2015年07月07日

にっぽん子育て応援団結成6周年記念フォーラム開催報告記

にっぽん子育て応援団結成6周年記念フォーラム
「発進!子ども・子育て支援新時代」
開催報告記


 にっぽん子育て応援団は5月30日、「発進!子ども・子育て支援新時代」をテーマに、結成6周年記念フォーラムを東京家政大学板橋キャンパスの三木ホールで開催しました。
 開会挨拶では、東京家政大学女性未来研究所所長でもある樋口恵子団長が、子ども・子育て支援新制度が4月にスタートできたのは、地域で子育て支援活動を展開してきた活動家たちのおかげだと感謝の意を示しました。ただ、最近、少子化対策として出生率の目標を立てようとする動きがあることには懸念。生まれてきたことそのものをありがたく思える環境を作るために、これから市民たちで作戦会議を始めようと呼びかけ、フォーラムが始まりました。

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【第1部】自治体首長対談
「発進!子ども・子育て支援新時代」

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 応援団企画委員の奥山千鶴子さん(子育てひろば全国連絡協議会理事等)のコーディネートにより、前新宿区長の中山弘子さんとにっぽん子育て応援団の企画委員でもある三鷹市長の清原慶子さんが対談。両区市で子ども・子育て支援施策をどのように進めてきたのかその経過を振り返りつつ、問題提起しました。
 この中で中山さんは、次世代育成支援計画の総合ビジョンを策定する際、「子育ては母親だけがやるものではないし、それだけでは子どもが育たない」と考え、子育てを応援する人とサービスが豊富なまちをポイントに置いたことを紹介。さらに職員とも議論し、結婚や出産は個々が決めることであり、子どもを持ちたい人が持てる社会を作ることが大事だということで、「子育てを実現しやすいまち」を計画の目標に据えたことをも報告されました。実際、「新宿は子育てしやすいまちだと思うか」という質問に対する答えは、小学生の保護者で倍増、就学前児童の保護者では3割以上増えていたことを挙げ、結果として出生数が増えたと振り返りました。
 また、待機児童対策については、男女とも働かなくては暮らしてゆけない社会になり、子どもがきちんと育つためには保育所が大事だと積極的に進めてきた旨を報告しました。同時に、保護者の就労に関係なく発達に必要な施設が必要だとして、新宿型の子ども園を整備、区立幼稚園の子ども園化を進めたことを紹介しました。現在、再び待機児童が増えていることに対しては、「子どもが就学前の世帯でも共働き率が高くなっているので、行政の施策が追い付いていっていない面があるのではないか」と投げかけました。
 さらに、新宿区は区民の1割が外国人という特色があることから、多様さへの対応も考慮。「多様さを受け入れ力にしないと社会は発展しない」と考え、すべての子育て家庭をサポートしてきたことを紹介しました。在宅子育て家庭の支援のためにひろばや一時預かり事業を実施するほか、地域の子育て情報の提供などにも取り組み、子育て支援団体が集まる見本市、新宿子育てメッセの開催、子ども総合センターの創設などを挙げました。こうした取り組みでは、「地域の人々集まり、顔が見えることで情報共有し、共感することが大事だ」と振り返りました。
 清原さんは、バランスの良い子育て支援を目指してきたと話されました。同市の公立保育所で最初に0歳児保育を実施したほか、株式会社への民間移管も最初に実施し、公立幼稚園の跡地の活用、保育ガイドラインの作成、子育て支援NPOを活用した在宅子育て支援の活動などを展開してきたことを紹介しました。
 農地が宅地化した成果も大きいものの、こうした取り組みの成果として人口が平成15年の16万8000人から18万人増加したと報告しました。
 待機児童対策については、平成27年も209人発生するなど増加傾向になることを紹介。就任以降、約1500人分保育所定員数を増加しているものの、潜在ニーズが顕在化しており、待機は減っていません。そこには、暮らし方や女性の働き方、家族の在り方が影響しているとの認識を示しました。
 その背景の一つとして、出生率の動向にも注目。就任時の合計特殊出生率は0.95で、「安心して子どもを1人以上産めないというのは地域として望ましくない」と考え、親子ひろば事業を充実させてきたと振り返りました。就学前児童のうち在宅子育て世帯は3分の1に上っており、待機児童解消だけではなく、在宅子育て世帯への支援も大事だと、保育園の地域開放やひろば事業などを充実させてきたと報告。一定の出生率の向上が見られたとして、「総合的な子育て支援のきめ細やかな取り組みが大事だ」と訴えました。きめ細やかな取り組みの一つとして、民生委員児童委員による「こんにちは赤ちゃん事業」や、高齢者支援も含めた地域ケアネットワークの整備なども挙げました。
 お二人の発言に対して奥山さんは、「子育て支援に特効薬はないということですね」と相槌。清原さんの質問からこども園も話題に上りました。
 中山さんは新宿区のケースについて紹介。「同じ発達段階にある子どもは親の就業状況に関係なく必要な保育・教育が受けられる。お互いに知り合い、一緒になることが大事。一番変わらないといけないのは大人。やってみてわかる」と積極的に推進し、保護者の説明会も区長自ら乗り出すこともあったと振り返りました。
 清原さんは、公立幼稚園の全廃を前市長から引き継ぎ、跡地活用で3園のうち1園をこども園としたことを紹介しました。ただ、施設の老朽建替え後、公設民営園に変更しようとしたところ、保護者から保育士が全部交代し保育の継続性がなくなると反対の声が出され、市の持つ社会福祉法人、社会福祉事業団に運営を委託し、事業団を通して元の保育士を派遣する形を取って理解を求めたことを報告した。「利用者の不安や問題意識を大事にする点は共通点がある」と振り返りました。
 保育所の公私の問題について中山さんは、「公立がよい、私立はだめという神話があるが、今は公私ともに公共性を持つことが必要ではないか」と指摘。新宿区の公立保育士らは大学の教科書を作るほどの力を持っているが、他の施設でどんなことをしているのかを知ることも大事と、研修はこども園と一緒に行っていることを紹介しました。
 清原さんは、保育の質という点で、平成15年度にガイドラインを作成し、現場指導担当の課長職を設けたことを報告しました。公私立保育園でガイドラインを踏まえた研修を実施。担当課長は、「公立保育園はすばらしいと誇りがあったが、民間保育園で学ぶこともあった。自分自身で気づかないうちに視野が狭くなっていたかもしれない」と話したことを紹介し、公私の垣根がなくなってきたことを報告しました。
 これらを受けて中山さんは、雇用の問題を始めて社会が大きく変わる中で、子どもをどう健全に育てるかが大事ではないかと主張しました。
 清原さんも、新制度により地域の実情に応じた子育て支援の在り方を市町村が主体的に考え、社会総ぐるみで子育て支援をする時代になったと主張。高齢者も含めた地域包括の考えた方重要だと訴えました。

