランティアの確保も難しいそうです。
 人口密度の低い広域エリアで活動しているので、何事も非効率。だからこそ、スクールバスに高齢者だけではなく用事のある人はだれでも乗車を認めるなどの発想が必要なことにも言及されました。
 その上で谷井さんは、危機感や意欲を持つ人はどのまちにもいるはずと指摘。そうした人たちの活躍の場をつくるよう、行政は自分たちで全部やるのではなく、地域にあるすべての資源を活用する姿勢が求められるのではないかと問題提起されました。

◎3市の取組についての講評など
  厚生労働省労健局介護保険計画課長 竹林悟史さん

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 厚生労働省・介護保険計画課長で、その前職では子ども・子育て分野に携わっていた竹林悟史さんが、国の取り組みについて説明。住み慣れた地域で最期まで自分らしく暮らしていけるよう、2025年には地域包括ケアシステムを構築していこうと進めていることを紹介されました。
 また、かつて家族や地域社会が担ってきた福祉ニーズを、高齢者は高齢者福祉、障がい者は障がい者福祉、子育て家庭は児童家庭福祉といったように分野に応じて振り分け、高齢者特別養護施設のように特化したサービスを提供してきたのがこれまでの福祉制度であったと整理。現在は、地域でその人らしく、支援が必要になっても支えあって生活できるように変わりつつあり、子育ての世界でも幼稚園と保育園だけではなく子育てひろばをはじめとした地域で支える仕組みが求められていると説明しました。高齢者も障がい者も子ども・子育て家庭にとっても地域は一つで、対象者別の制度をどのように横につなぐかが国の課題にとなっていると説きました。
 その上で、介護分野での新しい考えを植木鉢に例えて紹介。住まいを植木鉢、生活支援サービスを土に見立て、そこが充実した上で医療・介護の葉が開くといったイメージを描いています。そのためにも地域社会において、自助・互助・共助・公助をバランスよく作っていく必要があると指摘。社会保障制度の大半は共助だが、地域で支えあう互助の部分も大事になっていると言及されました。
 さらに、3市の取り組みが対象者別の福祉ではなく、地域の方々が様々な役割を持ち、一つのコミュニティーが作られている点を重要だと指摘しました。それぞれの自治体が国の制度をうまく活用している点も評価。国がそれを邪魔しないよう支援することが大事であり、その点を今後考えたいと結びました。

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 一方、コーディネーターの奥山は、3市の取り組みについて、今、目の前に困っている子育て家庭をどうすればよいか、高齢者を抱える家庭にどう支援できるかを考える人がいて活動してきた成果ではないかと整理。そのための仕組みを行政とともに考えて地域に合うように活用されたと評価しました。その上で、「行政がやってくれない」「制度がない」ということではなく、どうすれば自分たちでうまくできるのかと考え行動できる人がいると地域はずいぶん変わるのではないかと提起。地域まるごとケア・プロジェクトの今後として、「全国でもっと多様な取組を行っている地域を発掘し、それを横展開できる資料を用意したい」と抱負を述べました。

【閉会挨拶】 にっぽん子育て応援団企画委員 柳澤正義

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 にっぽん子育て応援団企画委員の柳澤正義が挨拶。3市のユニークで特徴的な取組を参考に、各地域でも子ども・子育て支援と高齢者支援を一体化していく取組を進めてもらいたいと期待を寄せました。

☆当日配布した資料に掲載できなかった厚生労働省労健局介護保険計画課長の竹林悟史さんのパワーポイント資料を、竹林さんのご厚意でアップしました。
こちらからご覧ください。
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2015年08月20日

2015年度企業・団体サポーター交流会を開催

 にっぽん子育て応援団は7月2日、東京・日比谷の第一生命保険株式会社日比谷本社新館6階ABC会議室において、「企業・団体サポーター交流会」を開きました。にっぽん子育て応援団にご支援いただいているサポーター企業、団体の方々との交流をはかるべく、毎年開催しているものです。今回は、「ダイバーシティ・マネジメント」をテーマに基調講演やパネルディスカッションを行いました。

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◎開会によせて
 会場を提供くださった第一生命保険株式会社執行役員、山本辰三郎さんが挨拶。女性社員が多いことから男女ともに働きやすい制度を整備しているほか、ご自身の経験を踏まえ、仲間がお互いを尊重する風土が大切であることをお話されました。

