2019年08月23日

一時預かり事業拡充のための提言を厚生労働省に提出しました。

8月22日、厚生労働審議官本多則惠さんに、一時預かり事業拡充のための提言をお渡しし、子ども家庭局保育課長矢田貝泰之さん、同局子育て支援課長田村悟さんらも交え、現状についての意見交換などを行いました。

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23日には、内閣府子ども・子育て本部審議官の藤原朋子さん、参事官の西川隆久さんにも提言をお渡しします。

今回提出した提言は以下のとおりです。

一時預かり事業拡充のための提言

核家族化や知り合いのいない土地での子育てを背景に、一時的に家庭での保育が難しい状況に陥りやすい家庭が増えていることを理解し、すべての子ども・子育て家庭を対象としている一時預かり事業の必要性を社会が認め、子育て家庭が気兼ねや不安をもたずに利用できるよう、その社会的意義を共有し、現状や子育て家庭のニーズを踏まえたうえで、拡充していくことが必要です。
たとえ短時間であっても、特別な配慮が必要な場合であっても、様々な困難を抱えながら生活する親子を支援し、子どもが豊かに安心して過ごせ、子どもの社会性を育む一時預かり事業を要望します。


〇実施状況 (平成30年子ども・子育て支援推進調査研究事業「一時預かり事業の運営状況等に関する調査報告」三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部共生社会部より)(n=1920)
・回答事業所の属性について、運営主体は、26%が自治体直営、58%が社会福祉法人。
実施している他事業は、保育所66%、地域子育て支援拠点事業25%、認定こども園25%。
・一時預かり事業専用室の設置割合は、42%。
・予約の受付方法は、電話89%、来所72%。インターネットの受付システムは1.6%のみ。
・受け入れ対象年齢は、1,2歳児が8割以上と多い。
・配慮が必要なお子さんを預かっている実施施設割合は27%。
・年間利用者の63%が非定期利用者。37%が定期利用者(1か月以上週3日以上)。
・定員の平均は8名/日であるが、年間延べ利用者数が、300人未満の実施施設割合が59%。
・延べ利用者数平均について、4月は33人、3月は50人と年間利用状況に季節変動がある。
・職員の勤務形態は、常勤51%、非常勤47%。専従68%、兼務30%。
雇用形態は、正規職員32%、臨時・嘱託職員26%、パート・アルバイト40%。
・資格は、保育士87%、幼稚園教諭49%、子育て支援員4.7%。

〇運営上の課題・難しさ(平成30年子ども・子育て支援推進調査研究事業「一時預かり事業の運営状況等に関する調査報告」三菱UFJリサーチ&コンサルティング 政策研究事業本部共生社会部より)(n=1920)
課題 
・定員以上の申し込みがあり、断らざるをえない 36.7%      
・利用者数に応じた職員配置など、調整の負担が大きい 27.1%
・配慮を有する子どもや乳幼児の預かりが増え、定員分預かることが難しい 24.1%
・職員を十分に配置するための費用に対して補助金額が不足している 19.1%
・電話対応や利用料徴収などの事務負担が大きい 17.9%
難しさ 
・慣れていない子どもを数多く預かる必要がある 56.7%       
・同時に複数の年齢の子どもに対応することが難しい 21.4%

〇緊急フォーラムで明らかになった課題
 1.一時預かり事業の位置づけ、現状把握ができていない。
 2.自治体間での格差が大きい。
 3.1時間300円〜800円と利用料がバラバラ。
 4.就労・学習、親のレスパイト、子どもの発達支援、虐待予防等、事業の目的が多様。
 5.家庭のニーズに、量的に応えられていない。
   2019年度の利用児童数の目標値、1,134万人に対して、2017年度末で495万人と半分以下。
 6.実際には様々な困難を抱えた家庭、配慮が必要な家庭が利用している。
 7.子どもを預けるには家庭ごとの事情から生じる理由があり、家庭の背景にある課題を見極め、親子を支援していくソーシャルワークの機能が求められる。

○わたしたちの提言

1.就労・学習、親のレスパイト、子どもの発達支援、虐待予防など子育て家庭の多様なニーズに応えることができる一時預かり事業の位置づけや意義について、国において改めて整理し、市町村はじめ関係者に周知することを要望します

2.全国どの地域に住んでいても一時預かり事業を利用できるよう、わがまちの子育て家庭の潜在的二ーズを的確に捉え、次期市町村子ども・子育て支援事業計画に、量的ニーズを踏えた計画づくりと実施体制の確保を要望します。
特に、幼稚園、保育所、認定こども園等に通っていない家庭への非定期利用の一時預かり事業の量的拡充を要望します。
 