【勝手に表彰】

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 今回は、「すくすくジャパン!素敵な子ども・子育て支援スローガン」大賞と称して、新潟県長岡市教育委員会子育て支援部子ども家庭課、奈良県奈良市子ども未来部子ども政策課、福井県福井市福祉保健部子育て支援室、沖縄県石垣市福祉部子ども家庭課を表彰しました。プレゼンターは勝間和代団長が務め、表彰自治体を代表して、長岡市教育委員会子育て支援部部長の若月和浩さん(写真下)と、奈良市子ども未来部子ども政策課係長の宮嵜徹さん(写真上)に、表彰状をお渡ししました。

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【第2部】パネルディスカッション
「子どもが輝く社会に向けて 未来を語ろう!」

 地域子育て支援元年「子どもが輝く社会に向けて 未来を語ろう!」と題して、子どもに関係する各分野の関係者によるパネルディスカッションを行いました。ファシリーテーターは、NPO法人せたがや子育てネットの松田妙子さん。
 乳幼児親子への支援を行っている東京家政大学ヒューマンライフ支援センターの佐々木總子さんは、「乳幼児からの子どもの育ちとそこに必要なこと」について意見発表。「子どもは自ら育ちたい力を持っている。しかし、一人で育つことはできない。信頼関係に基づいた人とのかかわりが必要で、一番身近な父母の毎日が充実していることが大切」と、乳幼児の育ちに一番必要なことは、最も身近にいる母親父親が毎日充実していることと説きました。それだけに、同大学の「森のサロン」では、親がリラックスできる場にするとともに、ひろばに関わる学生たちの先生役になることで自分も社会に役立っているとの有用性を確認することができるよう配慮している様子を話しました。その上で、乳幼児の子育てという点では、ゆっくりと丁寧にかかわることが健康な体と整理的リズムの育ちにつながると指摘。多くの大人による多様な経験や、子ども同士のトラブルによって思いやりや社会性が育つと説きました。
 また、子どもの豊かな遊びを支援しているTOKYO PLAY代表の嶋村仁志さんは、「子どもが遊べるまちをつくろう!」をテーマに発表。子どもに遊び場地図を作ってもらったところ、街中のいたるところに面白さを見つけていたことを紹介し、子どもは自分で面白い遊びを見つけられる存在だが、禁止事項ばかりの環境や人間関係、経験の乏しさなどから遊びが失われていると問題提起しました。また、東京都の事業委託を受けて、子ども300人にグループヒアリングをしたところ、大人から話を聞いたもらった経験が少なく、どうせ何を言っても変わらないと思っていることが明らかになったことをも紹介。子どもと大人の距離が離れている点への危機感も示しました。そこから、道路を遊び場として開放する海外の事例などを挙げ、身近な遊び場を取り戻す必要性を訴えました。
 長野県で森のようちえんを運営するNPO法人響育の山里くじら雲代表の依田敬子さんは、「自然とともにのびのび育てる──森のようちえん」と題して、古い養蚕農家の空き家を活用した野外保育の現状を報告しました。例えば冬の日は、山の麓に集合し拠点までの2キロ程度を上って朝の集会を行い、土間の薪ストーブを炊いてお弁当を食べ、焚き付けを拾いながら歩きまわるような毎日を過ごしています。野外保育の良さを分かってもらうため、その効果について松本大学と共同研究。卒園児などの体格・体力や自己肯定感などのデータを取ってみると、1日5時間8000歩程度を歩く子どもたちは、骨密度や筋肉量などが平均の倍以上で、自己肯定感についても同年齢を上回るといった結果が出たことを紹介しました。長野県も野外保育に注目し、県独自の自然保育認定制度ができたことを報告。依田さんは、「すべての子どもに豊かな自然体験や生活体験が必要ではないか」と、スローライフと同様にスローエデュケーションの重要性を問題提起しました。
 東京都清瀬市を中心にファミリー・サポート・センター事業などを展開するNPO法人子育てネットワーク・ピッコロ理事長の小俣みどりさんは、「妊娠期からの切れ目のない支援 産前・産後ケア」をテーマに発表。自分の親が倒れ支援が受けられないのに子どもの一人が水疱瘡にかかり、父親も仕事を休めないと泣きつかれて24時間対応の訪問型一時預かり事業を実施、「いつでも行ける居場所がほしい」とのママの声に応えてひろば事業を始めるなど、支援を求める人ニーズに対応して事業が広がってきたことを報告しました。また、ひろばの利用を通して、20歳代の若いママの支援の活動が生まれたり、中学生のジュニアサポーター養成講座を通して中学生が母親の大変さとともに子どもを持つ楽しさを知るなど、一つの活動が参加者をつなげ、広げていることも紹介しました。10年活動して、子どもが泣くことに不安を持つ新生児の母親が増えていると感じられたことから、研修を受けた先輩ママが母親の悩みに寄り添うホームスタート活動を実施し、母親の心が軽くなっている実例も紹介しました。生まれる時から親にまるまで、求める人の手元に届ける支援が必要だと訴えました。