◎国の制度の説明

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 続いて、厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課の蒔苗浩司課長が、最新の両立支援の取り組みについて説明しました
男性の育児休業取得率は、直近の平成26年度で2.30%と右肩上がりとなっていますが、2020年には13%にするという政府目標には及ばないとして、啓発に一層力を入れる必要があると指摘。男性の家事・育児の参加率が高い方が女性の継続就業につながりやすく第2子以降の出生率にも影響を与えていること、昨年4月の雇用保険法の改正で育児休業給付の給付率が引き上げられ、実質的には手取りの8割程度が保障されるようになり、男性の育児休業取得者が増加していることなどが紹介されました。
 また、平成22年からイクメンプロジェクトをスタートさせましたが、上司の理解がないと育児休業等も取得できないと昨年度からはイクボスプロジェクトを推進。実践を表彰し、好事例を情報発信するなどして、地方にも広げていこうとしていることが紹介されました。
 さらに、次世代育成支援対策推進法を改正し、一段と高い取り組みを行っている企業に対しては「プラチナくるみん」を使えるようにし、授乳コーナーなどの資産に対する割増償却制度も3年間の期間延長されていること、くるみんマークの認知度が低いため自治体のゆるキャラとコラボしていることなども取り上げられました。
 最後に、現在行われている育児・介護休業法のさらなる見直しでは、介護休業を分割取得など、家族の介護を抱える人に利用しやすい制度に向けた検討を行っていることにも触れました。

◎基調講演

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 にっぽん子育て応援団の共同団長である安藤哲也・ファザーリングジャパン代表理事が、「ダイバーシティ・マネジメントができる上司が社会を変える」と題して、イクボスの重要性について説きました。
 まず、自分自身が10年間、子どもを保育所に送り迎えする中で育児と仕事の両立の難しさを実感、働き方を見直したことを紹介しました。そうした経験があるからこそ、部下にも両立する上でのノウハウを伝授するなどマネジメントができたことを強調。時間に制約がある社員をいかに活用するかなど、人材活用のマネジメントを日本の管理職は基本的に学んできていない点に問題があることが指摘されました。
 そこから、男性が働き方を見直し、積極的に育児に参加するというイクメンが増えると社会が活性化し、個人のメンタルヘルスも改善されるので会社の生産性が上がるとともに国全体としては女性の就業率が上がると訴えました。男性の長時間労働や休暇が取得しにくいという構造的な日本の働き方の問題は、一方で過労死など不健康な働き方を生み出し、男性が家事や育児参加できない事態をもたらしていることにも言及。男性が家事や育児に参加することは、女性のキャリアアップにつながり世帯としての収入が増加するだけではなく、子どもの精神的な成長にもメリットがあり、地域の友人も増えるほか、仕事にも有効な能力が身につくことになるのではないかと説きました。
 こうした働き方の見直しのためには、業務を見える化するなど、柔軟性のある組織となることが重要だと指摘。これからは子育て中の女性だけではなく、高齢者や外国人、がん治療中の人など制約のある社員が増えると考える必要があると提起し、それだけに従来型の働き方の認識を改める必要があると訴えました。また、周囲に知られないように介護に時間を割く社員も少なくないとして、そうしたプライベートも打ち明けられるような信頼感を築くことが重要であり、個々人のモチベーションが下がらない工夫が大事なことを訴えました。イクボスはプライベートも楽しむ人であることを強調。イクボスを増やすためには繰り返しの研修だけではなく、管理職の評価を変えることも必要だと説きました。

◎パネルディスカッション
 「ダイバーシティ・マネジメントの現場から」と題して、第一生命保険株式会社の取り組みやイクメン・パパの実践談といった具体例を素材に今後の課題などについて意見交換しました。

 第一生命保険株式会社人事部の鮎沢慎一次長が、同社のワークライフバランスの取り組みについて説明。両立支援施策の充実として、産前産後休暇の有給化や短時間勤務/残業免除、育児時間の取得など子どもの成長に伴った休暇などを整備する一方、ワークスタイルの変革として、総労働時間の縮減とともに、育児休業の取得の勧奨、子どもが主役デー(職場参観日)を実施して育児参画意識の向上を図るなどしてきたことを報告しました。今後の課題としては、男性の育休取得者をさらに増やすことを挙げました。