3.量的拡充のために、以下が実現できるよう予算の拡充をお願いします。
・保育所、認定こども園等に併設された一時預かり事業について、担当保育士の処遇改善その他の事業所への支援の充実
・多様な実施場所、運営主体が参入可能な事業環境の整備
 具体的には、地域子育て支援拠点事業等、乳幼児家庭の身近な場所において実施される一時預かり事業の拡充
・専用施設設置のための建設費、改修費、家賃補助等の実施場所整備に関わる予算の拡充

4.子育て家庭が、安心して預けられる一時預かり事業の質の拡充をお願いします。
・最低2人の職員配置が可能となる国庫補助基準額のアップ
・保育士、子育て支援員等の配置基準の見直し、処遇改善
・困難を抱えた家庭、配慮が必要な子どもを預かるための研修、支援体制づくり
・子育て支援員等研修等の拡充 
・大規模事業所の事務職員配置加算やIT化促進費用の拡充

5.様々な困難を抱えた家庭、配慮が必要な家庭に対して、家庭の背景にある課題を見極め、親子を支援していくソーシャルワークの機能を果たすため、利用者支援事業や子育て世代包括支援センター、子ども家庭総合支援拠点等との連携や専門家による支援チームの派遣等の体制整備を要望します。加えて、同様な機能を果たす、ファミリー・サポート・センター事業、子育て短期支援事業(ショートステイ、トワイライトステイ)等の拡充も合わせて要望いたします。

6.一時預かり事業を身近な事業とするため、一時預かり事業の無料利用券の配布等の工夫をお願
いします。特に、困難家庭や定期健診未受診家庭など特別な配慮が必要な家庭の利用につながる
よう配慮を求めます。

2019年7月13日

にっぽん子ども・子育て応援団
よこはま一万人子育てフォーラム
緊急フォーラム参加者有志

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2019年08月20日

緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言」を開催しました。 緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言」を開催しました。 緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言」を開催しました。

 にっぽん子ども・子育て応援団は7月13日、東京・一ツ橋の日本教育会館で、緊急フォーラム「今伝えたい!一時預かり事業の現実 未来に向けて緊急政策提言!!」を開きました。一時預かり事業に関する初めての実態調査の報告や厚生労働省による事業説明、実際に一時預かり事業を行っている現場からの実践報告を受け、参加者らでグループワーク。多様なニーズがありながらも厳しい運営にならざるを得ない現状とともに、配慮が必要な親子の増加や虐待の恐れのある子どもの受入れなど現代な深刻な子育て家庭の最前線にあることなども明らかにされ、今後さらに充実が求められることを確認しました。
 にっぽん子ども・子育て応援団ではこれらを提言にまとめ、一時預かりの担当部局である内閣府子ども・子育て本部および厚生労働省子ども家庭局に向けて、一時預かり事業のさらなる拡充を働きかけることにしています。

基調報告

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 厚生労働省の平成30年度子ども・子育て支援推進調査研究事業として実施された「一時預かり事業の運営状況等に関する調査」について、担当した三菱UFJリサーチ&コンサルティングの鈴木陽子・主任研究員が報告。一時預かり事業の事業形態や事業主体、事業規模、職員配置状況などを明らかにしました。平均定員は8人で、利用年齢は1・2歳児が中心、週3日以上利用する定期利用は4割程度で、6割は年間延べ利用者数が300人未満と小規模。職員は保育士が9割で、半数が常勤。事業所の収入から給与総額を引くと、年間延べ利用人数900人未満では赤字になっていることも分かりました。配慮の必要な子や乳児の受け入れなどで人手が取られるために利用を断らざる得ない一方、急なキャンセルなどで職員が余剰となるなど利用者数に応じた職員配置が課題となっていることが挙げられました。このほか、保育者が事務負担を行うことやアレルギー・発達障害への対応、異年齢の合同保育、保育所より低い処遇などが課題に挙げられていました。