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 参加者からは、パネラーの発言を参考に産前・産後ケアに取り組みたいといった意見も出されました。
 一方、パネラーの発表を踏まえて、樋口団長は、介護保険での取り組みを参考に子ども・子育て支援新制度を充実さえるために何が必要なのかについて発言。介護保険制度では、40歳以上が保険料を負担するなど当事者意識を持たせ、利用する際は1割の利用料としてお値打ち感を出すなど、見える化したことが大きいとポイントをまとめました。そこから、新制度ができたことで社会がどれだけよくなったかをPRしなくてはいけないと主張。例えば昨今、ベビーカーや父親の育児参加に対する認識が変わってきたように、子育てに対する意識も変わる可能性があることを挙げました。さらに、これからの人生は長くなるので、「ワーク・ライフ・ケアの三位一体で、血縁のない人でも支え合う。子育て世代も含め世代を超えて支え合う社会を作らないと日本の未来はないのではないか」と主張し、いろんな人たちの知恵を集めようと訴えました。

 この後、安藤哲也団長と勝間和代団長とで緊急アピールを読み上げ、満場の拍手により採択されました。緊急アピール「発進!子ども・子育て新時代─子どもが輝く社会のために─」のアピール全文は次の通りです。

「発進!子ども・子育て新時代─子どもが輝く社会のために─」のアピール
平成27年5月30日
にっぽん子育て応援団

 子ども・子育て支援新制度が本格的にスタートしました。にっぽん子育て応援団は、新制度のさらなる充実、地域の実情に沿った市町村独自事業のよりいっそうの充実などを通じて、社会全体で子育てする機運の醸成を求めていきます。目指しているのは「子どもを真ん中において、子どもの成長にとって不可欠な、家族、子ども同士の関わり、地域や社会の多くの人との関わり、それぞれが大切な役割を果たせるよう支援する社会の実現」です。

「にっぽん子育て応援団の考える目標」
 すべての子どもたちが、家族の愛情に育まれ、
 また、子ども同士の積極的な関わり合いの中で、
 そして、地域や社会の多くのおとなたちの慈しみの中で、
 心豊かに成長できる環境を保障すること
(2012 年5 月「真の社会保障・税一体改革を通じた子ども・子育て支援の充実を」アピールより)

「目標実現のためのにっぽん子育て応援団のアピール」

1. 子どもと家族を支える質的環境向上のためにさらなる財源を求めます
消費税増税が1 年半伸びたことで、予定されていた子ども子育て支援新制度の量的拡充と質的改善が立ち遅れることのないよう、平成28 年度の予算の確保を求めます。にっぽん子育て応援団では、すべての子どもと子育て家庭に行き届く支援の実現を訴えてきましたが、そのためには、近年深刻さを増している子どもの貧困やひとり親家庭の困窮に対する、きめ細やかな支援の実現が急務です。すべての子どもと子育て家庭に発達と参加が保障される、真に子育てしやすい社会の実現に向けて、保育の問題にとどまらず、学習支援、経済自立支援、生活全般への支援といった地域の支援、地域子育て支援のために必要な財源の確保を求めます。

2. 着実な市町村子ども・子育て支援事業計画の推進を求めます
新制度のもと、市町村で策定した事業計画が始まっています。5 年後を射程に入れて事業必要量を見込み、市町村の実情に沿うよう策定されていますが、ともすれば制度づくりに手間や時間がとられ、質の議論が抜け落ちているとも指摘されています。着実な事業計画の推進には、常に点検・評価を怠らず、必要に応じて見直し、事業に手直しを加えていくことが重要です。
事業の点検・評価・見直しでも地方版子ども・子育て会議を活用し、単なる数字合わせの推進ではなく、実情の伴った推進がなされることを求めます。

3. 当事者の声が反映されるしくみを実現させましょう
私たちも行動します。子どもや子育て世代の声にならない声を伝え、限られた財源を効果的に活用できるよう、運営にも参画し責任を分かち合います。既に多くの仲間が地方版子ども・子育て会議の委員公募に手を挙げ、参画しています。地域においては、子育ての今日的な課題を地域で暮らす人々と共有、地域ぐるみの子ども・子育てを支える仕組みをつくるべく、市民版子ども・子育て会議ともいうべき場づくりや、足りない地域資源の掘り起こしや立ち上げも担います。子どもを真ん中にした地域づくり、まちづくりを、子育て家族とともに考え、実践していきます。ともに手を携えて「もっと子育てしやすい社会」を実現しましょう。

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にっぽん子育て応援団 子ども・子育て支援新制度勉強会開催報告記

にっぽん子育て応援団 子ども・子育て支援新制度勉強会
「今、はなそう! わがまちの子ども・子育て会議オフ会」
開催報告記


 平成27年4月17日(金)18:15〜20:30、横浜社会福祉センター(健康福祉総合センター内)8階大会議室8Bで、子ども・子育て支援新制度勉強会「今、はなそう! わがまちの子ども・子育て会議オフ会」を開催致しました。
 にっぽん子育て応援団が2013年から運営している「わがまちの子ども・子育て会議」メーリングリストに因んだイベント名の勉強会への参加者は34名。このほかゲストとして、内閣府・厚生労働省・文部科学省からも参事官・室長・企画官および係長などにご参加いただき、開催の地元横浜市からもこども青少年局の局長・部長・課長などにご参加いただいて、各地の地方版子ども・子育て会議委員や行政担当者、NPO市民活動団体等の方々とともに、この4月から本格スタートした「子ども・子育て支援新制度」に向けた、これまでとこれからの「わがまち」の取り組みについて、ワールドカフェ形式で語り合いました。