 また、同社株式部の安部健一郎次長は、就学前の子ども2人を抱える共働き家庭の生活ぶりについて報告しました。午前4時半ごろに起床し、幼稚園児の長女のために週の半分はお弁当作り。登園後、7時半ごろ出勤し、19時頃退社。洗濯や掃除なども平等に分担していることを紹介しました。2人目妊娠時の奥さんのつわりがひどかったために家事を担当するようになり、そこから家事に対する意識・スキルもアップ。奥さんに仕事を理解してもらい、前倒しで仕事を進めるよう気を付けていると言及しました。難しい点として、子どもの病気でも預けざるを得ない時など子どもや周囲に「申し訳なく思う」ことや、家事・育児・仕事の間でバランスを取ることが難しく、すべてに満足を得ることができない点を挙げました。その上で、女性が活躍の場を広げることは不可欠であり、いろいろな選択肢があることが豊かで楽しい社会になるのではないかと話しました。

 にっぽん子育て応援団企画委員の岩田喜美枝・21世紀職業財団会長は、安部さんの発言がかつてのワーキングマザーと同じ悩みだと指摘。会社に対しては時間当たりの生産性で貢献しているので申し訳なく思う必要はなく、子どもにも愛情は注がれているのではないかとアドバイスしました。

 にっぽん子育て応援団団長の勝間和代さんは、残業の縮減について、労働生産性を上げることに尽きると断言。アメリカでは長時間労働をさせた管理職が辞めさせられるなど、ダイバーシティを重視しないと会社がつぶれるという危機感があることを挙げました。それに対して、これまでの日本ではそこまでしなくても会社はつぶれないという意識があったと指摘し、第一生命保険が長時間労働を変えようとしていると評価。労働時間の削減を進めるのがイクメンだと呼びかけました。

 同じく企画委員で10年前に経済産業省で初めて育児休業を取得した山田正人さんは、入省して15年後に育休を取得しましたが、当時は無制限に働く環境だったと振り返りました。育児休業期間中は、物事が同時多発的に対応せざるを得ないが、仕事は予定調和の世界なので効率的な働き方ができるようになると説きました。最近では、育児休業明けなど時間制約のある部下が送られてくるようになったため、どうやってアウトプットを高めるかを考えると個々人の内発的動機に火をつけるしかないことに気付いたと報告しました。

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 勝間さんは、こうしたマネジメントに対してスキル投資をするという意識がない点を問題に挙げ、やる気の引き出し方など既に知られている手法を体系的に教えることで生産性が上がる可能性がある点を指摘しました。

 岩田さんも、今後は女性も仕事を継続してキャリアアップすることが当たり前になるので、家事などを夫婦でシェアする意識を持つことが必要だと強調。いつまでも会社にいられるわけではなく、トータルの人生でどれだけ幸せになるかを考えるべきではないかと問題提起し、男性の幸せのためにも働き方の常識を変える必要があると説きました。

 安藤さんは、パネリストらの発言を受け、今、世の中を変えるチャンスであり、変わらないと幸せにならない、子どもたちが未来に希望を持てる社会を一緒に作ることがすべての大人の責任ではないかと締めくくりました。
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2014年12月09日

子ども・子育て応援フォーラム 「いま、子ども・子育て支援から この国の未来を考える」を開催しました。

 にっぽん子育て応援団は11月28日(金)、子ども・子育て応援フォーラム「いま、子ども・子育て支援から この国の未来を考える」を、東京・永田町の星陵会館ホールで開催しました。
第1部では先進自治体から事業計画策定状況について報告してもらい、第2部では自民・公明・民主党の3党の国会議員から子ども分野の財源確保策について訊きました。

開会あいさつ
 冒頭、応援団企画委員の奥山千鶴子(子育てひろば全国連絡協議会理事長)が挨拶しました。当初、子ども・子育て分野には1兆円超の財源が必要とされながら、確実な財源は消費税増収分の7000億円しかなく、質の向上のためにも残る4000億円の確保を確認したいとの狙いで企画したフォーラムだったが、消費税引き上げが1年半延期になるという、とんでもない事態のなかでの開催となったことを説明。引き上げ延期という状況を踏まえて、「これからのわが国の子どもたち、子育て支援の未来を考えるという構成で行きたい。応援団は財源の獲得を訴えてきた。いよいよ恒久的な財源が入って新制度のスタートが切れる、応援団も一定の役割を終えることができるかと考えていたが、やめられなくなった。もっと運動を盛り上げていこうということなのか、会場の皆さんとも今後の進むべき道を共有したい」と呼びかけました。