行政説明

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 一時預かり事業の推移や現在の補助内容、実態などについて厚生労働省の竹林悟史・前保育課長が説明しました。地域子ども・子育て支援13事業の一つである一時預かり事業は、理由を問わずに家庭での保育が困難な場合に利用できるという点が特徴。実施類型としては、一般型(保育所などで実施されているが場所の縛りはない)、幼稚園型T・U型(幼稚園を利用している人が利用する預かり保育)、余裕活用型(保育所は年度初めに定員に余裕があり途中から定員まで埋まるので、年度当初の余裕がある場と人を使って行う)、居宅訪問型(障害を持った子どもなどが対象)、地域密着U型(保育士の要件を一般型より緩和し、拠点などで実施されている)があります。
 保育所が持っている機能を開放するという形で平成13年ごろから補助制度がスタートし、平成20年の児童福祉法の改正で地域子育て支援拠点事業などとともに法律に位置づけられました。その際、実施主体を保育所以外にも拡大し、特定の子どもを継続的に預かる保育と区別するために「一時預かり」と名称も変更しました。また、拠点では、年齢別の配置基準を満たすことが難しいことから保育士が1人以上を要件とする地域密着U型が設けられました。その後、子ども・子育て支援新制度がスタートする前後に類型が見直され、保育所型と保育所以外の地域密着型をと統合して一般型とし、ひろばで実施されている地域密着型Uも一定の役割を果たしているとして残りました。自治体の事業計画では、平成25年度の実績400万人弱から、31年度末には1134万人まで増やすとされていましたが29年度末の実績で495万人程度と、達成は厳しいと見られています。実数が伸びないことなどに国としても問題意識を持っていることが明らかにされました。

実践報告
 友澤ゆみ子・NPO法人ピッピ・親子サポートネット理事長(横浜市)、新澤拓治・NPO法人雲柱社施設長(練馬区)、伊藤千佐子・NPO法人せんだいファミリーサポート・ネットワーク代表理事(仙台市)の3人が、それぞれの地域における一時預かり事業の実践について実情を報告しました。
 このうち友澤理事長は、単独型の一時預かり事業や認可保育所に併設した一時預かり事業、広場を利用した一時預かり事業などを展開し、全体で延べ利用人数数が4000人に上り、定期利用が多い事業形態とリフレッシュや緊急預かりが多い事業があることに言及しました。配慮の必要な子ども・保護者も増えており、受け入れられる人数は減少傾向、療育センターからの照会もあるなどソーシャルワーク機能が求められるようになっていることにも触れ、保育者側のスキルが必要だとして運営費の増額、保育士確保が課題だと訴えました。
 また新澤施設長は、子ども家庭支援センターにおける一時預かり事業について報告。延べ利用者は1万人程度で、週7日開所しており、練馬区が国の基準を上回る補助を行っており、充足率が9割を超えることなどが明らかにされました。予約や利用料の点から、一時預かりを利用した方がよい人が必ずしも利用できておらず、困難を抱えた人を受け入れらえるよう配慮していることにも触れました。区では当日キャンセルでも補助が行われていることで安心して事業運営できると指摘。一時預かりの保育の専門性について今後、検討する必要があるのではないかと問題提起がなされました。
 最後に、大規模な地域子育て支援拠点で実施される一時預かり事業について伊藤代表理事が報告。保育士3人で9人の子どもを受け入れる体制だが、処遇面などから保育士確保が難しく受け入れ人数は減少、国の補助の加算等が指定管理費用に反映されていないため、職員処遇を引き上げることが難しい点にも言及されました。心臓病など配慮を要する子どもやアレルギー児、虐待を受けたと思われる子どもなどのリスクの高い子の利用も増え、小児科や弁護士とも連携していることが挙げられました。広場に併設されているため、継続的に子どもと保護者をケアすることも可能となっている良さが指摘されました。

グループワーク・シンポジウム

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 参加者が6人程度のグループとなって意見交換。値段設定の難しさや幼児教育・保育の無償化による対象者が増えることへの懸念、配慮の必要な子どもの増加、自治体による対応の差、事務量の多さなどが課題に挙げられました。
 フロアからの問題提起を受けて、登壇者らが発言。「土日も実施するならば人件費もそれだけかかることを踏まえた事業費が必要」「断ることは難しいが、受け入れる場合にはリスクを引き受けることになる。情報量が少ない中、短時間でその子の特性を把握するといった専門性も考えるべきではないか」「一時保育の必要性が理解されない時代から事業を行ってきたが、虐待予防の観点からますます必要になってきている」「リフレッシュと言われるが、一時預かりの実態では厳しい家庭の子どもを預かっている。世間のイメージとのギャップがあるのではないか」「一時預かりを通して、深刻な家庭が多いことを実感する」などの意見が出されました。

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posted by Cheergaroo at 11:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 応援団プロジェクト