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メーリングリストでも熱い議論があった
新制度がスタートして、今の状況の話をして共有、始まったからこその話


 勉強会の冒頭、内閣府子ども・子育て本部参事官(子ども・子育て支援新制度担当)の長田浩志さんに、新制度のポイントについて、おさらいを兼ねたミニレクチャーをお願いしました。
 ミニレクチャーのあと、6つのテーブルでテーマごとに意見交換や情報交換を行うワークを、ワールドカフェ形式で2セッション行いました。セッションごとにグループごとのワークの内容をシェア、テーブルチェンジにより人員構成を変えて次のセッションに臨みました。2セッション目のシェアリングの後、ゲストの方々からまとめのコメントを頂戴し、終了しました。
 「わがまちの子ども・子育て会議」メーリングリスト、通称「わがまちML」のオフ会をも兼ねた勉強会では、これまでメーリングリストで交わされた議論を共有して来た仲間や、難しい用語や制度上の疑問をわかりやすく解説してくれた内閣府と厚生労働省の担当者と直に会って議論を交わす場でもありました。バーチャルからリアルへ。やはり直接会って話し合うことは大切です。各自治体、各地域でも、同じように地域の方々同士で議論を重ねる機会を作って行く努力が必要というのが、最終的なまとめになりそうです。
 今後も、同じような勉強会開催を企画して行きたいと考えています。
 以下、当日のやりとりのエッセンスを、詳細メモからの抜粋でお伝えします。なお、お名前を出させていただいた方々の肩書きは、オフ会開催当時のものです。

◎ミニレクチャー「新制度のポイントについて」
内閣府子ども・子育て本部参事官(子ども・子育て支援新制度担当)長田浩志さん

 新制度の意義を改めて考える。消費税を活用して子育て支援の質量の充実を目指す。財源を使う意味合いの一つ。消費税は社会全体で広く薄く集める。社会全体で支える意味。児童のいない町では新制度は関係ないと言われるがそうではない。

 ただ、待機児童解消が大事な目的の一つには違いない。これまで、行政や自治体が手をこまねいていたのかというとそうではない。保育所の定員は増やしており、ここ数年は4〜5万人増。一方、利用率が上がっている。保育を必要とする方が多くなり、追いついていないのが実態。待機児童数を追っているだけでは潜在需要を掘り起こすだけで解消できない。これまでも待機児童解消といってきたが、新制度と何が違うかというと、掛け声だけではなく、具体策を示し、講じる。
 待機児童解消に向けた3つのアプローチ。今回は、市町村の計画作りの中で潜在需要も含めたニーズをはかるとともに、消費税を含めた財源の裏打ちがある。さらに、保育の認可制度の改善。保育所の認可は都道府県知事が行う。認可に当たって保育士の配置基準等があるが、実際にはその基準を満たしていても都道府県知事の判断で認可しないことも可能だった。新たな仕組みでは客観的な基準をみたしていれば認可される。株式会社等が排除されることがあったが、認可に入る。また、小規模保育。20人以上の定員がないと認可されなかったが、小規模保育でも義務的な機関としてお金を出すこととした。都市部で保育士の確保が困難な地域でもきめ細やかに対応。建設の時間がかからないので迅速に対応できる。(小規模保育の人口減少地域における意義については後述)

 待機児童対策ではないという点で幼児教育の充実。この点はもっと強調されるべき。幼稚園対応の1号認定の子どもについても、国と自治体で義務的に経費を負担する。従来の私立幼稚園に対しては、就園奨励費補助や私学助成といった公的なお金が入っていた。従来の私学助成や就園奨励費は最終的には自治体判断。予算が足りない場合には削ることもあった。新制度では国が公定価格を決めて一定の基準額については国・自治体が責任を持って支出。市町村が幼児教育を受けた家庭のニーズに責任を持って幼児教育を補償する意味がある。国や自治体が同じようにお金を出しても違いがある。そういう目で見ると、地方自治体ではもともと市町村では保育には実施責任があるので保育所はある。人口規模の小さい自治体では保育所はあるが幼稚園はないところもある。1号の子どもは関係ないということではない。3歳以上の幼児教育の受け皿がないのであれば真剣に考える。一つの解決策としては保育所を認定こども園として1号を受け入れる。そこを真剣に考える必要がある。地域においても1号給付の意味合いも考えることが大事になってくる。
 認定こども園制度を活用する。両方の機能を持って総合こども園に一本化すべきとの話だったが、国会の議論を経て、認定こども園か幼稚園、保育所はそれぞれで選択してもらうこととなった。大事なことは、保育所であれ認定こども園であれ、1号のニーズ、保育のニーズに、全体として満たしていくことが重要。そういった地域のニーズを満たす在り方として、幼稚絵・保育所がそれぞれの役割を果たせれば、」それでよい。逆に認定こども園が地域ニーズにかなっていれば、その設置を積極的に考えていく。都市部など、待機児童がいるなら幼稚園が認定こども園に移行することで対応できる。今回の制度設計の意義の一つは3歳以上に向け、広い意味での幼児教育を補償することであり、認定こども園のスキームを活用することが有効となる。