第1部 パネルディスカッション
「決定! わがまちの子ども・子育て支援事業計画」
 

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兵庫県尼崎市、子ども・子育て支援新制度準備室の大前仁哉さん、三重県桑名市教育委員会教育教務課の水野雅文さん、神奈川県と同県逗子市の子ども・子育て会議委員を務める東浩司さん、千葉県流山市子ども・子育て会議の副会長を務める田中由実さんがそれぞれの自治体の検討状況について報告。玉川大学教授の大豆生田啓友さんがコーディネーターを務め、内閣府の子ども・子育て支援新制度施行準備担当審議官の長田浩志さんがコメンテーターを務めました。
 第1部冒頭、大豆生田さんが、パネルディスカッションのテーマに関連して自分の思いを語ってくれました。現場が好きで実践への興味・関心が強いけれども、子どもが大事なのにこの分野への公的投資が少ないとの問題意識から制度にも関わるようになった。「これまではお金をかけなくても大家族や地域の中で(子どもたちはきちんと)育てられてきたが、今は、環境が大きく変わり、手厚い教育や保育、地域の子育て支援が必要となっています。ところが、日本は他の先進国と比べて子どもにかけるお金は圧倒的に少ない。それは研究者としても大きな問題に思っています。いろいろとご意見はあるが、今回の子ども・子育て支援新制度は、そうした目から見て画期的」と話しました。その上で、新制度の目玉の一つに地方版子ども・子育て会議を挙げ、「各自治体において、自分たちで(子育て支援の仕組みを)作っていける。各自治体でどれだけそのことに力を入れたかで大きな差が出てくる」との認識を示しました。
◎尼崎市
 大前さんは、子ども・子育て支援新制度には幼稚園に関係する内容も含まれていることから、同市子ども・子育て審議会を市長と教育委員会両者の附属機関としている点を特徴に挙げました。また、子ども・子育て審議会の下に委員の人数を絞った4つの部会(@子ども・子育て支援事業計画策定A就学前の子どもの教育・保育のあり方B認可基準等C利用者負担)を設け、平成26年11月末までに49回の部会を開催するなど論議を重ねてきたことを報告しました。利用者負担や認可基準案、教育・保育のあり方に関する検討報告がまとまった機会をとらえてパブリックコメントを実施するほか、市民説明会や就学前世向けの個別通知を行うなど情報提供を行ってきましたが、まだまだ市民への周知が足りないと広報を課題に挙げました。
◎桑名市
 水野さんは、「全員参加型の市政」という同市のビジョンを柱に、事業計画の策定に取り組んできたことを報告しました。財政の厳しさも市民と情報共有。幼稚園や保育所は量的に充足しており、市の課題を洗い出すため、ニーズ調査とは別にヒアリングやワークショップを開いて、幅広く市民の意見を拾い上げたことを紹介しました。子ども・子育て会議には事業計画の基本理念ともなる3つの柱をテーマにした3つの分科会(@子どもが主人公A育てる側を育てる・支援するB地域の子育て力を高める)を設置。各分科会で課題解決方法を検討するなど、計画策定のプロセスにおいても「全員参加型の子ども・子育て支援」を意識してきたことを報告しました。
◎神奈川県・逗子市
 東さんは、逗子市の特徴として、「(以前住んでいた三鷹市と比べ)行政サービスは貧弱だが、環境や地域の人々という面では子育てしやすい」と分析しました。半年間の保育料に関する検討を経て、新制度に関する議論がスタートすることになり、委員有志で勉強会を開催。その後も、子ども・子育て会議の委員同士をネットワーク化する必要性を感じ、月1回程度、それぞれが講師となる勉強会を開催している旨を報告しました。「新制度でサービスがたくさんできると、親がサービスの消費者になってしまう」ことを懸念。地元で様々な活動に取り組む人たちと交流し、親を巻き込むなどして、地域のつながりを作ろうとしていると打ち明けました。ファザーリング・ジャパンの理事でもある東さんは、新制度への関心が低い父親に、いかに参加しもらうかを課題としていることも挙げました。
◎流山市
 田中さんは、産前・産後支援や地域子育て情報の提供を行うNPO法人ながれやま子育てコミュニティなこっこの代表。つくばエクスプレスが開通して子育て世帯が流入し、出生率が全国平均を上回るようになった現状を紹介しました。若い人を呼び込もうという市の方針から、街づくり計画の際にも委員として呼ばれ、その延長で子ども・子育て会議の副会長を割り当てられたのではないかと分析、「私のような人がいるから、公募の委員も発言しやすくなっているのではないか」と話し、会議では活発な意見交換が行われている旨、紹介しました。ニーズ調査の項目に、「流山市は子育てしやすいまちだと思うか」といった質問を入れるように要望し、調査に関するワークショップなども行い、市の課題を出し合ったことなども報告しました。
◎国の進捗状況
 長田さんが取り組みについて説明。ちょうど各自治体も事業計画のとりまとめに入っており、事業計画に盛り込まれた保育等のニーズ量や確保策などについて各自治体の数値を積み上げ全国集計した数値を公表したところであることを紹介しました。その際、「今回の計画のポイントは足元の需要だけではなく、将来顕在化する潜在需要も含めて計画したこと」と説き、自治体の数値を積み上げたニーズ量が待機児童解消加速化プランの推計値40万人(平成25年度から29年度末までに確保する保育の必要量)とほぼ一致していること、3歳未満の保育利用率(46%)や地域子育て支援事業、一時預かり事業などの確保が課題であることを挙げました。その上で、財源について、今年4月に消費税が8%となった時点で3000億円が子育て分野に投入されており、ここから7000億円となるまでどれだけ積み増すことができるかが課題であることを明らかにしました。その際、保育者の処遇改善など質の改善が実現できるよう対応したいとの姿勢を示しました。

 第1部パネルディスカッション終了後、応援団が独自に自治体の取り組みを顕彰する「勝手に表彰!」授与式を実施、子ども・子育て支援新制度に向けた準備状況に着目、丁寧な審議や情報提供に取り組んでいると思われる自治体を“「おしえて!子ども・子育て支援新制度」準備大賞”と称して表彰しました。対象となったのは、兵庫県、埼玉県和光市、墨田区、三重県桑名市、山口県防府市で、このうち、兵庫県、墨田区、三重県桑名市の関係者が代表して表彰状と副賞(わがまちの未来を語る子ども・子育て会議実践ガイドブック&子育て支援者研究セミナー報告書「子育て現場のケアコミュニケーションを考える」)を受け取り、会場から盛大な拍手で称えられました。

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第2部 パネルディスカッション
「どう実現する? 子ども・子育て支援政策
〜まだまだ足りない!4000億円」


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 自由民主党からは猪口邦子・参議院議員、公明党からは古屋範子・前衆議院議員、民主党からは徳永エリ・参議院議員ら出席。堀田力団長と奥山企画委員が、消費税引き上げ延期に対しての感想や財源確保の方策などについて尋ねました。 
 このうち猪口さんは、専任の少子化担当大臣として就任した経験を上げながら、「これまで子どもや女性のことは後回しだったが、全力でこの分野を主流化しようとしてきた。今回も後回しにしてもらっては困る。高齢者施策も大事だが、子どもも大事だと強い言葉で政策推進する」と訴えました。
 さらに、総理が子育て支援はしっかり進めると発言している点を挙げ、「総理の発言は重いので、そのように与党で取り組む」と強調。保育士の処遇改善などについても8%の引き上げ段階でも可能な点は改善する姿勢を示しました。
 また古屋さんは、消費税引き上げ延期の首相会見を聞き、「延期で大きな影響があってはならないと真っ先に考えた」と発言。認定こども園に移行を予定していた幼稚園をはじめ園長・施設長や保育者、自治体関係者などの顔が浮かんだことを明らかにしました。新制度については1兆円超が必要とされており、当初から4000億円は足りなかったため、同党としても強力に財源確保を要求してきたことを挙げながら、新制度の実施に対し「いかようにも財源を確保していくと政府に強く求め、与党として強力に訴えていきたい」との姿勢を示しました。さらに、「社会保障は負担できる人が負担し、子育世代に回していくという流れが必要」と述べました。
 徳永さんは、「選挙に700億円の血税が使われる。大義なき解散。与党だけではなく野党にとっても政治不信の危惧だが、国民の声を届けるチャンス」と述べました。地元北海道では、通りで子どもが遊ぶ姿が見えないほど将来に危惧を抱かせる状況であることを挙げ、「子ども・子育て分野の予算が大きく減ることになる消費税の引き上げ延期は問題」と指摘しました。選挙の機会に、子どもの未来に何が必要なのかを訴えていきたいと呼びかけた。
 会場からは、子どもの貧困問題への対策や新制度で減収となる見込みの認定こども園から財源確保が求められました。子どもの貧困対策に関して古屋さんは、「子どもの貧困対策法」を成立させたことを紹介し、「一番大事なのは教育支援。どの家庭に生まれても希望する教育が受けられるようにすべき」と教育の重要性を指摘するとともに、同一労働同一賃金に向けた努力を訴えました。
 認定こども園への財源確保について猪口さんは、「規模園が減少になるなど大変な苦労があることは申し訳ないが、国と一緒に考えたい。ここで後退すると突破することは難しくなる。新制度は国だけではできない。民間の方も新制度を信じてついてきてもらいたい。そのあと押しがあれば、制度の不備を直しながら推進していくこともできるし、その勢いで財源も確保できると確信している」と述べました。