 在宅子育て世帯への支援。0〜2歳、3〜5歳のマトリックス。1〜3号に該当しない子どもをどう支援するか。ここを支えることが虐待への予防にもなる。給付の枠組みではないが、一時預かり事業や地域子育て支援拠点の活用などの支援メニューを用意した。0〜2歳で在宅は7割。ここへの支援をしっかり目を向ける必要がある。一方で1〜3号認定は客観的に見える部分。それに対して0〜2歳は定量的なニーズが見えにくい。この地域支援の部分について、国は財政的枠組みで見るしかないが、実際に地域でどの程度必要なのかに関しては、市町村の判断にゆだねられている。地域による意識や、取り組みの差が出やすい部分と認識している。そういったところからNPOなど子育て支援をされている立場から行政に訴えていくことが大事。行政ではそういったニーズをしっかり把握、受け止めることが大事。量的な議論が中心になってきたという声もあるが、今後の議論ではそうした点にもフォーカスをあてることが大事。
 地域の実態に応じた子育て支援。新制度は待機児童対策、大都市の問題に熱心といわれるが、地域ごとの実情に合わせ、その意義を整理すべき。例えば認定こども園制度では、人口が減っている地域ほど、効率的に教育・保育を提供、集団規模を確保する意義があるだろう。また、人口減少地域であれば従来子どもの数が減ってきて20人を維持できないので、保育所を統合せざるを得ず、身近な保育施設が減ることになるが、小規模を活用すると身近な地域で保育を維持できる。一つの枠組みとして地方。都市部の意義がある。

 最後に今日の会議の一つの大きなテーマ、今後、計画内容の妥当性をしっかりウォッチする第二段階に向けて何をどう取り組むか。今後は、点検評価する継続的な取り組みが大事。3月に国の子ども・子育て会議には、点検評価の内容例を資料として提出した。潜在的なニーズも含めて量を見込んでもらったが、これが実際のニーズと比べて妥当だったか、設定した確保方策が計画どおり進んでいるのかを診てもらう必要がある。そういった点検評価をするためにも、地方版会議は計画を作って終わりではなく、計画的に活用することが大事。地方版会議の活用だけではなく、事業者などへのヒアリングや勉強会などもそうした会議とともに重要との指摘もあった。これも点検評価の大事なプロセスとなる。自治体への点検・評価の視点を示したい。
 国も一方的に抽象的にいうだけではなく、活発な議論の下で計画を作った自治体もいくつかあるので、そうした自治体を調査して共有する。こんな工夫をすればいろんな展開ができるといったことを教えあう。制度そのものが、行政に物申すためには何がポイントかわからないので制度そのものを知ることが出発点。知る機会づくりができるといのではないか。今年度6月から知る場作りを育成できる研修会を展開したい。その土台となった昨年度実施した事業の報告書抜粋を配布した。取り組みのヒントがあると思う。ご参照いただければ幸甚である。

ワールドカフェ方式で論議
多彩な意見が出されたグループディスカッション

◎グループディスカッション その1

 「わがまちの子ども・子育て会議と事業計画」

○とあるグループでのやりとり
Yさん 横浜市で子育て支援活動。今回の制度に関しては、横浜市の子ども・子育て会議の保育教育部会、ニーズ調査の数を見て整備量などを決める部会に所属。横浜市は18区で市民意見交換会を行って、市民の意見を出した。パブコメ2000件程度。市民同士が話し合うより、それぞれが要望する説明会だった。そこがスタート。制度をどう生かすか、市民が意見を言う機会を設けないといけないのではないか。
Mさん 内閣府に横浜市から派遣されている。これまで市では子ども業務には携わっていなかった。勉強中。どんな考えで計画を作成されたのか一端を知りたい。広報などを担当。
Hさん 地域子育て支援拠点のスタッフ。利用者説明会に参加したが、行きたくても行けなかった人がたくさんいた。保育所に入りたい人は、説明会を聞いておかないと保育所に入れないのではないかと焦燥感を持っているようで、案外無関心な人も多い。一方、拠点にいると、幼稚園にいる人が多く、なおさら無関心。別に新制度説明会を聞かなくても幼稚園入園の申請はできる。そこは何も変わらない。「就園奨励費がなくなった」と支援者から言われても「ふーん」で終わり。
Tさん 何かの取材のついでに新制度のこと聞くと、「何か変わりそう」とか、「あまりよくわからない」という反応。そういうのが実は現実。意見交換会に来る人はいいが、ここに来るまで(この勉強会に参加するようになるまでの、それぞれの経緯)が大きいのではないか。次の年度のことも分からない委員のいる自治体もある。
Oさん1 公募会議名が次世代育成支援会議だったので、公募に入り損ねた。計画のパブコメには意見を出した。運営している子育てひろばにパブコメ募集のチラシも来るようになった。が、みんなの目に触れることはない。新制度と今までの計画に盛り込んでも、新制度との金意は分からない。変わり映えしない。普通の人にはわからないのではないか。
Sさん 10月から内閣府。業務として会議も運営、FAQ作成など。自治体や保護者から「事業計画を作ったが乖離しているのでどうしよう」「保育料があがったがどうしよう」という電話がくる。
Oさん2 横浜在住で、東京都から声がかかり、一番最初に声をかけてくれた墨田区で委員となった。新制度というのも、どう進めるかの見通しが立たなかった。これは量の調整をする議論の場ではないというのが大方の意見。各自治体で決められる画期的な会議と聞いていたが、国の指示に対応するだけと、質の話はお金が出るかどうか。私としてはそうではないことを信じたいと。これまでの横浜市を中心にやってきたことを墨田区でてきないか。横浜市での取り組みで、当事者が変えていけることを学んだ。これを墨田区でできないか。開いてみたらみな知らない人ばかり。横浜市と違って市民活動がないに等しい。どうするか。戦略的に行かないと終わる。それを役所の人が理解するだけでも大きい。この中で何かやることは無理。仕掛けないと。
 やったことは、まず委員の人と話した。最初の段階でワークショップをした。どんな区にしたいか。それが最後までつながった。量のことは一切ない。保育は量だけでなく質のことに力を入れるというキーワードだったから、量の調整で終わることは止めた。そこは戦略的には成功したことの一つ。ワーク・ライフ・バランスに対する協議をやっていないではないかという話が出たので、安藤さん(ファザーリングジャパン代表理事&にっぽん子育て応援団団長)に来てもらった。
 墨田区の部長がいたことが画期的。役所の存在大きい。可能性はある。語り続けること必要。そこが大きかった。役所と委員が組めた。全然違う考え方の人とも話し合えた。役所とどう組めるのか。
 どうしても頑張りたかったことは子育て当事者の力。幸いによい委員がいたので、彼女を引き上げた。その後、彼女が子育て・まち育てという会を動かすようになった。基盤として役人が先見の明があり公募委員をたくさん取った。公募委員が発言しやすいようにした。役所が企画を立てるとたいてい面白くない。公募委員らに企画させて。それは成功だった。新制度で保育所に入れるかと心配する保護者がいた。それで親子が集まった。大成功。役所も幼保のブースを出して、対応した。一番並んだのは役所と個人相談。
 これまでの取り組みで、役所は個々に丁寧に対応すること分かった。部長と市民委員の二人が組んで区内の子育てひろばを全部回って、毎回、今度保育所こうなると説明した。
 制度は上からおりてくるのではなく地域で変えることができる。親たちの制度に関する理解は変わった。可能性がある。これで終わってはいけない。第二ステージ。1年ではできなかった。たいていの自治体は量の整備で終わった。新制度の地方版会議はいろんなことがやれる。ここからリベンジができないか。
 墨田区のためにやったのではない。モデルを作ろうと思ってやった。
Oさん1 傍聴したくても、ずっと見ていないと分からない。
Yさん 戦略的にスケジュールの中にどう入れられるか。Sさんという当事者の存在が大きい。
Oさん2 当事者委員を引き上げることが重要だった。地域子育て支援に関しても、箱物はある。これを同機能化するのか、市民的な視点がないとできない。まず、とにかく市民が声を上げる雰囲気をつくらないと。みんなで支えあう場づくりをする1年だった。
Yさん 横浜市の子育て支援は市民目線。自分だけではなく、当事者。客観的な目線があったり、全体を俯瞰する視点があっ。そのプロセスは大事だ。
Oさん2 見通しが見えないので大変だった。分からないけど先に行こうと思った。
Tさん 当事者が要求だけではなく、他の当事者がどう考えるかという視点がでたのはどうして。
(ここでタイムアウト)

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●練馬区・日野市・大田区・さいたま市・横浜市・北区・流山市
 大田区では公募委員もバックボーンのある人が多く、入りづらい。議員が参加していたり、歯科医とか。事務局主導。これから民間主導で勉強会したり、子どもの意見を聞くことができないか、民間の立場で考えている。練馬区では公募とで入った人がまったく真っ白でスタートして会議のマナーから分からない。行政主導と発信したい市民のせめぎ合い。計画の中にコラボを入れるとか。のみにケーションを活発にして行政職員をひきずりこんだという話が出た。日野市では、学童クラブのガイドラインが条例化されたことが関係者にとって大きかったが条例でなく内規でしたのでいつひっくり返されるか分からない。国の基本方針で家庭が大事ということが会議で紛糾。そうではないだろう。親育ち、子育ち、地域育ち、次世代育ちということをクローバーにして優先順位をつけずにやっていこうということで合意した。

●逗子市・流山市・市川市・世田谷区・中野区・大田区
 とても面白いメンバー。毎月会議をした逗子市。市民版会議があった市川市。タウンミーティングで市民の意見を直に訊いた流山市。それぞれの会議の様子とか、うまくいくはずだったのに梯子をはずされたり、見かけと内実が違う、流山が市川に視察にいって、一番見てほしくなかったところを参考にしたりとか。市川対流山という構図に。これから先は子どもにどういうふうに育ってほしいかという話にしたい。給付と事業はどう違うのか、給付は義務だが事業は義務ではないといった話も出た。
 会議としては活発だったが、会議の議論の成果が事業計画に結びつかなかった。

●北九州市・上越市・大垣市・神戸市・横浜市
 草の根勉強会をしたのでニーズ調査の回収率が良かった。先進的だったのは横浜市で、エリアごとの工夫を事業計画に盛り込んでいる。パブリックコメントが反映された。各地域ともニーズ調査は冊子化して持参。関心が高い地域と高くない地域の差がある。会議委員の熱意の差の影響もあったのではないか。保育園と幼稚園の意見のぶつかり合い。お互いに譲らない。市民感覚の意見として今までの手続きとほとんど変わらないと受け止める人もいる。

●横浜市・新宿区・中野区・墨田区
 墨田区に尽きる。いろんな地域で聞かれるのが、制度がわかりにくい、既存の制度と新制度とどう変わるの、新制度が知られていない。就園奨励費なくなったね。費用負担が上がる。会議の委員でも新制度がスタートした後はどうなるのかわからない。新制度に関係の情報発信がむずかしかったり、情報発信が遅かったので関わりにくかった。墨田区では、新制度進めるのかが悩ましかった、座長は当事者の声で作って行きたいと横浜市を参考に進めようと。戦略的に委員と話、量に調整に終わらないようにと、ワークショップを最初に開催した、当事者委員を引き上げる。当事者が動きだすことに背中を押す。新制度説明会でも幼保ブースを置いた。役所が丁寧に対応してくれる。当事者が自分たちで作れると実感して、みんなで作れる。行政職員の理解が大きかった。墨田区をモデルに他の地域でも。まだまだやれる。

●墨田区・中井町・横浜市・敦賀市・広島市
 事業計画をどう作ったかというより、この制度で何がどう変わったかの話が中心。認定こども園になったところ。認定こども園になってもそこで保護者が対立したり。元に戻してとの意見が出たり。広島市では、新制度で消費税が使われたが、自分たちにとってよいことがあったのか。役所に行ってもお金をつけてくれないのでよいことあるか。保育士や調理師さんが離職しやすくなり、墨田区では急に調理師がいなくなって1歳児に仕出し弁当でからあげが出るというような事態が、実は起こっている。事業計画、横浜市がすぐれていて、最初に子どものために計画を作る。子どもの育ちを継続的に見る。第一義的責任が親にあるが。そこは当たり前だが、それを強調するのではなく、地域全体で子育てを支えることが大事ではないか。それはほかの自治体では同じように感じていた。そこが必要ではないか。そこをしないと虐待など追い込んでしまう。