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 最後に、安倍総理大臣が消費税引き上げ延期と衆議院解散総選挙を伝えた翌日に、にっぽん子育て応援団として掲げた「子ども・子育て支援新制度の円滑なスタートのための財源確保を求める緊急アピール」を読み上げ、会場からの拍手によって賛同を受けるとともに、賛同者リストおよび賛同コメント集とともに、壇上の3議員に直接手渡し、子ども・子育て分野の質の向上と財源の確保を、再度強く訴えて、フォーラムを終了しました。
 緊急アピールは現在も賛同者を募集しており、衆議院選挙後に関係閣僚などに向けた働きかけを行う予定です。

☆緊急アピール文と賛同フォームはこちらから。
http://nippon-kosodate.jp/topics/topics.cgi?ID=00219
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2014年12月08日

緊急アピール賛同者のメッセージ(その16)

子どもが夢を持てる社会
NPO・市民活動者,子育て当事者,その他(子育て応援者など)

未来ある子供たちに関わる子育て、何よりも大切だと思います。予算いかんに関わらず、充実させることを優先させていただきたく、お願いします
子育て当事者

保育の質的向上や保育士の地位向上のため、財源確保をお願いします。
企業

保育の質の向上が、これからの日本を支えていくことになる子どもたちの“人としての土台作り”に大きな影響をあたえます。
また、それに関わる関係者の待遇改善も大切な国の施策であると思います。 その為の財源確保は延期せずに取り組んでいただきたいです。
企業

やっと子育て支援が本格化するのでは?と期待していました。ここが正念場ではないでしょうか?
子育て世代は皆悲鳴をあげながら頑張っています。これ以上は頑張れません!
是非とも、財源確保よろしくお願い致します
子育て当事者

財源確保の緊急アピールに賛同致します。量的拡大で終了とせず、ぜひ質的向上達成までセットで対応していただきたいです。

未来への投資をよろしくお願いします。
NPO・市民活動者

子どもは国の大切な財産であり、国の未来です。これにかける予算を削ってまでやるべき政策とは何でしょうか。十分な財源確保を希望します。
NPO・市民活動者

量の拡充と共に,保育の質の向上を目指した財源の確保を願っています。多くの子どもたちがより望ましい保育を享受できますように。保育者,保護者,支援者,そして将来の子どもたちの幸せへとつながるはずです。
その他(子育て応援者など)

真っ白な子どもの心を、端折らず大切に育みたい。
NPO・市民活動者

待機児童の問題は働く母親にとって本当に切実な問題です。
子育て当事者

現在2歳の子を保育室に預け、時短で仕事をしています。保育園の確保が本当に大変で、周りのお母さん達も、働きたくても働けない人がたくさんいます。幸運にも私は保育室が見つかりましたが、はやり子育てをしながら働くというのは諸々制限があり、仕事場でも片見は狭い想いです。待機児童がクローズアップされていますが、ただ保育園を増設すれば済む問題ではないのではないかと思い始めました。
働きたい、働かなければならない母親が、雇用や働き方、制度等、もう少し働きやすい社会ができればと切に願います。
子育て当事者
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2014年12月01日

緊急アピール賛同者のメッセージ(その15)

今を生きる子どもたちに、あたたかな社会を作りたい。これまで置き去りにされてきた問題にしっかりと取り組んでください。 
その他(子育て応援者など)

子どもの未来は、日本社会の未来。単年度予算ではなく、社会保障としての安定的な子育て支援に関わる財源確保をお願いします。
その他(子育て応援者など)

日本の子どもたちの未来を守るために何とかしたい!
NPO・市民活動者

消費税10%を待たずに質の改善の財源をお願いします。
その他(子育て応援者など)