●横浜市・茅ヶ崎市
 横浜市という360万人都市。民の力大きかった。子育て世代でも、自分たちで動くしかない。行政に言ってもしょうがないという人たちが自ら動いてきた。支援拠点が18区の各区に1カ所ずつあり、そこの施設長が集まって拠点ネットを作った。計画書を素案から読み込んだ。読むのは大変。資料をいきなり渡されても分からない。制度を伝える伝道者がいないと、一般の人に伝えられない。この制度で何が変わるかわからない。それをやるために中間支援的な人がいないと難しい。横浜市には18区それぞれに拠点があり、担う人がいた。パブコメが2400集まった。よこはま1万人子育てネットワークと地域子育て支援拠点メンバーによる組織票。1万人で出した意見は、素案に生かされている。自分たちの声は届くという実感。これから、実際にやっていくときにどうか。やり方や内容はどうなのか。そこを聞き、フィードバックしていく場がないと、一人歩きして、こんな制度ではなかったのに!ということになる。市民と一緒に考える土壌が、横浜市役所にはある。会議があることで自分たちが動かせることを体感できるような計画になってもらいたい。

◎グループディスカッション その2
 「今後の展望、子ども・子育て会議の役割」

○とあるグループでのやりとり
Yさん1 横浜市でパブリックコメントを出すムーブメント。第二ステージ。今までは計画を作るだけ。制度を作りつつ、自分たちがどう作るか考えることがえきれば。制度とからめて。子ども・子育て会議でできれば。
Mさん 横浜市職員。計画作りに携わった。組織としては携わる場ではない。3月まで待機児童対策。4月は推進する立場。自分の思いを込めたかった。娘が小3で、待機児童にもなった。保育に携わっていると、保育所って誰のためにあるのか。働く親のためだが、子ども目線で見ているのか。子どもにとって見ようという話とか。地域全体で子育てを支えると昔から言われているが実態はそうではない。子どもの声はうるさいとか。行政として発信してこなかったのではないか。社会全体で子どもを支えることをムーブメントとしたい。行政で何ができるか。市報よこはまで説明。一つひとつの施策、文化を共有していく。会議とどう連携するか。会議は限られているが、いろんなチャンネルで話す機会を作って行きたい。作ったばかりでスタートライン、生かすも殺すも行政と市民。
Sさん 内閣府。地方版会議の取組事例集の作成、人材育成の研修会。企画担当。横浜市はよい事例。意見が十分に反映されないところがあったとか、時間的に限られていて、戦略的に考える余地が無かったとか。1回ニーズ調査をしたが、人口の社会的変化が大きく、思った通りには行かない。そこをどう見直していくのかは非常に大事。どんな感じで見直すかに興味ある。そのとき、子どもの育ちや目線からみてどう評価されるのか、何か考えられていることがあるのか、興味がある。伝道士の人材育成の研修会をやろうとしているのは、この制度を広くわかってもらうためには、関係者が非常に多いからだ。社会全体が何らかで関わる。なるべく広げて関わる必要があるのではないか。自治体で意見が十分に反映されない。行政と住民が対決的。そういうことではなく同じ方向を向いて、一緒に地域をよくするためにどうするか、その土壌づくりをするにはどうしたらよいか。そこに役立つものができれば。
Yさん2 田舎なので人口がどんどん減っている。県内のNPOで行政対住民という形もある。どうしたらよいのか。都会のよい例ばかり、私たちの規模にあわない。Yさんのいうこともわかるが、どうやったらよいか分からない。会議でも委員が活発に発言するわけでもない。行政の枠の中にない意見は落ちる。読み解いてくれるとよいが、翻訳する人が少ない。市民レベルでママたちに伝えたいが役不足。当事者として今困っていることを何とかしてほしいいと訴えているが計画にないので落ちてしまう。そこをどうやって上げていけるのか。今後の会議、田舎の例として過疎で困っている。中核的な田舎のまちは徐々に人口が減っている。田舎でも格差がある。手を組みたいが事情が違う。大変だということで終わっている。
Yさん3 横浜市で子育て支援拠点の施設長。小さなNPO。底辺の隙間の事業をやっている。認可外で一時預かり専門、産前産後の支援。情報感度の高い親御さんもいるが、利用者の幅が広い。産前産後の支援で入る家庭は生活保護。親御さんに障害があったり、子どもに障害があったり、日々の生活を支援。13事業からもれている部分。産前産後の支援は是非、生まれる前からの支援が大事。生まれた後が一番大変。利用者支援事業もやっていく。今の制度は当事者本人対象だが、家族単位の支援を考えてもらいたい。例えば障害者のヘルプ、親の障害には使えるが、子どもには使えない。そこを緩やかに、家族単位だともう少し関われるのではないか。4月から横浜市の子ども・子育て会議委員
Yさん1 当事者と事業者が具体的に考える場などがあればよい。
Aさん 逗子市と神奈川県の委員。市民コーディネーター。協働、共働、一緒に考えるステージにならない。フラストレーションになる。委員、幼稚園長、保育園長などリーダー格が集まっている、共助で何かできないか。公助に期待しなくてよいのではないか。逗子市の規模だと行政がやってくれるのに慣れているので、住民が自分たちで作るということにならない。サービスの受け手感覚。サービスを受けてクレーマーになる。保育園がコンビニ化してはいけないが。

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「今後の展望」というところで、「これはぜひ提案したい」ということをシェア

●不完全燃焼の公募委員ばかり。練馬区の今後を明るくするために裏会議を作るべき。次の公募委員とつながって情報交換や作戦会議をしたらよい。自分たちが作った事業計画をどうしたら当事者に分かりやすく伝えられるのか勉強会をしてはどうか。

●流山は子育て支援者のネットワークを、公募委員を中心に作りたい。上越市や広島市などネットワークを作って勉強会をしたところは会議に意見書を提言するなどして、生かされる。内閣府に説明会をしてもらって曲解がなくなる。学びを継続して広げることが大事ではないか。

●世田谷区で市民版子育て会議の話。最終的には区長も来て、行政職員も意見を聞きに来るようになった。これを教えてもらうべき。
世田谷区民版子ども・子育て会議は10回やって、理念的な部分も多かった。外遊びを入れた。待機児童が多いのでひそかに議論してきた。

●計画はできたが、魂を入れることが我々の役割では? 事業計画が一般の人に届いていないのではないか。市川市は市民版会議が行政とうまくいっていない。行政主導で計画ができてしまった。そこを壊すのがこれからの役割ではないか。墨田区では、子ども・子育て会議の委員に来年度以降への思いを書いてもらった。市民に役割を持ってもらうことがねらい。3つの部会を作って、それぞれが自分たちの役割としてコミットする。保育の質、児童館活性化など会議委員に入ってもらってまわすことをやろうとしている。

●2つの話。事例で出てくるものは規模の大きいところだが、小規模の自治体だと生かしきれない。市民も役所も生かせずに、共助より公助がよい。小規模でうまくやれている事例を出すことが大事。もう一つ、ここまで計画ができて、どうやって子どもにとって、地域全体にとって具現化するかという点では文化を作らないといけない。行政VS市民となるが、当事者の意見が施策に展開できるか。事業者だからこそいえる視点、アイディアをどう形にするか対話できる場を作る、施策にする施策にする翻訳が必要ではないか。

●今後の注目としては委員の構成、保幼小の連携に地域をプラスして、切れ目のない支援をどのように実現していくかを注目したい。先進的な横浜をモデルケースに、小1の壁問題を解決するために事業をするのではなく、保育園長のように取り組んだほうが子どもたちの自主性ができるのではないか。子どもの育ちに重きを置いてPDCAを回したい。行政と市民の距離を縮めたい。

◎これまでの議論を踏まえてのゲストからのまとめのコメント

文部科学省初等中等教育局幼児教育課幼児教育企画官 林 俊宏さん
 子育て支援は埼玉県の担当課長で関わったこともある。幼児教育を進めているが、文科省的な立場で言うと、私立幼稚園が多く、子どもの半分が私立幼稚園に通っているが、市町村行政から抜け落ちている。新制度で共通のプラットフォームに入ることは結構大きい。よい駆除と幼稚園から小学校へつながる、その前の地域の子育てを一貫して市町村行政で見られることは大きい。新制度では、具体化するための中身が盛り込めたが、事業の中身や練度はこれからの課題。教育委員会があり、小学校以降を担当。そこが十分に計画に関わっているがどうか。仕掛けは十分ではないという反省もある。保育所や幼稚園も具組めて含めて、教育委員会が質の面でかかわれる部分を増やせるのではないか。幼稚園教育要領の改訂が始まっている。その中でも連携の話の動きが出てくる。各自治体の計画でも議論してもらえるとありがたい。自民党で幼児教育の質を高めることを動いていくべきとの議論があがっている。報告書をまとめる話もある。どういう方向に向かうか不安だが、お金の話とともに、中身も最終的には将来を担う子どもにしっかり沿っていく。

厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課少子化対策企画室長 竹林悟史さん
 普段は拠点事業の担当だが、新制度の全体の役割では基本指針。4月に新しい制度がスタートした。予算も厳しい中で確保できた。予算や制度ができただけでよくなることはない。どう使いこなすか、そこがないと。それは魂を入れる話。ここからが勝負。ようやくゴールにたどり着いたような気持ちだが、ここからがスタート。
制度が誇れるのは、制度をつくって終わりではなく、地域で使いこなすための地方版会議が法律に書いてあるし、全国にできたこと。これは大事なこと。今日の勉強会は、とてもよいタイミングで開かれた。
 今後、どのように地方版会議をまわしていくか。計画・基準といった決め事があっても活発に議論できたところもあれば、そうでないところもある。活発に動かすために仕掛けが必要。市町村の職員とどうつながるか、勢いあまって責めたり、批判すると返って状況が悪化することもあるので、うまいやり方でやってほしい。少なくとも人間はエネルギーがあるところに引かれる。そういうところで常にエネルギーを持って動いていく姿が役所を動かすチャンス。他の地域の情報を共有して作戦が立てられると良い。
 第2ステージ一緒に頑張りましょう。

横浜市こども青少年局長 田中博章さん
 横浜は、市民の活動が活発なところ。これまでの子育て支援はそういった力に引きずられてきた。同僚の熱い思いと、市民の思いを受け継ぎつつ、切磋琢磨していきたい。
 行政は、担当者が変わることもあるが、根っこは子どものため、親のため何をしていこうかという点は同じと、お互いに尊重できるところが横浜市の特長ではないか。パンチが強くなりすぎると、痛みはある。役人は直接のパンチを出せない。それぞれの立場で今できる範囲で考えているとすると、お互いを尊重することがうまくいく方法ではないか。その積み重ねが大きくなっていく。
 昨年11月にシンポジウムして、会場に大きな幹を作って、付箋で思いを書き出した。行政の計画は5年で作り変えるとまったく違うものになることもある。子どもの計画の理念は、幹の部分は同じでないといけないのではないか。きちんと根を下ろして市民に広がり、10年経っても子どもの部分は変わらないことが大事。各事業はアレンジしていく、花が咲き、違う花が咲く時期、葉っぱが増えることもあるが、大きな成長であってもらいたい。地域で、今タネをまいた計画を、良い方向に育ててもらえば。

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