子どもたちの未来のために。みんなで取り組んでいきたいです。
NPO・市民活動者,子育て当事者

子どもの育つ環境が危機的状況です。特に人的環境整備のための財源は重要です。
その他(子育て応援者など)

子ども・子育て支援制度の船出は、インクルーシヴな社会づくりの第一歩であり、大事な人づくり政策でもあります。この歩みを確実なものとするためにも、必要な財源の確保は欠くことのできないことと思います。待機児童解消のみならず、幼保一体化、全世代型社会保障の実現、幼児期の教育の振興のためにも、今このときこそ改革の実現に向かうべきと考えます。
その他(子育て応援者など)

今後に期待しています!
子育て当事者

財源なくして、新制度なし!必ず財源を確保し、少子化対策を行って下さい。
NPO・市民活動者,子育て当事者

子どもの最大の利益の為に私達は努力してきました。子ども達は、次世代をになって行く大切な存在です。是非子ども達の笑顔を消さない為に心を合わせて頑張りたいです。
その他(子育て応援者など)
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2014年11月27日

緊急アピール賛同者のメッセージ(その13)

財源がないを理由に先延ばしできない課題はたくさんあるとは思います。
子育てだって待ったなし。
子ども達がのびのび育つ環境がつくれないのなら、この国の未来はどうなるのでしょう。
大切なこと、政治家さん達のあれやこれやにうやむやにされたくないです。
子育て当事者

税金は誰のもの?政治家や官僚・行政のものでは有りません。
国民が一生懸命働いて納めたお金の使い道は、国民がより豊かに暮らせるために使うもの。
国民一人一人の努力では出来ないことを、国がしっかりとやって欲しい。消費税が上がらなくとも、国は出来ることは沢山あるはず。日本の未来を担うこども達に対して、子育てをしている保護者に対して、国は何を思うのか?よ〜く考えて欲しい。
その他(子育て応援者など)

子ども達がすくすくと育つには、多くの人の力が必要です。
どんなに大切に思っても、親の余裕の無さは、子どもに影響してしまうのです。子ども達への投資は、ともに育つ大人の力を引き出すことにもなります。
よろしくお願いいたします。
行政,子育て当事者

たくさんの方々の知恵と努力が結集された新制度です。
是非とも実現させるべく、微力ながらも協力させて下さい。
NPO・市民活動者,行政

こどもたちの健やかな育ちや安心できる子育てのために財源の確保をお願いします。
NPO・市民活動者

子育てに不安を抱えて仕事との両立は厳しいです
子育て当事者

子どもは、私たちすべての大人のもっとも得がたい宝です。
子育て当事者

消費税は私たちの生活に直結しているので、増税は個人的には厳しいが、社会全体で考えるとこれ以上子育て支援政策を先延ばしはできない。ここを先にやらないと日本の未来はない。
消費税のみならず、多方面からの財源確保に努めてほしい。
NPO・市民活動者

経団連も11/17の提言で、子ども分野への財源投入を提言しています。
保育・学童保育にしっかり財源保障をしてください。
NPO・市民活動者

働くことで子どもが育つ環境にしわ寄せがいくような選択はしたくありません。
保育環境の質の確保のため、保育従事者の処遇改善は必須です。
子どもの成長には多様な経験が必要で、それには地域ぐるみでの子育てが重要です。
よって子育て支援団体への補助も重要と考えます。
是非財源を確保していただくようお願い致します。
NPO・市民活動者

社会保障の確保(子ども)のための消費税増税には賛成しています。
この時期に来て、自分勝手な解散、先送りとはどのようなことでしょうか?国の首相がすることではない。
子ども子育て会議も、地方でも一生懸命話し合い子どもの育ちのための会議をいっぱいしています。
このようなことを国がすると、地方の行政の方々の意欲を削ぐ形にもなるのではないのでしょうか?
首相は、自分勝手なことをしても良いのでしょうか?今回の解散には意義が見えません。
子どもの部分は、今まで通りの予算をつけて、安心して生活できるように約束してください。
単年度予算では何もできません。よろしくお願いいたします。
NPO・市民活動者

子どもを授かりたい方が夢を持って授かれるように。
生まれてきた全ての子ども達に、等しく育つ環境が整うように。
産んでよかったと心から思えるように。
まずは、そのための環境が必要です。
今まで、女性が地域が担ってきました。
地域のあり方は変容しています。
そして、女性の働き方も変わってきています。
その中にあって、子ども達のことをしっかり守る施策は必要です。
そのための財源を先に確保してください。
NPO・市民活動者

必要なのは『今』なんです!今動いて欲しい!先延ばしはありえません!!!
NPO・市民活動者

将来の日本を担う子どもたちに投資を惜しまず、しっかり育てましょうよ。

子どもへの投資とは、我々大人が死んだ後も生きていく子どもたちが、生きていく環境を整えることも含みます。大人が多少我慢してでも子どもたちの未来の負担を軽減することが、大人たちの責務だと思っています。
NPO・市民活動者

子育て中の親にとって、新制度の動向は不安がいっぱい。
どうか、進み始めた制度が後退しないよう削減されることの無いよう切に願います
NPO・市民活動者,子育て当事者

認定こども園として新たに開園し、8年目を迎えておりますが、急激に少子化が進む中、疑似的な兄弟姉妹関係を豊かに築くことができること等から生きる力を育み、構築することができる制度と確信しています。どうぞ、27年度からスタート予定の新制度が、すべての子どもの最善の利益となりますよう、よろしくお願い申し上げます。
女性の活躍を!との政治家の声は聞こえるのですが、その為の支援をどこまで理解してくれているのか見えません!!
NPO・市民活動者
posted by Cheergaroo at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 応援団プロジェクト

緊急アピール賛同者のメッセージ(その12)

制度だけいじり、財源がついてこないというのは最悪のパターンです。
心配していたことが現実となってしまいました。何のために十年来議論を続けてきたのでしょうか。
制度を始めるなら、なんとしても財源は確保していただきたいと思います。
NPO・市民活動者

子育て支援新制度に向けて、地方でも熱い議論が進んでいます。
確実な財源確保をお願いします!
NPO・市民活動者

子ども・子育て支援新制度、現場では緊急に必要と感じています。財源確保お願いします。
NPO・市民活動者

このようなことになり、現状では不安でなりません。
国の推奨する認定こども園に大変な努力をしてなったのに、ならなかった方が良かったかという気持ちです。
何卒財源確保にご尽力をお願いします。
その他(子育て応援者など)

子どもや子育て中の親のための予算を、もっともっと優先することが必要です!
NPO・市民活動者

ただでさえも遅れている地方の新制度。なかったことになりそうな気がしてなりません。
子供達への予算確保、切にお願いいたします。
NPO・市民活動者

子ども・子育て支援に関する施策は質・量ともに待ったなし。
量的拡大にだけお金をかけても、拡大は難しいです。
予定通りの予算が確保できるように強く要望します。
企業

微力ながら署名に参加させていただきます。
企業,子育て当事者

もう現状維持のための予算の拡大は必要ありません。
未来に向かうため、子供達への投資を先進国並みに行うべきです。
国の未来を憂うのであれば、未来を創る子供達を大切に育むことがもっともよい方法です。
行政

今まで先駆的に努力してきた量質ともなう保育・教育に対する努力、幼保連携、認定こども園に対する理解と取組に対し、裏切らないで頂きたいです。
その他(子育て応援者など)

限りある財源ですが、必要なところにきちんと支援が届くようお願いします。
NPO・市民活動者

新しい制度の発進に向けて、市も支援者も保護者もそれぞれの立場で頑張ってきています。
その努力を台無しにすることなく、予定通り、しっかりと進めていくことが、国の政策への信頼につながるはずです。
NPO・市民活動者

大人も子どもも、笑顔で暮らせる社会にしましょう。
NPO・市民活動者

日本の将来を担う子どもたちのためにお金を使ってください。
企業,子育て当事者

子どもの貧困の連鎖を食い止めるにはどうしても財政確保が必要です。
NPO・市民活動者

さまざまな面から子育てがしやすい環境が整うようにと願っています。
その他(子育て応援者など)

子ども達の未来がしあわせなものになるようにみんなで真剣に考えて本気に行動していくのが大人の責任だと思います。
NPO・市民活動者

期待でけさせておいてこれでは希望を持って子育てができません。
安心して子育てができる世の中を
NPO・市民活動者

子育ては、その子どもの人間の基礎を築いていくというこの上なく大変で、思い通りにいかなくて、24時間休まることのない重大なプロジェクトです。
全ての子育て家庭に支援が行き届くよう、全力で財源確保をお願いいたします。
NPO・市民活動者,子育て当事者
posted by Cheergaroo at 16:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 応援団プロジェクト